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シニアの社会活動参加、諸外国に比べて日本はどう?

 前稿では、シニアの社会参加が他の年代に比べて決して旺盛ではないことが明らかになった。いくつかの活動分野で相対的に多世代を上回っていてもその差はわずかであり、「シニア=ボランティア」というイメージは必ずしも正鵠を射ていないこともわかってきた。これは日本特有のファクトなのだろうか?

 内閣府では、昭和55年から5年に一度、高齢者の意識や行動、状況についての国際比較調査を実施していて、今回は9回目に当たる。比較対象国は、アメリカ、韓国、イギリス、フランス、タイ、イタリア、デンマーク、ドイツ、スウェーデンそして日本。第9回ではアメリカ、ドイツ、スウェーデンに日本を加えた4か国が対象となった。本稿では、この直近のデータから社会参加の活動分野ごとに比較を試みながら、シニアの社会参加という枠組みの中での日本の立ち位置を明らかにしてゆきたい。

 図1.は、公園や街路など近隣の公共空間の清掃活動への参加状況(率)。日米と欧州2か国の間で大きく異なる結果となった。おそらく、社会制度や文化、考え方の違いによるものだろうが、日本やアメリカで当然のように行われている活動が、欧州では必ずしも常識とは言えないようだ。

 同様に近隣の清掃活動が盛んな日本とアメリカを比べてみると、アメリカでは60~64歳の年齢階級で最も参加率が高くなっている。一方日本では、75~79歳の年齢階級で最も高くなっている。

 清掃活動ほど乖離していないが、地域行事や街づくりの活動分野でも、日米2か国が欧州2か国を上回っている。この分野では、アメリカの75~79歳が最も旺盛である。80歳以上では急落し、両年齢階級間の乖離が目立つ。

環境、自然保護活動では、アメリカの参加率が他の3か国を圧倒している。しかも、80歳以上を除けば、4人に1人の割合で参加しているから驚きだ。欧州2か国はアメリカとはずいぶん開きがあるが、日本はその2分の1程度で、この分野での活動は、非常に低調と言わざるを得ない。

 交通安全、防犯・防災の分野でもアメリカの参加率が他の3か国を上回っている。アメリカに次いで、日本の参加率もそこそこ高い。欧州の2か国では、この分野での活動は下火であるようだ。

 スポーツや学習の「指導」の分野でも、アメリカの参加率が際立っており、他の3か国を寄せつけない。日・独・瑞は、その後塵を大きく拝している。独・瑞と僅差ながら、日本は4か国中最下位に甘んじている。

障がい者や高齢者の身のまわりの世話といった活動(図6.)も、指導活動同様、日本は低調だ。一因として国民性ということもあるだろうが、どうやら日本人は他者とのコミュニケーションが苦手なようだ。

 内向きともいわれる日本人らしさが最も色濃く出たのが、国際交流活動だ(図7.)。地域行事などと比べてハードルの高い活動分野ではあるが、必ずしも参加率が高いとは言えないドイツと比べても、かなり低い。性別で見ても、年齢階級別に見ても1%以下というお寒い結果となった。

 同じく、日本人らしさが色濃く出たのが、政治や宗教に関する活動(図8.)。やはり、と言うべきか、アメリカの参加率が圧倒的に高い。独・瑞の欧州勢もそこそこの参加率ではあるが、ここでも日本のスコアの低さが目立っている。日本以外の3か国では、後期高齢者層でスコアが高いのに比べ、日本では低くなっていることも特徴的だ。この種の活動分野はスコアが高ければよいというものでもないが、蓋し「日本的」ではある。

以上、さまざまな社会活動への参加を国際比較してきたが、活動をしていない面から見るとどうなるだろうか?図9.は、以前は参加したことがあるが今は参加していない。図10.は、今まで全く参加したことがない人の比率である。

 以前は参加していたという回答の割合は、比較対象の4か国間で実は、大きな差がない。スウェーデンで、他の3か国をやや下回る程度だ。全く参加したことがない回答の割合は、さすがにアメリカに一日の長があるが、他の3か国では、ほぼ似たような結果になった。つまり社会参加経験は、3か国で同じぐらいいるのだ。ただ、活動分野の分布に差があるだけだ。

 どの分野での社会活動が望ましいかは一概には言えない。国ごとに制度や文化、インフラの充実度がことなるからである。行政サービスが充実していれば、無理にボランティアに頼らなくても良いのだ。ただ、日本では、地域に関する社会参加活動で参加率が高く、環境問題や国際交流、文武におけるコーチングといった方面で、諸外国に比べて見劣りすることは否めない。

 地域への貢献はもちろん尊いことではあるが、よりグローバルな視点で社会活動に参加することが、日本のシニアには求められてくるのではなかろうか?

   株式会社日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男