2019年12月11日
令和になって初めての「高齢社会白書」が6月に発表された。この白書には、
高齢化社会の実像を浮き彫りにする、数多くのデータが取り上げられている。
本稿では、同白書の中から、気になる数字、基本的に覚えておきたい数字を
20に厳選して解説を加えた。
分厚い白書を読み通すことは大変だが、本稿を斜め読みするだけでも、
エッセンスは習得できるだろう。分厚い白書と格闘する時間が割けない
マーケッターの皆さまの一助になれば幸いである。
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高齢者(65歳以上)人口
3,558万人
平成30年10月1日現在、総人口は1億2,644万人。うち3,558万人は65歳以上が
占める。戦後の昭和25年には、わずか416万人にすぎなかった。
68年間で、その人口は8.6倍に膨れ上がっている。高齢者の人口増は、
2000年代以降に特に顕著で、2000年~2018年の間に、1,357万人増加している。
2000年に至る50年の増加量、1,785万人に比べれば、その増加量がいかに
高いかがわかるだろう。因みに高齢者の男女比は約3:4。女性比率が高い。
【出典】総務省「人口推計」平成30年(2018年)10月1日(確定値)
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女性高齢化率(女性総人口に占める65歳以上人口の割合)
31.0%
平成30年10月1日現在の高齢化率は28.1%。昭和25年(1950年)はわずか5%。それが2000年には、17.3%に達したというから驚きだ。
そして2005年には20.1%と20%台の大台に乗せた。言うまでもないが、
日本の高齢化率28.1%は世界で最も高い数字である。
日本に次ぐのはドイツで21.1%、その後にスウェーデン19.6%が続く。(※)
男女別にみると、男性:25.1%、女性:31.0%。
【出典】総務省「人口推計」平成30年(2018年)10月1日(確定値)
(※)ドイツ・スウェーデンの数字は2015年現在。当時の日本の高齢化率は26.6%
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後期高齢者(75歳以上)人口
1,798万人
日本では、65歳以上を高齢者と呼び、その中で65歳以上75歳未満を前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と位置づけ、その区分に基づいて制度設計されているものも多い。
後期高齢者の人口は、昭和25年(1950年)時点で、わずか107万人。前期高齢者の307万人の3分の1だ。それが今では1,798万人。この数字は、初めて前期高齢者(1,760万人)を上回った年次としても記憶されるだろう。
【出典】総務省「人口推計」平成30年(2018年)10月1日(確定値)
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社会保障給付費
116兆9,027億円
年金・医療・福祉その他を合わせた、社会保障給付費の総額は
平成28年(2016年)116兆9,027億円と過去最高の水準となった。
国民所得に占める割合は、29.84%と、ほぼ3割に達そうとしている。
社会保障給付費の中で、高齢者関係給付費(※)について見ると、
平成28年(2016年)は78兆5,859億円となり、前年度から9,473億円増加した。
【出典】国立社会保障・人口問題研究所「平成28年度社会保障費用統計」
(※)年金保険給付費、老人福祉サービス給付費及び高年齢雇用継続給付費を合わせた額
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「心配なく暮らせている」
71.5%
60歳以上の「暮らし向き」に関する意識調査に拠れば、80歳以上の男女で
「家計にゆとりがあり、まったく心配なく暮らしている」・「家計にあまり
ゆとりはないが、それほど心配なく暮らしている」人の合計が、
71.5%もの高率になった。
5歳刻みの年齢階級別に見れば、年齢が高くなるほど安心感が高くなっている。逆に60~64歳では、心配なく暮らせている人は61.3%。80歳以上に比べて
10%も低い。不充分な資産形成も一因だろうか?
【出典】内閣府「平成28年(2016年)高齢者の経済・生活環境に関する調査」
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年金・恩給受給世帯における総所得にそれが100%を占める割合
52.2%
公的な年金や恩給を受け取ってる世帯で、それ以外に収入がない世帯の割合は、52.2%と1位。第2位は、80~100%年金頼みで13.6%。両者で約7割を占める。
「100%年金頼みが約半分」をどう解釈するかは人に拠るが、
この数字にいささか驚きでもある。比較的恵まれた年金制度により、
悠々自適ならよいが、早晩、年金だけでは立ち行かなくなるだろう。
【出典】厚生労働省「平成29年(2017年)国民生活基礎調査」
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世帯主が60歳以上で、貯蓄が4,000万以上ある世帯の割合
17.6%
60歳代以上で、4,000万円以上の貯蓄がある世帯は、なんと17.6%にも上る。
二人以上全世帯を分母にした割合は11.8%だからその差は約6%高い。
これを見る限りシニアの保有するストックは大きい。
因みに、世帯主が60歳以上の貯蓄の平均は2,384万円。実際の肌感覚とは
乖離があると思う。
世帯主が60歳以上の貯蓄額の中央値、1,639万円。これなら、肌感覚に近づく。
【出典】厚生労働省「平成29年(2017年)国民生活基礎調査」
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世代別貯蓄現在高分布状況、60歳以上
64.4%
2014年現在の数字に拠れば、全世代の貯蓄現在高の中で、60歳代の割合は
33.6%とほぼ3分の1。 70歳以上の割合が30.8%で合計64.5%。
つまり3分の2の貯蓄現在高をシニア世代が占めている。
尤も、昔から「シニア=貯蓄」だったわけではない。
平成元年(1989年)の貯蓄現在高で60歳以上の占有率は、31.9%。
50%を超えたのが、平成16年(2004年)で、52.4%。
「シニア=貯蓄」とい図式が定着したのは、ここ10年程のことなのである。
【出典】総務省「全国消費実態調査」
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65歳以上生活保護受給人員数
100万人
貯蓄現在高の占有率が高いとはいえ、65歳以上の生活保護受給者も
増加傾向にある。二極化しているのだ。
平成28年(2016年)の生活保護受給者は、ついに100万人の大台に乗った。
その前年は97万人だったので1年間で3万人増えたことになる。
さらに遡って平成16年(2004年)の65歳以上受給者は53万人。
14年間で倍増した。全受給者の増加率は153%を大きく上回っている。
【出典】総務省「人口推計」「国勢調査」、厚生労働省「被保護者調査年次調査」
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労働力人口(※)に占める65歳以上の割合
12.8%
平成30年(2018年)の労働力人口6,830万人のうち、65~69歳は、450万人、
70歳以上は425万人、合わせて875万人に上った。労働力人口総数に占める
高齢者の割合は、12.8%となり、上昇を続けている。
昭和55年(1980年)わずか4.9%だったが、平成23年(2011年)には8.9%に。ここから上昇カーブが上がり、平成25年(2013年)には、9.9%まで
上昇していた。
【出典】総務省「労働力調査」
(※)労働力人口とは15歳以上人口のうち、就業者と完全失業者を合わせたものをいう。
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65~69歳の就業率(※)
44.6%
平成30年(2018年)の65~69歳(男女計)の就業率は46.6%。
乱暴に言えば、半数の人が働いている勘定になる。
10年前の平成20年(2008年)は36.2%。10.4ポイントも伸びている。
65~69歳の年齢階級には及ばないものの、70~74歳も就業率30.2%と
高い数字を示している。こちらも10年前の21.8%と比べて8.4%伸びている。
生産年齢人口に属する60~64歳の年齢階級の就業率はさすがに高く、
68.8%という数字になった。
【出典】総務省「労働力調査」
(※)就業率とは15歳以上人口に占める就業者の割合をいう
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65~74歳の男性起業者(※)の男性起業者全体に占める割合
11.8%
平成29年(2017年)の時点、65~74歳男性の男性起業者全体に占める割合は、11.8%に上った。10年前の平成19年(2007年)は7.4%、
5年前の平成24年(2012年)は10.1%と増加基調にある。
一つ下の55~64歳の年齢階級では、逆の現象が 起きている。
平成29年(2017年)の構成比は17.0%。
確かに前期高齢者層より比率は高いものの、この数字は、10年前の22.0%、
5年前の21.7%と漸減傾向にある。起業の「後ズレ」が進んでいるのだ。
【出典】総務省「就業構造基本調査」
(※)「起業者」とは「自営業主」及び「会社などの役員」のうち、今の事業を自ら起こしたものをいう
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健康寿命(※)(男性/女性)
72.14年/ 74.79年
健康寿命は、平成28(2016)年時点で男性が72.14 年、女性が74.79 年。
15年前の平成13年(2001年)に比べると、男性は2.74年、女性では2.14年
伸びている。男性の方が若干伸び率が高い。
健康寿命と平均寿命の差は、平成28(2016)年時点で男性が8.94年、
女性は12.35年。
15年前の平成13年(2001年)は、男性は8.67年、女性では12.28年。
ここからわかるように、差はほとんど縮まっていないのが現実だ。
ここ課題がある。
【出典】平均寿命厚生労働省「簡易生命表」/健康寿命平成13年は厚生労働科学研究費補助金「健康寿命における将来予測と生活習慣病対策の費用対効果に関する研究」、平成28年は「第11回健康日本21(第二次)推進専門委員会資料」
(※)「健康寿命」とは日常生活に制限のない期間をいう
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前期高齢者層の運動習慣者率は、平成29(2017)
48.6%
前期高齢者層の運動習慣者率は、平成29(2017)年時点で男性が48.6%、
女性が39.8%。男性の方が8.8%も上回っている。75歳以上の後期高齢者層も
同じように健闘している。男性が43.3%、女性は38.0%と前期高齢者と比べて
遜色がない。いずれにしても、20~64歳男性の26.3%、同女性20.0%を
大きく引き離している。
運動習慣者の割合はここ7年の間あまり変わっていない。変わらないことこそむしろ問題だ。
【出典】厚生労働省「国民健康・栄養調査」変わらない運動習慣者率。
(※)「運動習慣者」とは、1回30分以上の運動を週2回以上実施し、1年以上継続していると回答した者をいう
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65歳以上の要介護度別認定者数
618.7万人
介護保険制度における要介護者等認定者数は、平成28(2016)年度末で
618.7 万人。平成19(2007)年度末(437.8 万人)から180.9万人増加している。65~74歳と75歳以上の被保険者で要支援、要介護の認定を受けた人の割合は、65~74歳/要支援の認定で1.4%、同要介護の認定を受けた人が2.9%。
それに対して、75歳以上/要支援が8.8%、同要介護は23.3%となっており、
75歳以上になると要介護の認定を受ける人の割合が大きく上昇している。
【出典】厚生労働省「介護保険事業状況報告(年報)」
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要介護の主な原因が認知症の割合(65歳以上/女性)
20.5%
介護が必要になった主な原因は、男女合わせて「認知症」が18.7%と第1位。
次いで、「脳血管疾患」15.1%、「高齢による衰弱」13.8%、「骨折・転倒」12.5%と続く。
男女別では、男性は「脳血管疾患」が23.0%、女性は「認知症」が20.5%と
際立っている。男性の「認知症」第2位で、15.2%。
決して見過ごせる数字ではない。
【出典】厚生労働省「国民生活基礎調査」(注)熊本県を除く
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60歳代の社会参加率
71.9%
60歳以上の者の社会活動(注)の状況は60歳~69歳では71.9%と非常に高い
数字になった。半面70歳以上では、47.5%に留まり、半数を割り込む結果と
なっている。
男女別では、60~69歳が男性74.9%、女性69.6%と、いずれも高い社会活動
参加率を示している。
一方、70歳以上では、男性は51.7%、女性は44.2%と、とくに女性はいささか
お寒い数字になった。
【出典】厚生労働省「平成28年国民健康・栄養調査報告」
(注)質問は「あなたは現在働いていますか。または、ボランティア活動、地域社会活動(町内会、地域行事など)、趣味やおけいこ事を行っていますか」
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60歳代の「学習したい」人の割合
81.4%
60~69歳で81.4%、70歳以上で62.6%の人が「学習したい」と回答している。
ことに60~69歳は、18歳以上の総数の回答率(学習したい)82.3%に比肩する
数字である。
学習したい内容については、60歳~69歳で「健康・スポーツ(健康法、医学、
栄養、ジョギング、水泳など)」が39.8%と最も多く、70歳以上では
「趣味的なもの(音楽、美術、華道、舞踊、書道、レクリエーション活動
など)」が31.5%と最も多い。
【出典】内閣府「生涯学習に関する世論調査」(平成30年)
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60歳代のインターネット利用率
73.9%
60~69歳のインターネット利用率は、73.9%。(過去1年間に利用したかどうか)一方70~79歳では、46.7%、80歳以上では20.1%と、50%を割り込む結果となった。(データは平成30年/2018年)
これを7年前の2010年と比べてみると、60~69 歳が9.5ポイント増と
最も大きく、次いで70~79歳が7.5ポイント増。
インターネットを利用する60~70歳代は依然、増加していることが
明らかになった。
【出典】総務省「通信利用動向調査」
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支えられるべき高齢者の年齢イメージ
80歳以上
60 歳以上の人に、「一般的に支えられるべき高齢者とは何歳以上だと思うか」と聞いた設問では、「60歳以上」又は「65 歳以上」と答えた人は少なく、
「70歳より上」が約8割となった。
第1位は80歳以上で、28.4%。75歳以上の28.1%が続いた。
年齢別に見ると、60~74歳までは「75歳以上」が最も多いが、75歳以上では「80歳以上」が最も多い。
大方のシニアは「支えるべき高齢者」は自分よりひと世代上、
と見ているところが面白い。
【出典】内閣府「高齢者の住宅と生活環境に関する調査」(平成30年度/2018年度)
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以下から上記の内容のホワイトペーパー(PDF)がダウンロードできる。
https://nspc.jp/senior/archives/9799/
株式会社日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男
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