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シニアの金言

スキマバイトが楽しい

65歳男性

DXがシニアの働き方を変えている

 雇用延長も終えて、サンデー毎日の日々。最初は「長い間この日々を待ちわびていた」が、3ヶ月もすると、ちょっと退屈もする。昼間にテレビを見ていると、遊びに来ていた孫娘が「ヒマそうやねえ」と冷やかしてきた。「じいじはスキマバイトって知ってる?」と聞く。テレビのニュース番組で聞いたような気がするが、「1時間とか2時間とかスキマの時間のアルバイト」らしい。スマホのアプリで簡単に申し込めるという。

 そのときは聞き流していたが、後日、ちょっと気になってパソコンで検索してみた。調べてみると怪しいものではなさそう。私の世代は仕事を探すとなるとメインは「ハローワーク」いわゆる「職安」になる。アルバイトなら情報誌。退職時に失業保険をもらうためにハローワークへ行ったが、手続きも面倒、人も多く時間がかかる。安心感はあるけれど、ちょっと敷居が高い。

 年金とささやかな退職金で食べるのには困っていない。ヒマとはいえ、フルタイム働くのはもうちょっとしんどい。パート、それも毎日でなく、ちょこっと働いて、趣味のバイクのガソリン代を稼げたら嬉しい。かみさんに遠慮なくツーリングに出かけることができる。時間をちょっと持て余し気味だったので、思い切って「スキマバイト」にチャレンジしてみた。

 スキマバイトはスマホのアプリだけで登録から職探し、給与の支払いまでできるらしい。まずはテレビでよく広告を見るスキマバイト求人サービスのアプリをダウンロードして登録してみた。あっけないほど簡単。履歴書も必要ないのにはびっくり。じじいといっても我々は50歳くらいから社用のスマホを使って仕事をしてきた世代。少し前のシニアとちょっと違う。で、登録にはスマホと免許証があればOK。10分足らずで終わった。

 最初はある資格試験の試験監督を1時から5時までの4時間。スマホに表示された集合場所に行ってQRコードでチェックイン、終われば同じくQRコードでチェックアウト。と同時に4時間分の時給が即、振り込まれた。次は「まかない」というものを食べてみたかったので、そば屋へ。11時から14時までの5時間。接客業は大学生の時以来だったが、行くとスキマアルバイター用のマニュアルがあり、それをざっと見てやれば問題なし。まかないはお店の好意で仕事後にいただけた。

 もちろん小遣い稼ぎが目的。これまで知らなかったことや経験したことがないことに遭遇して、面食らうこともある。しかしそれも経験、「次はどんな仕事をしようか」と楽しくスキマバイトを探してしている。

シニアの金言を読み解く

 これまでシニアの働き方はパートタイムが多かった。週何日かを固定した職場で働くというケースである。しかしシニアの働き方も他の世代と同様に多様化している。その背景にはサービス業など特定の職種での深刻な人で不足がある。さらに仕事や勤務時間、給与における、雇い手と働き手双方のニーズの多様化がある。

 そんな中で「スキマバイト」といった働き方が登場してきた。それを可能にしたのが雇用面や労働環境でのDXである。スキマバイトはスマホという手段がなければ実現は難しい。スマホが若い世代だけではなくシニアも使いこなせる時代になり、スキマバイトにシニアも参加できるようになった。

 ちなみにスキマバイトのマッチングサービス大手の「タイミー」がHPで公開しているデータによるとタイミーでの求職登録者のうち50歳代が11.7%、60歳代が3%となっている。60歳代以上はまだ3%と少ないが、今後その割合は増加して行くと考えられる。

 シニアに特化したものとして東京大学先端科学技術研究センターが開発した「GBER(ジーバー)」がある。シニアにとって無理のない働き方として、『モザイク型就労』を提唱。就労条件をスキル、時間、場所の3つに分け、それらを組み合わせることで、バーチャルに一人分の労働力を提供する仕組みである。高齢者の就労だけでなく地域活動をサポートするウェブプラットフォームとして注目されている(文末のURLからご参照ください)。

 また、労働環境のDXもシニアが働く敷居を下げることにつながっている。これまではデジタル化がシニアの参加を阻んできた一面があった。しかしシニアのデジタル対応力がアップしたのと、デジタル化がさらに進展し、シニアの脳や耳の代わりをして就労をサポートしている面もある。

 例えば居酒屋では料理の注文をこれまでアルバイトが聞いて厨房に伝えていたが、今では客がテーブルのQRコードを自身のスマホで読み込んで注文してくれる。その注文は自動的に厨房に伝えられるから、アルバイトは注文を聞く必要がなくなる。記憶力や聞き取りに問題を抱えているシニアもこの仕組みがあれば、ホールでの業務が可能になる。

 ご隠居さん(とおぼしきシニア)が縁側でスマホを見ながら、面白そうな仕事を探している姿がこれからは珍しいものではなくなるのである。

詳しくは

https://gber.jp/

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