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シニアの金言

耳が遠くなった

75歳男性

高齢者の難聴は認知症の原因にも

 この頃、テレビのセリフが聞き取れなかったり、話し相手が何を言っているのかわからないことが増えてきた。なにか言っているのはわかるのだが、意味がつかめない。
小声で喋られたり、うるさいところだと聞き取れない部分が多い。

 この前も久しぶりの同窓会、二次会の居酒屋での何度も聞き返してうるさがられた。「佐藤くん」と「加藤くん」がわかりにくい。「魚」と「刀」を間違えて話が頓珍漢になってしまった。「ボケてきたんと違うか」と笑われてしまった。

 歳だから相応に耳が遠くなっているとは思う。カミさんが「補聴器をつけたら」というが、音はよく聞こえているので、補聴器はいらない。かっこ悪いし。それに高い補聴器をつけてもあまりよく聞こえない、結局は使わなくなったと友人がぼやいていた。

 車を運転しているがとくに不自由は感じない。警笛やサイレンもよく聞こえている。ただ、人の話の聞き間違いが多くなって、なんとなく人と話すのが億劫になってきた。だから最近、囲碁の会にはあまりでていない。

シニアの金言を読み解く

 高齢者の難聴が注目されている。これまで「歳を取ると耳が遠くなるもの」として、あまり深刻には捉えられてこなかった。しかし最近の研究では難聴認知症をはじめ、高齢者のさまざまな問題を引き起こす原因の一つということがわかってきた。

 聴力には「音」の聞こえをいう「純音聴力」と「言葉」の聞き取りをいう「語音聴力」がある。高齢者の難聴は後者の「語音聴力」の衰えが問題になる。語音聴力の低下が脳機能の低下やアルツハイマー病の発症率を高めるという。

 加齢による聴力の衰えは視力と同じように徐々にすすむため、本人が自分は難聴だと気がついていないことが多い。加えて軽度であれば、痛い、見にくいなどと違い、日常生活に与える影響が少ないことから医療機関に行くことも少ない。しかし難聴のせいで他の人とうまくコミュニケーションできなくなり、人との接触を避けることで孤立してしまうケースもある。

 老化に関する長期縦断疫学研究によれば、高齢者のうち難聴と認められるのは男性の65~69歳で43.7%、70~74歳で51.1%,75~79歳で71.4%,80歳以上は73.3%。女性では65~69歳で27.7%、70~74歳で、75~79歳で41.8%、80歳以上は67.3%といずれも高い有病率となっている。
(「全国高齢難聴者数推計と10年後の年齢別難聴発症率 : 老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」日本老年医学会雑誌 49(2), 222-227, 2012-03-25より)

加齢による難聴の場合はほとんどの場合、不可逆性であり、改善されことはほとんどない。そこで聴力を補うために補聴器が使われる。難聴によるコミュニケーションの欠如が高齢者の心身にさまざまな悪影響を及ぼすことを考えると、補聴器の利用は大きなメリットがあると考えられる。

しかし日本補聴器工業会による調査「JapanTrak 2018 調査報告 」によると65歳以上で補聴器を使っているのは16.8%。上記の有病率から見ると少ない。騒音のあるところでは役に立たない、元の聞こえに戻らない…など理由はさまざまだが、正しい装着導入が行われれば、解決できそうなものも多い。

高齢者の機能補助や回復のための道具は、わかりやすくその機能、メリット、場合によってはデメリットを伝えることが欠かせない。そして丁寧な導入、訓練によってはじめて高齢者が使いこなせるようになる。補聴器はその代表例だ。

難聴を抱える高齢者とのコミュニケーションは補聴器の助けがない場合でも、話者のちょっとした配慮で高齢者の聞き取りを改善できる。

高齢者と話すときは
・明瞭に、ゆっくりと話す
・語尾、文末で声を小さくしない
・自然な大きさで話す
・静かな環境で話す
・話者がはっきりと見える位置を選ぶ
・できるだけ一対一で。グループの場合は一人ずつ
・聞き返されたら笑顔で繰り返す
・可能であればマスクを外す
ということを心がけたい。

詳しくは

https://nspc.jp/senior/archives/6326/

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