シニア市場に特化した
調査・分析・企画・
コピーライティング・デザイン

株式会社日本SPセンターが運営する
シニアマーケティングに関する専門サイトです。

シニアの金言

食卓を小さくした

71歳男性

シニアの暮らしのダウンサイズが進んでいる

 これまで我が家のLDKで存在感を放っていた大きな食卓。今の家を買ったときに、家族でゆっくり囲める大きなサイズを選んだ。その食卓とお別れする時がきた。ある日、新聞の折り込み広告に「ミニマルデザインのある暮らし」という見出しでコンパクトな丸テーブルと2脚のチェア、それに2人掛けのシンプルなソファも。妻が「これいい」というのでデパートに見に行った。

 出かける前に「ミニマルデザイン」をネット調べると、無駄を削ぎ落として必要最低限の要素のみで構成するデザイン手法。装飾や色彩を排除し、形状や色、テクスチャーなどの基本的な要素だけで構成されており、シンプルで洗練されていることが特徴とある。

 行ってみると、ちょっと値段高めの民芸家具。素材の良さ、機能的なデザインも気に入った。帰ってLDKを眺めた。子どもたちはとうに独立して二人の暮らし。もうこんなに大きな食卓はいらない。孫が帰ってきたら、とも思うが、それも年1回か2回のこと。そのときは組み立て式の座卓を出せばいい。妻は「テーブルはミニ丸ね」と笑った。

 家族の形はとっくに変わっているのに、なんとなく長く暮らしてきた「家族のカタチ」にとらわれていたのかも。あと何年元気でいられるかわからないからこそ、今、家にいる時間を大切にして、少しでも快適に過ごしたい。で、思い切って買った。家具が届いて、大きな食卓と4脚のチェア、それと革張りの大きなソファがなくなった。LDKがゆったりとし、しかも動きやすい。家族団らんの思い出は大切だが、「家族のカタチ」もダウンサイズしないといけないのだな。

シニアの金言を読み解く

 世帯の形が変わり始めてすでに久しいが、近年ますます世帯のサイズが小さくなっている。厚生労働省のデータ※によると令和5年1世帯当たりの人員は2.23人である。単独世帯(1人暮らし)の割合は34%と、3分1を超えて世帯構造別で一番多い。なかでも高齢者世帯では51.6%で、半数以上が単独世帯である。

 新築の住宅で最近、平屋の人気が上昇。住友林業の平屋受注率は「2018年の27.3%から、2023年には41.7%」という(住友林業Webページ ※ による)。国土交通省の住宅着工統計調査でも新築の居住専用住宅に占める平屋の割合2013年には7.2%だったものが2023年には15.0%となっている。家族数の減少だけがその原因ではないにしてもその影響は見逃せない。
※https://sfc.jp/ie/myhome/articles/hiraya20240229/

 世帯人員のダウンサイジングによる影響を自動車の中の軽自動車の占める割合で見てみる。30年前の1995(平成7)年には25.8%だったが、2004(平成16)年に30%を超え、昨年2024(令和6)年には40.4%と、5台に2台は軽自動車となっている※。地方では高齢者の移動手段としての軽自動車の役割は大きい。
※全軽自協による軽三・四輪車および全自動車保有台数の車種別推移(保有台数は国土交通省調べ)

 食生活でも変化が見られる。家庭料理の代表の1つ、カレー。かつてカレールーのパッケージに書かれている作り方の材料は4人分だったが、最近では何皿分という表記が多くなった。カレールーもこれまでの固形タイプに加え、少人数世帯に合わせて1人前から作ることができるフレークタイプも増えている。ちなみに最近のテレビの料理番組でも2人分のレシピが主流だ。

 これからの高齢者ビジネスにおいては、国や地域というマクロでの人口減少と世帯や家族というミクロでの人員減少の両面からのアプローチが求められている。
※下記リンク先は「2023(令和5)年国民生活基礎調査」の世帯構造別、世帯累計別世帯数及び平均世帯人数の年次推移

詳しくは

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa23/dl/02.pdf

アーカイブ