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秋田県のデータに見る、高齢化率36.4%の現実

 28.9%。令和3年(2021年)の我が国の高齢化率である。総人口1億2550万人、うち65歳の高齢者は3521万人。中でも女性は2049万人、全女性6448万人の31.8%。女性の高齢化率は3割を超えた。男性は25.8%。大まかにいえば、女性は3人に1人、男性は4人に1人が高齢者である。

 高齢者の内訳をみると、65~74歳のいわゆる前期高齢者は1754万人、全人口に占める割合は14.0%。75歳上の後期高齢者は1867万人、同14.9%となった。注目すべきは、後期高齢者の数が前期高齢者を上回ってきたことである。

単位:万人(人口)、%(構成比)
資料:総務省「人口推計」令和3年10 月1日(令和2 年国勢調査を基準とする推計値)
(注1)「性比」は、女性人口100人に対する男性人口
(注2)四捨五入の関係で、足し合わせても100.0% にならない場合がある

 高齢化の進行具合を示す言葉として、一般的には、高齢化率(65歳以上の人口が総人口に占める割合)によって、3段階に分類されている。高齢化率が7%を超えると「高齢化社会」、14%を超えると「高齢社会」、21%を超えると「超高齢社会」と呼ばれる。

我が国が「高齢化社会」に突入したのは、高齢化率が7%を超えた昭和45(1970)年。その37年後の平成19(2007)年には高齢化率が21%を超え、「超高齢社会」を迎えた。直近のデータは先に見た通り、高齢化率が30%目前まで迫っている。もちろん、これは世界一高い数字で、これからは人類が誰も経験したことのない状況である。

 将来推計を見てみよう。令和27(2045)年には高齢化率が36.8%。令和47(2065)年には38%を超えるとされている。なかでも75歳以上の後期高齢者が65~74歳の前期高齢者の約2倍となり、全人口の約25%を占める「重高齢化社会」に向かっている。

グラフ:高齢化の推移と将来推計

※高齢化率については、令和2(2020)年までは総務省「国勢調査」、令和3(2021)年は総務省「人口推計」(令和3年10月1日推定値)、令和元(2020)年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29 年推計)」(出生中位・死亡中位仮定)による
資料:棒グラフと実線の高齢化率については、2020年までは総務省「国勢調査」(2015年及び2020年は不詳補完値による。)、2021年は総務省「人口推計」(令和3年10月1日現在(令和2年国勢調査を基準とする推計値))、2025年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」の出生中位・死亡中位仮定による推計結果

 世の中にはさまざまな将来予測があるが、将来推計人口は最も確度の高いものの一つといわれている。では、いまから23年後、2045年に高齢化率が36.8%(推計)となった日本の姿はどのようなものだろうか?なかなか想像もつかないのだが、一つのヒントがある。

 現在の日本の高齢化率は先にも述べたように28.9%だが、それは全国を一つの人口構成でみた場合のものである。都道府県別にみると当然数字は大きく違ってくる。では現在最も高齢化率の高い都道府県はどこかおわかりだろうか?

 答えは秋田県。2021年10月現在で38.1%である。この数字を見ると、2045年どころか、2065年の日本の高齢化率38.4%(推計)とほとんど変わらない。つまり、秋田県は今から40数年後の日本高齢化を先取りしているともいえる。

以下の表をご覧いただきたい。これは現在の秋田県と全国、20数年後の2045年(2065年の都道府県別人口推計は見つけられなかった)の人口構成を4つのクラスターで比較してみたものである。

出典:2021年は総務省統計局 人口推計2021年10月1日現在
2045年は国立社会保障・人口問題研究所 「日本の地域別将来推計人口」平成30(2018)年推計による

 これを見ると、高齢者だけではなく、各世代に置いても秋田県が20数年先行していることがわかる。このことから、秋田県の現状を見ることで、20数年後、高齢化率が36.8%(推計)となった日本の一端をうかがえるのではないかと考えた。

 そう考えて秋田県のことを調べていると、一つの興味深い資料を見つけた。それは秋田県庁の企画振興部調査統計課が毎年まとめている「あきた100の指標」というものである。秋田の現状を「自然環境」「人口・世帯」「産業全般」「第1次産業」「第2次産業」「第3次産業」「財政」「生活環境」「福祉・医療」の100項目にわたって、データで表している。

 旅行や仕事で何度も秋田を訪れたことがあるが、ただ旅するだけでは見えないものが、このデータからは見えてくる。それが、高齢化が進んだ日本の姿を幾分なりとも、映しているとすれば、そのデータをつぶさに見ていくのも無駄ではない。

令和2年度版「あきた100の指標」は以下から誰でも自由にダウンロードできる。

https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/954

 残念ながら、この資料は令和2年版をもって終了と記載されている。以下、引用するのは最新の令和2年版(使われているデータは平成27~31年くらいのものが多い)である。

 この資料の優れている点は、各指標の全国平均と都道府県別のランキングを併せて掲載していることにある。このおかげで、高齢化が進んだ秋田県が全国に比較して、どの位置にあるかがわかる。また、東京都や首都圏、おなじく高齢化が進む、高知県との比較もできる。

 では項目別に具体的な指標を見てみよう。わかりやすいように代表的な指標について全国平均、秋田県の順位、そして上位3都道府県と下位3都道府県をグラフ化した。

◆自然環境
 県の面積は11,637.52k㎡は(全国、以下同様)第7位と広い。可住地面割合は33位だが広さは3,204.37k㎡と他の東北4県と変わらない。年間降水量は1,566.5㎜で22位。豪雪地帯のイメージがあるが、降水量は真ん中くらい。富山県、石川県だと2,000㎜を超える。

◆人口・世帯
 人口は981,016人で38位、100万人を下回った。人口密度は306.1人(可住地面積1㎢当たり)で46位。47位(最下位)は当然だが、北海道の236.3人。トップは東京都の9,724.0人。秋田県の31,8倍になる。相当過疎化が進んでいることがわかる。

出典:平成30年10月1日 総務省統計局 「人口推計」による

 年齢別人口を見ると、述べた通り15歳未満は全体の10.0%(47位)、15から64歳が53.6%(47位)、65歳以上は36.4%で1位。高齢化率は全国が28.1%、秋田県が36.4%、あと、高知県、島根県と続くがいづれも30%を超えている。※データは平成28年のもの。

平成30年10月1日 総務省統計局 「人口推計」による

 もう一つに高齢化の指数である「従属人口指数」は86.5人で1位。従属人口指数とは
従属人口指数 =(年少人口 + 老年人口) ÷ 生産年齢人口 ×100で計算し、働き手である生産年齢人口100人が社会的・経済的な負担となっている年齢層である子供と老人(従属人口)をどれだけ養うかを表す指標。生産年齢人口の多少による影響を除いているため、人口高齢化の負担をより端的に示す指標である。多いほど高齢化による負担が多い。47位の東京都は52.2人、全国平均は67.6人。

平成30年10月1日 総務省統計局 「人口推計」による

 平均年齢は秋田県が51,27歳で1位、一番若いのは沖縄県で42.1歳、東京都は44.7歳(44位)、全国平均は46.4歳である。50歳を超えているのは全国で秋田県のみである。

平成27年10月1日 総務省統計局 「国勢調査」による

 人口性比(女性100人当たり男性人口)88.6(45位だが同じ数字が3県あるので最下位)。女性の高齢者が多いことを考えると、若い女性が少ないということがわかる。婚姻率(人口千人当たり)は3.1で47位。未婚率は男27.7%で46位、女17.2%で47位。当然、出生率は低くなり5.2で47位、自然増減率(人口千人当たり)は-10.6で47位。高齢化が進むと人口は急激に減っていくことがわかる。

平成30年10月1日 厚生労働省 「人口動態統計」による

 死亡率は15.8(人口千人当たり)で1位。この数字を今の日本全体に当てはめると、年間死亡者は200万人を超えることになる。全国平均は11.0である。

平成30年10月1日 厚生労働省 「人口動態統計」による

 世帯構成を見ると、核家族世帯割合は秋田が52.0%で41位、東京都が47.8%で最下位である。一番割合が高いのは奈良県の63.9%、続いて埼玉の61.3%。東京で核家族が少ないのは単独世帯が多いためであり、奈良、埼玉に核家族が多いのは「核家族のドーナツ化現象」のためと思われる。

 65歳以上(高齢者)のいる世帯の割合は秋田が55.8%で1位、あと山形、島根と続く。ちょっと意外なのが、高齢単身世帯の割合。秋田が12.3%で13位。少なくはないが兵庫県の数字と変わらない。高齢化が進むと高齢単身者が増えるのが大きな課題とされているが、秋田県では比較的少ない。ちょっとホッとする数字である。ちなみに1位は高知県の16.5%。これは森林面積割合の高さ、可住地面積の少なさがともに全国1位で中山間地域に高齢者が取り残されているためと想像される。

平成27年10月1日 総務省統計局 「国勢調査」による

◆産業全般
 就業者比率、秋田県は54.3%(44位)ながら、全国平均が57.5%だから、高齢者もしっかり仕事をしていることがわかる。従業者数(生産人口千人当たり)792.6で19位。高齢者が多い分、若手はしっかり働かねばならない。雇用者比率も78.5%で36位。全国平均が82.3%だから、高齢化率を考えると、長く働いている人が多いことになる。

平成27年10月1日 総務省統計局 「国勢調査」による」

 完全失業率は4.3%で22位とほぼ中位である。有効求人倍率は1.48で30位。若い人が少ないので倍率が上がる可能性はある。高齢化率が38%を超えた40年後の日本でも当然高齢者が重要な労働の担い手になる。

 労働生産性で秋田県は693.9万円で37位。全国平均の850.5万円より低くなるのはやむ得ないが、高齢化率を考えると健闘しているといえよう。上位は東京都を別にして愛知県、滋賀県といった工業化が進んだ地域が占める。

平成28年度 内閣府経済社会総合研究所 「県民経済計算年報」による

 平均月間総実労働時間数(常用労働者1人当たり)152.5時間で23位。1位は青森県で159.6時間、2位が福島県、一番労働時間が短いのは奈良県で139.6時間。高齢社会が進展しても、労働時間が極端に長くなったり、短くなったりはしていない。労働生産性は6,939円で39位。九州各県、沖縄県に比べると高い。1人当たり県民所得2,553千円で39位。40位の奈良県よりも上である。

◆第1次産業(農業、林業、漁業)
 産業別にみると1次産業比率が高い。9.8%で5位。農家世帯比率は12.6%で4位。農業に定年はない。その上、漁業や林業に比べ、さらに高齢まで就業が可能である。高齢化が進んでも、高齢者がしっかり働ける社会であれば、40%近い高齢社会であっても持続可能なのであることがわかる。

平成27年10月1日 総務省統計局 「国勢調査」による

 1農家当たり経営耕地面積を見ると、2.19haで2位。北海道は特別とすると実質1位である。最も高齢化が進んだ県が経営耕作地面積では北海道に次ぐ。水稲10アール当たり収量も4位である。農家人口比率は14.1%で1位、しかし専業農家比率は37位。さらに水田率が87.6%と高いこともあり、ITやロボット技術を取り入れた農業機械の進歩がかなり進んでいることの証明であろう。高齢化を克服するヒントはここらあたりにもありそうだ。

平成27年2月1日 農林水産省 「2015年農林業センサス」

◆第2次産業(鉱業、建設業、製造業)
 第2次産業に従事している人の割合は24.4%で24位。全国平均が25.0%だから遜色ない。1位は滋賀県の33.8%、東京都は17.5%で45位である。

平成27年10月1日 総務省統計局 「国勢調査」による

 ただし、製造業1事業所当たり製造品出荷額等は782百万円で44位、全国平均は1,695百万円、製造業従業者1人当たり製造品出荷額等は2,183万円で46位、全国平均が4,146万円なのでいずれも半分以下、もしくは半分程度である。

 ポイントとなる製造業従業者1人当たり付加価値額は秋田県が916万円で43位、全国平均が1,345万円。製造業従業者1人当たり現金給与総額は347万円で42位、全国平均の446万円に比べると厳しい数字になっている。

平成30年 経済産業省 「工業統計調査」による

◆第3次産業(電気・ガス・熱供給・水道業、情報通信業、運輸 郵便業、卸売・小売業、金融・保険業、不動産 物品賃貸業、飲食店、宿泊業、医療、福祉、教育、学習支援業、複合サービス事業等)
 第3次産業に従事している人の割合は65.8%で31位。全国平均が71.0%だからやや少ないという印象。小売り事業所数が多い(人口当たりで全国3位)、有名観光地が多い、小規模なサービス業が多いという点があるのかもしれない。

平成27年10月1日 総務省統計局 「国勢調査」による

 卸売業・小売業従業者1人当たり年間商品販売額は3,036万円で40位、だが小売業年間商品販売額(人口1人当たり)は111.45万円で9位、全国平均の108.3万円を超えている。2位が宮城県、3位が北海道、1位は東京である。上位に東北各県、北海道がきているのは農協、ホームセンターなどでの農耕、畜産用品の購入が含まれているためと想像される。

平成28年7月1日 総務省統計局・経済産業省 「経済センサス-活動調査」による

◆財政
 市町村税収入額(人口1人当たり)は秋田県が110.5千円で47位(全国最下位)、全国平均は168.4千円。1位の東京都は288.5千円。やはり、高齢者が多くなると地方の税収入は減少する。経常収支比率(数値が低いほど、財政構造に弾力性があるといわれる)は92.3%で43位(下位程よい)。全国平均は単純平均で95.2%、1位は大阪府の100.5%である。

平成29年度 総務省自治財政局 「地方税に関する参考計数資料」による

 将来負担比率は254.7で7位、全国平均は188.5%。1位は兵庫県の335.0%(震災の影響か?)1位は東京都の12.5%である。東京都の次に沖縄県、栃木県がきているので、一概に高齢化は将来の負担を増やしているとは言えない。

平成29年度 総務省自治財政局「都道府県決算状況調」による

◆生活環境
 持ち家率は高く、78.0%で全国2位。住宅の延べ面積も131.93㎡で4位と住環境には恵まれている。いっぽう、空き家、老朽化している家屋も多いと想像される。

平成27年10月1日 総務省統計局 「国勢調査」による

 ちょっと意外なのは理容・美容所数(人口10万人当たり)は552.4か所で全国1位。東京都(227.4か所)の倍以上ある。交通の便の悪さが影響しているのかもしれない。

 自家用乗用車保有台数(1世帯当たり)1.39台で19位。高齢の運転者が多いことがわかる。公共交通の廃止などモビリティの面で自家用車に頼らざる面がある。交通事故発生件数(人口10万人当たり)は181.1で42位。高齢者の重大交通事故が増えていると話題になっているが、全体としては少ない。

平成31年3月末 (財)自動車検査登録情報協会 「自家用乗用車の世帯当たり普及台数」による

 刑法犯認知件数(人口千人当たり)も2.51件と全国で一番少ない。出火率も高齢者が多いので高そうだが、人口1万に当たりで見ると2.87件で33位。放火が少ないためと考えられる。

 デジタル化を見ると携帯電話(スマートフォン含む)普及率(契約数)は92.7%で全国47位、インターネット利用率も67.1%でこちらも47位。やはり、この時点(平成30年)では高齢者のデジタル利用は進んでいない。※令和4年時点ではかなり普及が進んでいると思われる。

◆医療・福祉
 医療を見ると、医師の数(人口10万人当たり)は246.0人で30位、全国平均は258.8。看護師の数も(〃)1473.7人で22位。全国平均の1204.6人を上回っている。病院・診療所数(〃)は90.0か所26位で全国平均(87.4か所)を上回っており、不安のある数字ではない。介護の面でもホームヘルパー数(人口10万人当たり)は293.8人で全国24位。

平成30年 厚生労働省 「医療施設調査」による

 国民健康保険診療費(被保険者1人当たり)は297,777円で下位から23位、全国平均の272.021円よりは多いが、高齢者の多さに比べれば、少ないともいえる。最も多いのが山口県で353,259円である。

平成29年度 厚生労働省「国民健康保険事業年報」による

 死亡原因で見ると、秋田県も全国統計と同じ、1位がガン(悪性新生物)で人口10万人当たり424.0人(全国1位)、2位が心疾患の213.8人(〃11位)、3位が脳血管疾患で157.7人(〃2位)となっている。

 これまで、高齢化率36.4%(平成30年10月当時)の秋田県の状況を「令和2年版秋田100の指標」から見てきた。そこには23年後(2045年)の日本の姿を垣間見ることができた。もちろん、2045年には一つの自治体ではなく国としての高齢化率が36.8%(予測)となる。そのことはもっと深刻な影響をもたらすことは想像に難くない。

 しかし、これまで見てきたように、高齢化率が36.8%になっても、国が亡ぶわけでも、日々の暮らしに困るということもない。さらにこの25年に様々な制度改革、技術革新もなされるだろう。いっぽう、人の身体は25年でそう大きな変化があるわけではないが、医療面で多くの進歩があり、がんの克服や再生医療による恩恵などで、寿命、とりわけ健康寿命が延びることが期待される。

 それに伴い、高齢者の就業はますます増え、生産人口の減少を補うことになる。かたやそうした必然的な流れに加え、この25年を「重高齢化」に備える期間として今から備える必要がある。その備えを考えるとき、秋田県の現状は多くの示唆に富んでいる。

 残念ながら「あきた100の指数」は令和2年で作成終了となってしまったが、日本の将来、必ずやってくる高齢化を考える貴重な資料(として、ご一読をお勧めする。

令和2年度版「あきた100の指標」。
https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/954

 この後、コロナ感染症による影響が反映されたデータ揃った時点で、これらの比較を再び試みたいと考えている。

    株式会社日本SPセンター シニアマーケティング研究室 倉内直也

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