シニアの金言
気がつけば、どこでも最年長
81歳男性
最年長というステージは「退場」ではなく「更新」
この頃、どこに行っても自分が最年長だ。かかわってきたNPOの理事会でも、マンションの役員会でも、趣味のサークルでも。昔は、必ず“もっと上の人”がいた。
あの人のようになりたい、あの人ほどの年齢になれば分かることがある。そう思いながら、少し下の立場で話を聞いていた。それが、いつの間にか、私が一番上になった。
「今日は〇〇さんが最長老ですね」と誰かが冗談交じりに言う。「いやあ、長生きしちゃってね」と返しながら、心のどこかで少しざわつく。
頼られることは悪い気はしない。「〇〇さん、どう思います?」と聞かれるのも、信頼されている証だろう。けれど、正直に言えば、私はまだ“ちょっと上の先輩”のつもりでいる。自分が一番上だなんて、どこか落ち着かない。
気づけば、自分より年上だった人たちはいなくなった。相談できる相手も、叱ってくれる人も減った。
若い人たちと話すのは楽しい。エネルギーももらえる。でもときどき思う。私はこの場にいていいのだろうか。無理をして若い話題に合わせていないか。知らないことを知らないと言えなくなっていないか。
「最年長」という言葉には、尊敬と同時に、“そろそろ退いてもいいのでは”という空気も混じっている。まだ動ける。まだ考えられる。まだ新しいことを始めたい。それなのに、年齢という数字が、静かに私の居場所を決めようとする。
いつの間にか、私は“年上の誰か”を見上げる立場ではなくなった。けれど心の中の私は、まだ成長の途中にいる。
シニアの金言を読み解く
年齢が上がるにつれ、多くの人が経験するのが「組織や集まりの中で自分が最年長になる」瞬間である。これは単なる年齢構造の変化ではない。人は常に「自分の上」と「自分の下」の間で位置を確認している。最上位になるということは、比較する対象を失うことを意味する。そのためロールモデルの消失や相談相手の減少、加えて“終盤の人”という無言のラベリングといったことに直面する。 多くのシニア施策は、支援する対象、ケアの対象として設計されている。しかし実際には、まだ成長したい、まだ学びたい、まだ挑戦したい、まだ役割を持ちたいという意欲を持つシニアも少なくない。
やりがいは生きるチカラにつながる。千葉大、東大、米ハーバード大の共同研究チームの調査では、自治会などの組織に参加している65歳以上の高齢者で役員(例:会長、世話役、会計係など)を引き受けた会員と通常の会員と比較して、役員の死亡リスクは12%減少していることが示されている(下記リンク参照)。
シニアマーケティングの視点では、いろいろな場面で「最年長」になるということが「退場」ではなく「更新」であり、終着点ではない。つまり、高齢期にしばしば直面する「最年長」という場面は学び直しの機会や経験の価値化を設計するときと捉えたい。
シニアが恐れているのは老いそのものではなく、“役割がなくなること”。シニアは終わる存在ではなく、つねに再定義される可能性を持つ存在である。
※下記リンク先は、シニアが役割を担うことで得られる効果に関する研究論文
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