
女性向け雑誌「ハルメク」で、私がマメにチェックするのはスマートフォンやデジタル機器の特集である。
新しいアプリの紹介や、写真の整理、LINEの使い方、キャッシュレス決済など、「もう少しスマホを使いこなせたら暮らしが楽しくなる」と感じさせてくれる記事が多い。
通販も時々利用している。歩きやすい靴や着心地のよい服など、「私たち世代のことをよく考えているな」と感じる商品が多く、自然と信頼感を持っていた。
脳トレアプリとの出会い
そんなハルメクの記事の中で紹介されていたのが、「ハルメク脳トレ」というスマートフォン向けアプリだった。
年齢を重ねるにつれ、人の名前がすぐに出てこなかったり、買い物に行って何を買うつもりだったのか忘れたりすることが増えてきた。もちろん日頃困っているわけではないが、「少し頭を使う習慣を持った方がいいかな」と感じることはある。
紙のクロスワードや数独に興味はあったものの、本を買って机に向かうほどではなかった。その点、スマホで手軽にできるなら続けやすそうだと思った。「ハルメクが紹介しているものなら、私にもできるだろう」そんな気持ちでインストールしてみた。
最初の壁は「権限」だった
インストール自体は問題なかった。
ただアプリを起動してすぐに戸惑った。「通知を許可しますか」「権限を許可してください」という画面が現れたのである。私には正直、その意味がよく分からなかった。
通知を許可すると何が起きるのか。許可しないと使えないのか。どこまで許可してよいのか。若い人には当たり前のことかもしれないが、私たち世代には「権限」という言葉自体、あまり身近ではない。
結局、その部分は主人に見てもらった。ところが主人も、「何のことか分からんな」と首をかしげた。もともと説明を読むのが苦手な人なので、少し触っただけで「わけが分からん」と言って、やめてしまった。
高齢者向けアプリをうたうのであれば、最初の入口こそ一番丁寧に案内してほしいと感じた。
「数独」初心者の私には少し難しかった
私は数独をほとんどやったことがない。新聞で見たことはあっても、ルールをきちんと理解しているわけではなかった。
ところがアプリは、数独を知っていることを前提に進んでいく。どこを押せば数字が入るのか。なぜその数字を選ぶのか。何が正解なのか。理解するまでに少し時間がかかった。
開発する側にとっては当たり前のことでも、初めて触る人には当たり前ではない。特に高齢者の場合、「分からないことが分からない」という状態になりやすい。画面のどこを見ればよいのか、次に何をすればよいのか、その手がかりが見えないと不安になる。
最初に「数独って何?」という説明や、数字を一つ入れてみる練習モードがあれば、もっと安心して始められるのではないかと思った。

それでも続けたくなる理由
使い続けているうちに良い点がたくさん見えてきた。何よりもまず、紙に回答するクイズに比べると、スマホならすぐに始められて、鉛筆や消しゴムもいらない。
数字を間違えてもタップ一つで消せる。これは思った以上に快適だった。紙の数独では消しゴムを使うたびに紙が汚れてしまうが、その心配もない。
自分のレベルに合わせて難易度を選べるのも良い。最初は簡単な問題しか解けなかったが、少しずつ難しい問題に挑戦できるようになると達成感がある。さらに、解答にかかった時間を記録してくれる機能も励みになる。
昨日より少し早く解けた。先週より迷わなくなった。そんな小さな変化が見えると、続ける気持ちになる。脳トレというより、自分の変化や成長を確かめる楽しさに近い。
アプリに感じた違和感
使っていて気になる点もあった。最も大きいのは広告である。問題を解くたびに長い動画広告が流れることがあり、閉じるボタンも分かりにくい。私は何度か「問題を解いている途中だが、やめてしまおうか」と思った。広告の内容そのものより、「どこを押せば広告が閉じるのか分からない」ことがストレスになるのである。
もう一つ気になったのがデザインだった。全体的にかわいらしい色使いやイラストが多い。そのことは悪くないのだが、行き過ぎると抵抗がある。74歳になっても旅行に行き、映画を観て、おしゃれも楽しむ。高齢者だからといって、かわいらしさだけを求めているわけではない。むしろ落ち着きや知性を感じるデザインを好む人も多い。「高齢者向け」と「高齢者が心地よいと感じるもの」は、分けて考えてほしいと思った。
アプリの音楽も気になった。起動中ずっと流れている音が少し落ち着かない。脳を使って集中するゲームなのだから、無音でもいいのでは、と思ってしまう。
脳トレ以上の価値がある
それでも私は、このアプリを使い続けている。理由は、脳を使う楽しさがあるからだけではない。スマートフォンを使うこと自体が、私にとって小さな挑戦だからである。以前なら「難しそうだからやめておこう」と思っていたことも、今は「まず触ってみよう」と考えるようになった。脳トレを通じて、頭だけでなく気持ちも少し前向きになっているのかもしれない。
アップデートに期待している
個人的には、ハルメク脳トレに改善してほしい、と思う点もある。最初の説明はもっと分かりやすくしてほしいし、広告の長さや閉じ方にも工夫がほしい。デザインも、かわいらしさだけではなく、大人が長く使いたくなる落ち着きを選べると嬉しい。
それでも私は、このアプリに期待している。「頭を使う楽しさをスマホで気軽に続けられる」という体験には、確かな価値があるからだ。何より、私たち高齢者が新しいことに挑戦するきっかけを与えてくれる。
使いにくいところがあるからこそ、「もっと良くなってほしい」と思う。次のアップデートで、初めて使う人にも、説明を読むのが苦手な主人にも、「これなら分かる」と感じてもらえるようになることを期待している。
フリーライター(74歳)山ノ内明子
※本記事は、編集部が実際に利用・確認した範囲での感想です。利用環境や個人の状態によって感じ方は異なります。掲載内容は、特定の商品・施設の公式見解ではありません。
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