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シニアの金言

「タイパ」なんて関係ない

70歳男性

「ゆっくり視聴」でないと、動画が理解できない

 最近、「タイパ」という言葉をよく耳にする。タイムパフォーマンスの略、時間効率のよさのことで、「なるべく短い時間で、最大限の満足・成果を得たい」という価値観を指すらしい。とくに若い世代は、「タイパ」を重視する傾向があるという。

 この間テレビでやっていたが、今や動画も、1.25倍や1.5倍の「倍速」で視聴するのが当たり前のようだ。どうも「タイパがいい」というのが、その理由らしい。確かに情報があふれかえっている現代、多くの情報を知り、楽しもうとすると、1日24時間では足りない。視聴する速度を上げていかないと追いつけない、という理由もわかる。

 方や我々、時間が有り余っているのだ。そんなに急がなくてもいい。それよりなにより、最近の動画のスピードに追い付けないことが増えてきた。
 
 スマホは人並みに使うし、YouTubeも見る。もちろん時間があるので、大好きな犬や子どもの動画を見る時は、「標準」の速度。「倍速」ではすぐに動画を見終わってしまうので、なんだかもったいない。でも、ちょっと腰痛を解消するための体操を知りたかったり、簡単な料理を教えて欲しかったり、また行政の仕組みについて動画で学ぼうとするとき、「標準」でも理解が追いつかない時がある。ましてや「倍速」などもってのほか。「標準」で見ては止まり、戻ってはまた止まる。その繰り返し。操作もおぼつかないので、見ている途中であきらめることもある。

 この間本屋で、「0.75倍速健康法(工藤孝文氏著 フォレスト出版)」という書籍を見つけた。心身の不調を解消するために、“ちょっとゆっくり”を意識して行動しましょう、というのが著者の主張のようだ。でも、待てよ。本当の「0.75倍速」で、動画を視聴してみてはどうだろう。帰って早速試してみた。腰痛解消体操や男性向け料理の手順、ちょっとわかりにくいニュースの解説まで。まあなんとわかりやすいことか。目も耳もラクだし、なにより脳の理解が追いつきやすい。巻き戻すことも少なくなった気がする。これでいい。これがいい。これで十分。

 そうだ、我々世代、時間は売るほどある。なにも急ぐことはない。「タイパ」に踊らされることはないのだ。まだまだ先は長い(と思いたい)。ゆっくりと、ゆっくりと、でいい。
(画像は本文の文脈を元に、生成AIで作成)

シニアの金言を読み解く

 NTTドコモ モバイル社会研究所による2024年4月の「動画視聴の倍速視聴についての調査」によると、全体では5割強の人が、動画を視聴するときに「倍速視聴をすることがある」との結果が出た。とくに10代男女・20代女性は約7割、20代男性・30代男女・40代男性は約6割が「倍速視聴をすることがある」と回答しており、若年層ほど高い傾向が見られた。シニア層でも4~5割が「倍速視聴をすることがある」と回答している(https://www.moba-ken.jp/project/lifestyle/20240924.html?utm_source=chatgpt.com)。

 一方、当然ながら、年齢を重ねていくにつれて、理解力は低下していく。「通常の言語をつかってのコミュニケーション(たとえば、人の話を理解する、人に話を理解させることなど)が難しいといった苦労がある」と答えた割合は、年齢を重ねるにつれ増えていく。70~74歳の男性で13.1%、女性で9.7%だが、80~84歳になると男性で29.6%、女性で24.8%、85歳以上になると、男性で44.3%、女性で45.4%となっている。

 また「思い出したり集中したりするのが難しい」と答えた割合は、70~74歳男性で38.7%、女性は35.5%、75~79歳男性で47.3%、女性は44.4%、80~84歳男性で56.1%、女性は55.3%。集中することも、年齢が上がると難しくなっていく。

 運動や料理など、健康に関わるコンテンツを、動画で発信する自治体も増えている。また諸手続きや啓発内容までも、スライドショーを使って動画で解説するケースが多い。ただその説明のスピード感は、はたして高齢者に理解されているのか。高齢期に生じる変化を知っておくと、高齢者とのコミュニケーションは、変えられるのかもしれない。

下記リンク先は 「75歳超も体力は向上」したけれど…生じる変化に、何をどう提案する?

詳しくは

https://nspc.jp/senior/archives/20165/

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