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シニアの金言

私の寿命を知りたい

72歳女性

老後の資金、いつまで生きるのかも大きな問題

 夫は66歳のとき、がんで亡くなった。一つ違いの私はその時67歳。私も本人も予想していた歳より早い死だった。子どもたちも独立して、初めての孫が生まれて間もない頃。本人も無念であったろう。私もぽっかりと空いた穴を眺めるように2年ほどは何も考えずに過ごしてしまった。ようやく70歳を前にして今後のことを考えることでできるようになった。

 さあこれからどうする…一番に気にかかることはやはり健康とお金のこと。健康には恵まれ、病気らしい病気はせずにこれたが、同年代の友人が認知症になったりすると、やはり不安になる。お金のことは夫の遺族年金と私の年金を併せれば、贅沢をしなければ暮らして行ける。家のローンも完済している。子どもたちもしっかりと生活しており、心配はなさそうだ。

 夫の退職金はほぼ手つかずで置いてある。子どもたちは「友達と好きな旅行にでも行ったら」と言ってくれるが、これからどれだけ生きるのかわからないので、お金を好きなことに使うのは不安がある。認知症や身体が不自由になって施設に入ったら、やっぱりお金がかかる。子どもに迷惑をかけたくないし、そんな時にお金がなかったら、ますますやりきれない。

 後どれだけ生きるか?平均寿命だと、あと20年くらい。いや、もっと長生きするかもしれない。「いつ寿命がつきるのか」が知りたい。それがわかれば、答えはとっても簡単になる。意外に早ければ、人生をもっと楽しんでその時を迎える。長く生かしてもらえるなら、これまで通り、無駄使いせず、長い将来に備えておこう。「自分の寿命がいつ尽きるのか?」誰もが知りたくて、誰もがわからない、なんとも難儀な疑問ではある。今はやりのAIとやらで、わかるようにならないかしら?

シニアの金言を読み解く

 令和元年に金融庁が公表した報告書「高齢社会における資産形成・管理(金融審議会 市場ワーキング・グループ)」の中で、「老後30年間で約2000万円が不足する」との試算が示された。多くの人が老後の生活資金に漠然とした不安を持っていたところに、2000万円という具体的な数字がでたことで大きな話題となり、時の大臣が報告書を受け取らないという異例の事態に発展した。一方、多くの専門家の間で、このレポートの内容は寿命の延びを見据えて、老後の資産形成に向けた環境整備を説くという内容が正鵠を射たものとしてとらえられている。

 このレポートの主旨が正しく受け取られなかったのは、あくまで「モデルケース」にもかかわらず、「みんな」が2000万円不足すると捉えられたことにある。老後に必要となる資金は年金の額や貯蓄額、暮らし方によって大きく異なってくるため、皆が同じように2000万円不足するわけではない。この誤解はマスコミがモデルケースで高齢者を「一括り」にしたことが原因である。

 それと指摘しておきたいのは、この議論の中で「人の寿命」という視点が欠けていることである。ネガティブなことはあまり取り上げられないのだが「早く死ぬ」人もいる。老後2000万円必要な人は、平均寿命、もしくはそれ以上生きた人の話である。早く死ねばそれだけ必要な老後資金は少なくてよい。

 日本人は「アリとキリギリス」のイソップ寓話を好む。コツコツ老後に備えて、つつましく暮らす…。そして多くはそれを使い切らずに亡くなる。しかし、できれば、自分のお金は自分できっちり使って、より豊かな老後を暮らしたいものである(社会に回せば経済も活性化する)。ただ悩ましいのは、この女性のように誰にも自分の寿命がわからないことである。

 かつてのSF小説のようにAIが自分の遺伝子情報や診療・検診データ(マイナンバーカードと紐づけて)を解析して、おおよその寿命がわかるようになれば、老後の生き方にパラダイムシフトが起こるだろう。しかし、それだけは「神のみぞ知る」ほうがよいのかもしれない。

下記のリンク先:金融庁 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」(PDF資料)

詳しくは

https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf

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