開封の難しさに気づくきっかけは、薄切りベーコンのパック包装(スキンパック)である。妻の在宅介護の関係上、家事の大半は私が行っている。時間が取れれば問題ないのだが、月・水・金のデイサービスに妻を送り出す際には時間との勝負になる。ベーコンエッグにパンとサラダ、フルーツというのがわが家の朝の定番。たまたま未開封のパックを開ける段になって、容易には開けられないと気づいたのである。

【ベーコンのスキンパック】
開口部の三角形の二辺は7mm程度。素材の厚みなどにもよるが、このような小さな開け口では高齢者にとっては、指先で開けたままの状態を保持することは難しい。
要因はいくつかある。まず開口部が小さい。指先を開口部に保持することがまず、第一の関門だ。高齢者ともなれば、指先の感覚が鈍くなる人は珍しくない。指先を開口部に入れ、片面を抑えつつ、引っ張って開けられるか…。実はこれに時間がかかる。そして第二の関門。スキンパックを開けるには力が要る。若い頃なら何でもないことが、出来にくくなる。おまけに、調理中の指先は脂分が付着していることが多い。慌てて手を洗い直してもすぐに落とせるわけでもない。
そこで、考えてみた。シニアにはこのような「包装に関する課題」が多いのではないか?
身の回りにある厄介な包装を改めて抽出、分類、そして共通点を炙りだしてみることにした。「開封困難」以外の課題にも焦点を当ててみた。
あくまで、個人的な体験の域を出るものではないが、シニアの「アクセシビリティ」について、一石を投じることができれば、幸いである。
なお当記事は筆者が実際に利用・確認した範囲での感想である。当然、利用環境や個人の状態によって、感じ方は異なる。掲載内容は、特定の商品に対する公式見解ではないことを明記しておく。
包装に関する3つの「しにくい」
ダインニング、納戸、冷蔵庫内を改めて、包装という点で見つめ直してみると、実に様々な包材が壁を持っていた。そして、その壁は大きく3つに分類できた。3つのうち2つは開封・開梱に支障をきたすもの。1つは商品理解を妨げるものである。すなわち、開けにくい、見つけにくい、読みにくいの3つの「しにくい」だ。
以降、体験的に3つの事例を見てゆくことにする。
①開けにくい
構造や素材が、シニアの開封困難を招いている包材群である。ベーコンやハムのパックなど包装工程から生まれる「開けにくさ」以外に、流通、小売り段階での包材、包装処理に多く見られる。
その代表例が鮮魚や野菜などの生鮮食品やサンドイッチのラッピングだ。かなり強力にラッピングされているので、とにかく力が必要になる。破る方向によっては、かなり手こずることもしばしばだ。また、店によっては二重にラップしてある例もある。汁漏れを防ぎ、安全に持ち帰れるという配慮はありがたい。しかし、その配慮によって、ラップの端を探し、つまみ、はがす作業も二度必要になる。

【レタスのラップ包装】
強力なラップ包装は、高齢者でなくても開けにくい。無事開けられても、包装は破れ、嵩張るゴミと化してしまう。野菜室で冷蔵保存する際には、再度自分でラップをかけることになる。

【魚の切り身パック】
これも思った以上に強力なラップ包装。結局ハサミを使うしかないことも往々にしてある。陳列で映える表面は美しいが、裏面には、開梱の難しさが控えている。

【サンドイッチのパック】
開封箇所は見つけやすいのだが、フタを開けるには意外に力が必要。なおかつ微妙な力加減も要求される。無理に力を入れて開けると、食材が飛び出しかねない。パックの上から二重にラップされている例も見られる。
②見つけにくい
「開けにくい」以前に、どこから開けてよいのか、戸惑う包材も多い。開封・開梱の箇所を示してないものは、ビニール製の封筒やダンボールの透明テープ、ワインのキャップシールなど。身の周りにあるものだけでも、いくつもある。
一方で、「ここから開けてください」と記載されているのにも関わらず、開封口が見つからないものもある。介護用紙パンツの包装がそれに該当する。
また、稀ではあるものの、意外な箇所に開封口が設けられているものもある。見た目から自然に予想される位置にないため、どこから開けてよいのか、直感的にわかりにくい。

【透明封筒・フィルム封筒】
開けるのに意外に厄介なのが、透明封筒・フィルム封筒の開口部。いずれも郵便物である。赤の楕円で囲った部分が開口部なのだが、いずれも視認性が極めて低い。首尾よく見つけても、かなり開封しにくい。透明封筒の粘着部は再びくっついてしまい、再度開封しないといけなくなる。(写真左)

【OPPテープ】
ポリプロピレン製の透明なOPPテープは、水に強く丈夫なことから、よく用いられる。このテープの難点は「どこから開梱すればよいか」がわからないことだ。透明なテープの端や重なりを見つけるのは、高齢者にとって難作業なのだ。結局、ハサミやカッターのお世話になることになる。紙製のクラフトテープや布テープなら、開け口を見つけることは格段に容易だが、透明なテープだと一気に難敵になる。

【介護用紙パンツのパッケージ】
親切にも「ミシン目にそって開けてください」と書かれていて、心遣いとしてとても親切で好感が持てるのだが、困ったことにそのミシン目が見えないのだ。写真に撮っても写らないほどだ。我が家では納戸に置いて、毎日一枚取り出しているが、暗い納戸でミシン目を探すのは絶望的である。ミシン目そのものを明確に示してもらいたいところだ。

【ワインの栓】
ワインのキャップシールも開梱困難な包材の代表例だ。どこから開けてよいのか本当に戸惑う。たとえミシン目が入っていても、とても細かく、高齢者の視力では見つけることは極めて難しい。これが嫌で、私はスクリューキャップのワインしか買わないことにしている。

【温泉卵のパック】
一般的に文字が正しい方の下部(A)が開口部だと思う。それがアフォーダンスだからだ。ところが写真のパックの開口部はBの部分。筆者はBと思うことなく、結局ハサミでAの部分を切って開けた。このようにとくに高齢者は、今までの経験則から逸脱することが難しいのだ。
③読みにくい
包材という限られた面積の中で、記載必須の項目が多いこともあり、どうしても読みやすさは犠牲にされがちである。ある程度は仕方がないとはいえ、改善すべき余地は常に残されている。あまりにも小さな文字は論外だが、色遣いだけ
でも可読性はずいぶん向上できる。
高齢者の一般的な傾向として、原産国表示や、消費・賞味期限には敏感である。「どうせ読まれない」と考えるなら高齢者は購買から離れていくと考えた方がよい。

【胡麻豆腐の容器に記された文字】
開け方について記されているのだが、その本文は、眼を近づけたり、遠ざけたりしても、結局判読できなかった。文字のサイズもさることながら、ライトグリーンという視認性の低さが最大の要因であろう。背景となる胡麻豆腐の素材色「利休茶」と文字色のコントラストが弱く、文字が非常に読みにくい。イラストでかろうじてわかるものの、読めない文章は書かない方がましである。

【オリーブオイルのラベル】
帯の部分の文字回りのデザインに問題がある。確実に読んでもらうためには、淡い色のバックに白抜き文字は厳禁。高齢者にはほぼ読めない。
高齢者が感じたプラスティック包装の課題とは?
以上、身の回りにあるものの中から、「包装」に関わる高齢者にとっての課題を挙げてきた。日常的に使われているプラスチック容器包装に課題が多いことも、漠然と見えてきた。
確かにプラスチック素材は、我々に非常に大きな便益をもたらしてくれている。例を挙げれば
①製品の特長を損なわずに消費者の手に届ける
②有害微生物汚染、腐敗等から守るなど安全・衛生水準の担保
③製品の品質を維持し、輸送・ 保存を可能にする
その他にも多くの役割があり、業界ではさらに用途に応じた容器包装ごとに、保持する役割を定めている。たとえば、冒頭に紹介した、スキンパックでは、守るべき商品の品質として3つを挙げている。すなわち、①油の酸化防止 ②風味の低下 ③ 微生物からの保護がそれに該当する。それに対して包装の機能として、①酸素バリア性、真空・脱気 ②高度なガスバリア性 ③加熱殺菌、完全密封 冷蔵条件での輸送、保管という課題がクリアされている。
確かに、消費者に届くまでは完璧なのだが、「それに対して消費者がどう対処するか」への配慮は足りないと、個人的には感じる。
加えて、パッケージという限られた面積の中で、記載必須の項目が多いこともあり、どうしても読みやすさは犠牲にされがちである。
「開けにくい、見つけにくい、読みにくい」と思われたなら、とくに高齢者は、「次からは買わない」に直結する。更なる工夫や気配りに期待するところ大である。
株式会社日本SPセンター シニアマーケティング研究室 特別顧問 中田典男