シニアの金言
歌い始めて33年
83歳男性
きっかけは“妻たち”、と聞くけれど。
地元の男性合唱団で歌い始めて、33年。設立のきっかけは、同じマンションに住む妻たちが夫の定年後の身の処し方を心配して、合唱団の設立を提案したのが発端と聞いている。実際は「定年後、家でゴロゴロされていてはカナワナイ…」が、本音だったのではないかと私たちは思っているけれど…。
9人で設立したのが、今や40名を超える大所帯。第1テノール、第2テノール、バス、バリトン。パートの声が重なって響き合ったあの瞬間を感じると、もう止められない!合唱の虜になるのだ。
老化防止にもなっている。呼吸が基本だから、歌うたびに酸素が体に行きわたる。全身を使って歌うから汗もかく。楽譜を読むのに頭を使うし、歌詞も覚えないといけない。ステージに立つと背筋が伸びてよい姿勢になり、若返った気持ちにもなる。
毎週日曜日の定例練習で合唱技術の向上を図るほか、いろいろな活動を通して団員相互の親睦を深めている。歌ったり、飲んだり、語ったり。ゴルフも茶話会もある。濃淡織り交ぜた活動は、合唱活動に付随してくる楽しみだ。みんなを惹きつけ、平均年齢は80歳を超えた。年に1回の定期演奏会に加え、地域や知り合いのイベントでも、機会があれば積極的に歌いに行っている。
団員の妻たちの評価は、「本当によいところに入れていただいた。おかげで毎日を生き生きと張り切って過ごしています」。
「おかげで毎日を生き生きと…」というのはきっと、夫だけでなく妻自身のことも言っていると思う。
シニアの金言を読み解く
高齢期の楽しみに、さまざまな趣味が存在する。中でも歌うことは、多面的効果から推奨されている。多くの機関では、歌や合唱の効果について研究が行われ報告されている。
歌唱は有酸素運動と同じような効果が期待される以外にも、口腔機能や認知機能に効果があり、ストレスが低下。合唱においては人と会う理由が増えて気分も上がり、活動量が落ちにくくなる。上記の83歳男性が心身で感じおられることの多くが、さまざまな機関で研究・報告されてきている。
近年は企業において、歌うことで加齢による影響を下げる取り組み例が見受けられる。たとえば第一興商(DAM)では、カラオケを高齢者の健康づくりに役立てようと2001年に「DKエルダーシステム」を開発し、介護施設・自治体の介護予防教室などで継続できる音楽健康プログラムを提供。エクシング(JOYSOUND)は音楽療法や音楽レクリエーションの進め方などを発信している。ヤマハは継続して行うことで、「身体機能」を維持し「脳への刺激」と「心のリラックス」も得ることができるとして、独自のプログラムを開発、展開している。歌うことで健康になる、という。
音楽レクリエーションや音楽療法など“音楽”による効果を研究し、事業化を進めている動きは少しずつ増えている。歌うこと、あるいは合唱による健康効果は、運動機能、精神面、社会面など多方面においてプラスの影響が示唆されている。いっぽうで“歌う”は、発声・呼吸・情動・対人交流が同時に動くため検証対象が広く、強固な臨床エビデンスの整理は難しい。
しかし歌う楽しさは、多くの人がすでに知っている。唱歌や校歌、地域の歌、カラオケなど、人生のどこかに「声を合わせた記憶」がある人は少なくないだろう。楽しそう、やってみたいという気持ちを呼び起こす力がある。
さらに歌は、“発表”にも“ゲーム”にもなり、“上達”や“届ける”にもつながる。だからこそ「歌う」を入口に参加を促し、継続を支え、つながりを育てる設計ができれば、予防の文脈でも事業としても、楽しさをいくつも増やしていけそうだ。
※下記リンク先は、グラフに用いた「令和3年社会生活基本調査」
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