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令和4年度「高齢者の健康に関する調査」の結果を読む(後編)

 政府(内閣府)は高齢社会対策の総合的な推進のために、高齢社会対策の施策分野である、「就業・所得」、「健康・福祉」、「学習・社会参加」、「生活環境」、「調査研究」等について、高齢者の意識に関する総合的な調査として「高齢者対策総合調査」と「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」を5年毎に行っている。

 このほど高齢者対策総合調査として、令和4年度の「高齢者の健康に関する調査」の結果が公表されたので、その内容を見てみたい。調査期間は令和4年10月28日~11月24日。調査対象者は全国の65 歳以上の男女(施設入所者は除く。)4,000 人だが、有効回答数は2,414人、有効回答率は60.4%であった。

 他の調査に比べ、郵送とオンラインの併用で行われているため、ネットを利用が難しい80歳代、90歳代、95歳以上の対象者からも回答を得られている。地域別、都市規模別の集計も行われているが、調査方法について詳しくは以下を参照されたい。

内閣府 令和4年度「高齢者の健康に関する調査」
https://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/r04/zentai/pdf/1.pdf

 さらにこの調査の特徴として、対象者のさまざまな属性、年齢、結婚、同居者、学歴、年収…など、それぞれのクロス集計がされていることである。属性ごとに質問の結果を見ることができるので、いろいろな面からの高齢者の健康に関する実情を読み取ることができる。

 では調査結果中から注目すべき結果(後編)を見てみよう。
 ※前編は以下を参照
 令和4年度「高齢者の健康に関する調査」の結果を読む

◆健康への心がけ

 「健康に心がけている」と答えた人(90.1%)に「健康についていつごろから心がけているか」を問うとで「60 代」(39.2%)が最も高く、次いで「50 代」(25.6%)、「40 代以前」(17.7%)、「70 代以降」(16.5%)となっている。「60代」と答えた高齢者はどの世代でも多い。60代は昔から60歳の「還暦」を人生の区切りと考えることや、60代で「定年」を迎えるなど人生の節目を迎えて、自らの健康を見直す人が多いからだと考えられる。

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◆体を動かすこと

 「日頃から、どのように身体を動かしてるか」を選択(複数回答可)。選択肢は「買い物に出かける」「調理や掃除など家事をする」「散歩をする」「庭の手入れなどをする」「仕事をする」「は「家庭菜園などの農作業をする」「ウォーキングをする」「運動をする(ジョギング・水泳等)」「その他」「特に身体を動かしていない」の10項目(不明・無回答を除く)。

 複数回答なので、能動的に運動をしている人(ウォーキングやジョギング、水泳など)がどの程度いるのかがわかりにくい。体を動かすことに置いては家事や仕事が中心で、能動的に運動をしている高齢者は意外と少ないという印象である。

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◆医療サービスの移動手段

 年に数回以上医療サービスを利用すると回答した人に「サービスを利用するときの、あなたの主な移動手段」を聞いたところ、全体で「自分で運転する自動車等(バイク、スクーターも含む)」(43.2%)が最も高い。次いで、「徒歩」(13.7%)、「家族による送迎」(12.3%)、「バスや電車などの公共交通機関」(9.9%)、「自転車(電動車いすも含む)」(9.1%)の順となっている。自分で運転するの高齢者で男性は75~79歳ででも55.92%と半数を超える。85歳以上でも23.8%と約4人に1人いる。

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 最近、高齢者の交通加害事故が大きく取り上げられている。いっぽう地方では、通院など医療サービスにアクセスするためには自ら運転するしかないというケースも多い。自動運転や運転サポート技術の進歩で解決できる問題である。一日も早い実現が待たれる。

◆誰に介護してほしいか

 「将来、身体が虚弱になって、日常生活を送る上で、排せつ等の介護が必要な状態になった時、どなたに介護を頼みたいと思うか(選択は1つ)」という問いに対して、一番多い回答は「ヘルパーなど介護サービスの人」となっている。過去にはそうしたことは他人の世話になりたくないという風潮があったが、今では家族に負担をかけるよりは「プロに任せたい」高齢者が増えている。

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かつて「嫁」の介護負担が問題であったが、「嫁(子の配偶者)」に介護してほしいという回答はわずか1.0%になっている。

◆医療・健康情報へのアクセス

 医療や健康に関する情報について、高齢者自身が「新聞、本、雑誌、テレビ、インターネットなどから、情報を集めることができる」との回答は7割以上(71.1%)。「たくさんの情報の中から、自分の求める情報を調べることができる」が約5割(48.8%)と医療・健康情報へのアクセス環境は悪くない。

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 医療・健康情報へのアクセスするかについて、70代までは半数の高齢者が(47.8%)がインターネットを利用する回答。80代になるとさすがに28.5%と4人に1人となるが、今後、この割合は確実に高まると予想されるので、インターネットでの高齢者向けの医療・健康情報の充実が求められる。

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◆就労

 全体でみると、で「収入のある仕事はしていない」が63.0%。いっぽう「収入のある仕事をしている」は28.7%であるが、60代では「収入のある仕事をしている」が51.5%で半数以上が就労している。

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◆社会参加

 「この1年間に個人または友人とあるいはグループや団体で自主的に行われている活動を行った、または参加したか、あてはまるものをすべて選択(複数選択可)」する問いに「参加した」という回答は51.6%、「していない」という回答は43.2%とやや拮抗していて、「する派」「しない派」に分かれるようだ。「する派」は80代まで参加率がそう変わらない。

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◆生きがい

 最後に現在、感じている生きがいの程度を聞いている。現在、感じている生きがい(喜びや楽しみ)の程度をみると、全体で「多少感じている」(47.0%)が最も高い。「十分感じている」(30.6%)を合わせると、77.6%が生きがいを感じていると回答している。年齢別で「十分感じている」割合が一番高いのが95歳以上の35.3%である。「高齢者は多幸感が強い」といわれるが、それを実証した結果となっている。

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 先にも述べたが、この調査自体の回答率が約6割という点を考慮に入れておく必要がある。本当に大変な暮らし、厳しい生活を送っている貧しくあったり、疾病に苦しむ高齢者が、送られてきたアンケートに答えて返送するだろうかという疑問が残る。その点から、全体の調査結果がやや楽観的な方にバイアスがかかっているかもしれないという点は留意する必要があろう。

前編を見る→https://nspc.jp/senior/archives/18154/

      株式会社日本SPセンター シニアマーケティング研究室 倉内直也