データ図表だけをチョイスし、
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2017年11月7日
前回に引き続き、シニアの時間消費の推移をご案内する。今回は、移動時間、休養・くつろぎ時間、受診・療養の時間量の変遷を5年刻み、40年間にわたって眺めてゆく。まず、移動時間から。
移動時間量の多寡は、即ち運動量の多寡でもある。歩行を伴う「外出」が、健康維持に不可欠とは今や定説に近い。その意味でも移動時間の増加は、シニアには好ましいことだ。
グラフを見れば、面白い傾向に気づく。1976年~2001年までの25年間、4つの標本集団の5年刻みの推移はほぼ同様の傾向にあり、描かれた波形はほぼ相似形である。
時間量では、15歳以上平均と40歳代が多く、高齢者層はかなり水を開けられた状態で追随している。ことに1990年代では高齢者層とそれ以外で、時間量の乖離が目立つ。
一方、2001年以降は、それ以前と全く異なる様相を呈している。
高齢者層では、概ね、移動時間量増加の傾向。それに反して、15歳以上平均と40歳代においては、ここ15年間、一貫して漸減傾向にある。
両者間の時間量の乖離も、近年、目立って小さくなっている。
4つの標本集団の最大乖離幅は、2001年では10分だったものが、2016年にはその50%、5分にまで縮まってきている。最早差はないというところまで、高齢者層が追いつき始めているのだ。
「移動=身体運動の活性化」とは、100%正しいわけではない。5~10分の差を取沙汰しても「重箱の隅」かもしれないが、この傾向は奇しくもある提言の根拠と符合する。
2017年初頭、日本老年学会等は「75歳以上を高齢者と呼ぼう」という提言を世に問うた。その根拠として「現在の高齢者は、加齢に伴う身体的機能変化が10~20年前に比べて、5~10歳若返っている」ことが挙げられていた。
21年前の1996年まで遡って、高齢者の移動時間推移を眺めると、牽強付会の条件つきで、一理はあると思う。
同じく、高齢者層とそれ以外で顕著な傾向の違いを見せているのが「休養・くつろぎ時間」の変遷。両者の波形の相違は、「移動時間」に比べてドラスティックだ。(図2.)
高齢者層の「休養・くつろぎ時間」は過去40年間で劇的に減少した。ことに70歳以上では、1981年のピーク時に1日2時間45分(165分)だったのが、2016年には1時間54分(114分)にまで減っている。36年間に51分の「休養・くつろぎ時間」が削られたというわけだ。
それとは真逆に、15歳以上平均、40歳代の「休養・くつろぎ時間」は概ね増加の傾向を辿っている。この両者が歩み寄った結果、「移動時間」と同様、年齢層間の差はほとんどなくなってきた。
以上二つの時系列データから、「シニアの活性化、活発化」は素直に諾ってよいだろう。さらにもう一つの証左もある。
上図、図3.は、「受診・療養時間」の時系列変化。
15歳以上平均と40歳代の標本集団では、ここ40年間、ほぼ横ばい。特徴的な増減は認められない。それに反して高齢者層では、40年間で時間量が劇的に減少しているのだ。
もっとも、「受診・療養時間」の減少は、医療サービスを供給する側の要因も少なくない。患者数の増加と医師不足から、止むを得ず、一人あたりの受診時間が短縮化されることは想像に難くない。それを割り引いてもこの激減ぶりは、シニアの活性化の一端を担う、重要な根拠にはならないだろうか?
以上2回にわたって、シニア層の生活時間の変遷を概観してきた。
減少する、睡眠、休養・くつろぎ時間、増加する移動時間。シニアの時間消費は「時間つぶし」から、「価値創造」へ舵を切りつつあるのかもしれない。筆者には、ここ数年がひとつのターンニングポイントになると思えてならない。
日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男
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