シニアの金言
あいつ今何してる?
75歳男性
シニアはそれぞれの姿でシニアである
「あいつ今何してる?」はテレビ朝日で放映中の人気番組のタイトル。シニアの声そのものではないが、シニアの心情と深いところでつながっているので取り上げた。
有名人の小学生時代の友人を探し出し、その人がその後、どう生き、今は何をしているかを見せる。波乱万丈、意外性のある展開がテレビ的には望ましいだろう。
この番組の肝は「小学生時代はあまり違いがなかった二人」が年月を経て「大きく違った人生を歩む二人」になっているところにある。
家庭環境や能力…違いがなかったわけではないだろう。しかし、子どものときはともに遊び、将来の夢を語り合うことができた。それが何十年を経てお互いの人生はほとんど交差することがないほど違ってしまっている。
長い前置きになったが、さきの番組は人々の人生が時を経るに従い、生き方も豊かさも生活環境もあらゆる面で多様化するということをわかりやすく見せてくれているからである。
先日、講演に行った折に「歳をとるとみんな暮らしは似てくるように思いますが、どうでしょう」という質問を受けた。若い世代から見るとシニアはみな同じ。一見すると服装も持っているものもよく似ているように見える。しかし、それはシニアに興味のない若い世代の見方であって、シニアは実にさまざまである。
就職、結婚、出産、離婚、出世、失業、転職、倒産、介護、死別、病気…まさに人生は光と影の綾織り、違ってきて当然である。シニアは一つのものさしでは測れない。測ろうとすると誤った結果に行きつくことになる。年齢でもない、収入でもない、家族形態でもない。シニアの共感を得るにはその姿を注意深く観察し、話に耳を傾けて、もっと細かな目盛りで測る必要がある。
シニアの金言を読み解く
シニアを測るものさしはいろいろあるが、その一つ暮らし向きで見てみよう。平成28年の60歳以上への調査(内閣府「高齢者の経済・生活環境に関する調査」)によると、経済的な暮らし向きについて「心配ない」(「家計にゆとりがあり、まったく心配なく暮らしている」と「家計にあまりゆとりはないが、それほど心配なく暮らしている」の計)と感じている人の割合は全体で64.6%となっている。逆に見ると3人に1人の高齢者はかなり厳しい生活を送っていることになる。
年齢階級別にみると、年齢階層が高いほど「心配ない」と回答した割合は高く、80歳以上では71.5%となっている。これは年金制度とも関連があるだろう。今後は年齢が上がってもゆとりのある人の割合は増えないことが予想される。
高齢者世帯の所得を見ると平成27年の平均所得(所得)は308.4 万円。しかし中央値でみると244 万円。この差は少数ではあるが、かなり高額の所得を得ている高齢者世帯があることを示している。所得階層別分布をみてみると、150~200万円未満が最も多くなっており、一番多い階層は中央値より少ない(平成28年厚生労働省「国民生活基礎調査」)。
貯蓄はどうか。高齢者世帯の貯蓄は平均値で2,385万円、中央値で1,567万円。階級別の世帯分布をみると、貯蓄ゼロ世帯がある一方、4,000万円以上の貯蓄を有する世帯が18.6%あり、資産の偏在がうかがえる(平成28年総務省「家計調査」)。
最後に不平等度を測る指標ジニ係数を年齢階級別に見てみよう。年齢階級別の等価再分配所得のジニ係数は年齢が上がるにつれて増える(不平等度合いが高い)。子ども世代を除くと35~39歳が0.26で低く、75歳以上が0.34と一番高くなる(平成26年厚生労働省「所得再分配調査」)。
以上のように暮らし向きだけをとってもシニアは一様ではない。独り暮らしに代表される家族のカタチ、病気、介護などさまざまなファクターが組み合わさってくる。トルストイの名言の「不幸」ではないが「シニアはそれぞれの姿でシニアである」。
下記は最新(平成30年版)の内閣府「高齢社会白書」(概要版)へのリンクです
詳しくは
http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/gaiyou/30pdf_indexg.html
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