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「高齢者の睡眠」の常識を疑ってみる(下)

 夜中に何度も目が覚める…。これも、高齢者の典型的な睡眠状況だと言えるが、実際はどうなのだろうか?(図4.)

 このケースは、男性では一般の想像通り、年齢階級が上がるのと完全に相関関係を示している。女性もほぼ同様の傾向にあるが、30歳代だけ突出しているところが、男性とは異なっている。50歳代以上になると顕著な性差は認められない。男女の高齢者に共通した悩みだと言えそうだ。ことに70歳代以上では、男女ともほぼ3人に1人に訴えがある。60歳代の4人に1人と比べるとその数字は大きいと言える。

 図5.は「朝早く起きて眠れない」という状況だが、この悩みも、高齢になるほど訴える人は多くなっている。ただ、その割合は、「夜に目が覚める」ケースより、数値的にはかなり低い。加えて、50歳と70歳以上とで、ほとんど差はないのが特徴的だ。また、40~60歳代にかけては、男性に特徴的な悩みになっているが、70歳以上になると女性の方が悩める人が増えているのもこの状況だ。

 図6.は「睡眠時間が足りなかった」と訴えている人の割合。60歳を境に、睡眠不足の人は、圧倒的に減少しているのだ。男性も女性も、年齢階級が上がるほど、睡眠不足の人の割合は低下し、完全な相関関係を示している。シニア世代は概ね、睡眠不足と無縁な暮らしを送っているようだ。

 年齢階級全体を概観してみると、睡眠不足の割合が最も高いのが、20歳代女性で36%。逆に、最も低いのが70歳以上の男性でわずかに8.1%。約28%もの開きがある。男女間では、どの年齢階級でも、女性の方が睡眠不足を訴える割合が高く、ことに50、60歳代で男女差が著しくなっている。70歳以上になると、男女間の格差は縮まってきている。

 以上、睡眠に関するいろいろな課題を具体的に見てきたが、それらを併呑して、「睡眠の質」への満足度を尋ねたのが図7.だ。睡眠への総合評価でも、若年層から中高年層にかけての睡眠満足度が低く、60歳代、70歳以上といったシニア層では、睡眠への満足度が相対的に高いということが明らかになってきた。30歳代以外は、男女間で顕著な差がついていないことも明白になった。個々の睡眠状況には、多少問題はあるものの、シニア層の睡眠は概ね満足というところだろう。

 睡眠の質に満足し、睡眠不足だと自覚していない人が、シニアの大半をしめているものの、それでOKかと言えば、話はそう簡単にはすまない。図8.は、「日中、眠気を感じた」人の割合を示したグラフだが、60歳代男女、70歳以上男女すべてで、「睡眠時間が足りなかった」割合をはるかに上回っている。意識レベルと現実レベルでは、やはり少なからず乖離があるようだ。

 「日中、眠気を感じた」割合は、年齢階級で歴然とした差がない。男性では最も高い20歳代が40%強、最も低い70歳以上でも30%強。どの年齢階級も10%程度の振れ幅の中に収まっている。女性はやや振れ幅が大きく15%程度となっている。日中眠くなるのは、老若男女を問わない自然の摂理なのかもしれない。

 「夜中によく目が覚める…」など、共感形成で始まる広告のキャッチを最近よく目にする。これはこれでマーケティング的には正鵠を射ているのだが、果たして、みんながみんなそうなのかを知っておくことは、決して無駄ではない。

   株式会社 日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男