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シニアのデジタル対応は?-最新の「通信利用動向調査」調査結果から

 待たれていた総務書による通信利用動向調査の最新版、「令和4年度 通信利用動向調査」が5月29日に公表された。この調査はインターネットの利用率や情報通信機器の利用について、世帯(全体・構成員)及び企業、事業所を対象として、平成2年から毎年実施されている。今回は令和4年8月末の世帯及び企業、事業所における情報通信サービスの利用状況等について調査したものとなっている。調査には年齢階級別の設問があり、シニアのデジタル対応を知る、最も新しく信頼性の高いものである。

 今年の調査結果でシニアのデジタル対応に関して言えば「目新しいものはないが、確実にシニアのデジタル化は進んでいる」といいうことになろう。まずは、今回の調査全体の結果の要点を報道発表資料から、そのままご紹介する。今回の要点は

・スマートフォンの保有状況は、世帯の保有割合が90.1%となり9割を超えるとともに、個人の保有割合でも77.3%と堅調に伸びている。

・個人のインターネット利用機器は、引き続きスマートフォンがパソコンを上回り、20~59歳の各年齢階層で約9割が利用している。SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を利用する個人の割合は堅調に伸びており全体で8割に達した。

・テレワークを導入している企業の割合は引き続き5割を超えている一方、今後導入予定があると回答した企業の割合は減少傾向にある。導入目的は、「新型コロナウイルス感染症への対応(感染防止や事業継続)のため」の割合が87.4%となり最も高い。

・クラウドコンピューティングサービスを利用している企業の割合は引き続き7割を超えている。「非常に効果があった」又は「ある程度効果があった」とする企業は、利用企業全体の89.0%に上った。
としている

ではシニアのデジタル対応について調査結果を見てゆこう

1) インターネットの利用状況

 プレシニアに当たる50歳代では95.4%とネット環境の中で成長してきた世代とほぼ変わりない。60歳代でも86.8%とほとんど人が利用している。70歳代になると大きく利用率は落ちるがそれでも6割以上。80歳代でも3人に1人はネットを利用している。

 ではデジタルシニアとシニアの壁は何処にあるのか?シニア世代の内訳をもう少し詳しく見ていきたい。幸いこの調査では60歳代と70歳代は5歳ごとのデータがある。それをグラフにしたのが下記である。

 これを見ると60~64歳、高齢者(65歳以上)になる手前では90.6%と9割を超えた。雇用延長などで65歳まで働くことが当たり前になりつつある現状を鑑みると納得できる結果である。65~69歳でも83.2%と8割以上。この結果を見ると、60歳代はすでにデジタルに対応できると判断できる。では70歳代はどうだろうか?70から74歳、社会制度上「前期高齢者」に当たるが、71.5%と7割を超えている。75~79歳で56.8%、半数を超えるが、このあたりに「壁」がありそうである。

 65歳以上、つまり一般的に高齢者というくくりで見ると、58.9%となってしまう。これは団塊の世代が75歳以上になり、後期高齢者の数が増えているためであるが、75歳まではつまり「前期高齢者」でもすでに7割を超えているという理解をしておくべきである。

2) インターネットの利用機器

 あらゆる世代で「スマフォファースト」が定着してきた(学童世代は教育前場でのタブレット使用があるため、その限りではない)。世帯普及率でも90.1%と9割を超えた。プレシニアの50歳代では90.9%、60歳代でも、84.9%に上る。70歳代で7割以上の71.5%、80歳代でも52.2%と半数を上回った。

 つまり、シニアへのコミュニケーション戦略を考えるとき、スマートフォンでの情報伝達をどうすべきかを十分に考慮する必要があるということである。アプリの設計者は若い世代が多く、小さい文字の使用、ナビゲーションの説明不足など、シニアの特性をよく理解せずに作成されているケースがよく見受けられる。これからは「アプリはシニアも使う」前提での設計、作りこみが求められている。

3) インターネットの利用頻度

 インターネットが生活インフラとなった場合は、毎日利用するのが普通と考えられる。その視点で調査結果を見ると、60歳代で79.2%、ほぼ8割。ここまではまさに日々の暮らしに欠かせない存在となっていることがうかがえる。

 シニアの部分を詳しく見ると、65歳以上の高齢者全体を見ると60.1%だが、60~64歳では83.9%と若い世代と遜色がない。仕事をしていれば何らかの形でネットを毎日利用することになろう。

 65~69歳となると74.3%とやや低くなるが7割を超えている。70~74歳は62.9%である。2022年の就業率を60~64歳は73%、65~69歳では50.8%と大きく減少する(総務省の労働力調査による)。このことからネットの利用頻度、とくに毎日使うことと就業率は強い関係があると想像される。

4) SNSの利用

 少し以前までSNSは若者のコミュニケーションという印象が強化かったが、最近ではシニアもSNSを活用している。とくに「LINE」は友人や家族とのコミュニケーションツールとして利用しているシニアは多い。加えて新型コロナのワクチン接種の申し込みなどがきっかけになったと考えられる。下のグラフはSNSの利用者を今回の調査と2017年に実施された調査結果を比較したもの。

 今回の調査では60歳代で7割以上の70.4%、70歳代でも57.1%と半数を大きく超えている。注目すべきはシニア層の利用者の伸びである。これを見ると、最近では若い世代より、シニア世代の伸びが大きい。20歳代の1.2倍に対して60歳代では2.4倍、70歳代では3.9倍となっている。

 以下のグラフでシニアの内訳をみてみると、65歳以上、高齢者全体では53.7%だが60~64歳は73.6%と若い世代と大きくは変わらない。65~69歳でも67.2%と7割に近い。SNS利用に関しては60歳代と70歳代の間に「壁」がありそうである。

5) セキュリティ対策

 インターネット利用に関してさまざまな脅威が報告されているが、シニアの対応はどうだろうか?同じ調査でインターネット利用に不安を感じている割合は60歳代が82.1%、次いで70歳代が81.5%と続く。しかし、下のグラフのように、シニアのセキュリティ対策は年齢が上がるほどに対策をしていない人の割合が増える。

 不安を感じているが、その不安が具体的にどのようなこと(脅威)かが理解できておらず、そのために十分な対策が取られていない可能性がある。これからも、増え続ける脅威に対して、シニアにわかりやすく説明することで、シニア自身が適切な対応をとれるようにしてゆく必要があるだろう。

まとめ

 シニアのデジタル対応の「壁」は、インターネット利用に関しては75歳までの「前期高齢者」それ以降の「後期高齢者」との間、SNSの利用に関しては60歳代と70歳代の間に壁がありそうである。また、就業率もシニアのネットの利用頻度に影響を与えていると考えられる。その点からも65歳まで働くのが普通になりつつあり、65歳までは若い世代と大きな変わりがない。

 「デジタルによるコミュニケーションが成り立つのは何歳までか?」ということでみれば、すでに75歳位まではリーチすると考えてもよさそうである。

総務書 令和4年 通信利用動向調査
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/statistics05.html

      株式会社日本SPセンター シニアマーケティング研究室 倉内直也