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シニアの金言

「名もなき家事」に気づけた

62歳男性

在宅ワークで、家事の多さ・深さを知る

 最近、「名もなき家事」に注目が集まっているらしい。そこにフォーカスした書籍も話題になっている。テレビで何となく見た気もするが、あまり深く関心を寄せてはいなかった。コロナ禍以前は、朝早く家を出て、帰宅は夜遅い典型的な会社員生活だった。それが突然、生活スタイルが一変した。私が勤めている会社でも、在宅勤務制度が導入されたからだ。

 それまで家事は、妻にまかせきりだった。帰宅しても家事を手伝わない夫だった。子どもも成長し、手がかからなくなっていたので、「疲れている」を理由に、ほとんど家事を手伝ったことはなかったし、妻も小言は言うものの、それなりにバランスは保てていたと思う。

 在宅ワークをしていると、「やらなければならない家事・用事」の種類の多さ、また奥深さに驚かされる。恥ずかしながらそれまで、まったく気づけなかったのだ。例えば「トイレ掃除」にしても、床や壁を拭いて掃除するだけではない。トイレ洗剤やトイレットペーパーを買いに行く・取り出してセットする・残りを保管する、といった「名前のつかない家事」が付属する。ゴミ捨てもそうだ。ゴミ袋を収集場所に持っていくだけではない。家中のゴミを集める・袋にまとめる・新しいゴミ袋をセットする・足りなくなりそうなら袋を買い足しておく。そこまでやって始めてゴミ捨てなのだ。

 勤務時間中とはいえ、妻のそういった細々した家事の作業を目にする。正直、「こんなに大変だったのか」と思う。今まで申し訳なかった、とも思う。少しでも手伝わなくては、と思い至る。食器洗い、洗濯物の取り込み・畳み、アイロンがけ、だけでなく。「名前のつかなかった家事」も手伝う気持ちになるし、家の中に注意を向けることが多くなった気がする。
 
 定年前に在宅ワークを経験し、こういった「名もなき家事」に気づき、少しでも手伝うことができて、よかったと思う。何も知らず、やらずに定年を迎えていたら、急に時間ができても、何も家事ができなかったと思う。在宅ワーク期間は、定年前の、“家事見習い期間”だったのだ。定年後もつつがなく暮らしていくために、「名もなき家事」に気づけてよかった。

シニアの金言を読み解く

 コロナ禍以前は、「見えない家事」の夫婦分担については、妻が担当している割合が高く、とくに「食材や日用品の在庫の把握」と「食事の献立を考える」は約9割が妻の担当となっていた(国立社会保障・人口問題研究所「全国家庭動向調査結果」令和元年公表より)。

 コロナ下における家事・育児時間は、コロナ前と比べて「増加した」、と回答した男性は、38.0%。2020年後半より増加傾向にあり、これはテレワーク実施頻度の増加傾向(21.5%から32.2%に増加)と比例している(内閣府男女共同参画局「男性の家庭・地域社会における活躍について」より)。

 在宅ワークを経験し、家の中での「名もなき家事」を目にすることで、夫にも家事を担う意識が芽生えていく。少しずつ、担当する家事を増やしていく。それが定年後へ“ソフトランディング”していくための、ひとつの回答なのかも知れない。

下記リンク先は令和4年内閣府男女共同参画局「男性の家庭・地域社会における活躍について」

詳しくは

https://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2019/201912/201912_04.html

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