2014年1月8日
シニアにとって関心も必要もあるが、わかりにくいのは「スマートフォン」だけではない。「お葬式」のこともよくわからないものの一つである。
お正月から縁起でもない、と叱られそうだが…。「生老病死」はシニアには避けて通れない問題。年の初めに考えてみることも悪くはあるまい。
とはいいながらシニア本人も周りも、「生老病」については考えるが「死」のことはなかなか考えない。そんな中で注目したいのが『イオンのお葬式』である。
毎年の元旦に厚生労働省から、その年の『人口動態統計の年間推計』が発表される。今年も1月1日に平成25年(2013)分が発表された。
それによると昨年亡くなった人は127万5千人、一昨年度は125万6千人。ちなみに出生数は昨年103万1千人、一昨年度は103万7千人である。
正月三ヶ日で1万人以上がなくなっている計算になる。さらに団塊の世代が平均寿命に達する、2030年ころには年間150万人が死亡するという推計もある。
冒頭に書いたように「縁起でもない」とテーマとして取り上げにくかった人の死も、みんなでよく考えなくてはならない時代になりつつある。
イオンは2011年度から2013年度の3年間を対象としたイオングループ中期経営計画を策定している。そのグループ共通戦略として、
『アジアシフト』『大都市シフト』『シニアシフト』『デジタルシフト』の4つを成長領域と決め、経営資源をそこに振り向けるとしている。
中でも『シニアシフト』については「アクティブで消費に積極的なシニア世代を『G.G(グランド・ジェネレーション)』とネーミングして店舗や品揃えでそれらの層を取り込む」試みとして注目されている。
『イオンのお葬式』もその『シニアシフト』の一環であろう。最近では、「終活」や「おひとりさま」の文脈のなかで紹介されることが多くなってきた。
『イオンのお葬式』が支持されているのはその費用の安さなど、いくつかの面があるのだが、ここでは「わかりやすさ」という面に注目したい。
葬儀は死んだ本人が執り行うものではない。一番多いのは子が親の葬儀の施主になる場合であろう。葬儀に列席することはあっても施主は初めてというケースが多い。
昔なら近所のお年寄りやお寺さん、年配の叔父、叔母などに相談しながら、施主を務めるということもできた。しかし核家族化が進み、都会に暮らす子世代はシニアになってもそういうことが難しい。
だからといって事前に手配ということもはばかられる。そして突然、施主になり、葬儀社に連絡を取ればいいのか、病院に相談すればよいのか、また段取りは?費用は?…わからないことばかりになる。
そのように葬儀に関してわからないこと、自分が理解していないことに不安を感じる人は多いはずだ。
『イオンのお葬式』はその辺りの不安を「困り事」として捉え、実にわかりやすく事業を展開している。そのわかりやすさとは
1)葬儀の内容、流れをシンプルにした
2)予算を明示(すべてセットのポッキリ価格)
3)サービスの品質基準を明示
4)わかりにくいお布施などの宗教費用も案内
5)とてもわかりやすいホームページやカタログ
1)葬儀の内容、流れをシンプルにした
5つのセットプランに分類して、それぞれに内容、流れをわかりやくしている。
http://www.aeonlife.jp/expense/setPlan.html
・「火葬式」→通夜、告別式を行わず、火葬のみを行うプラン
・「家族葬」→家族、親族などのみで上記に通夜、告別式、初七日法要をプラス
・「1日葬」→通夜を執り行わず、1日で葬儀を行うプラン
・「自宅葬」→自宅で葬儀を行うプラン
・「家族葬セレクト」→規模のやや大きい家族葬のプラン
(あと「フリープラン」「大型葬」「社葬」などにも対応可能)
とくに「火葬式」「一日葬」というのは今日のニーズを捉えている。
ここで大切なことは内容をわかりやすく説明することで、施主が心の負担なく略儀の葬儀を選べるようにしている点だ。
2)予算を明示(すべてセットのポッキリ価格)
プランはすべてセット価格で「追加料金不要」としている。ちなみに
・「火葬式」→198,000円
・「家族葬」→498,000円
・「1日葬」→338,000円
・「自宅葬」→398,000円
・「家族葬セレクト」→698,000円
となっている。それぞれについて位牌、納骨器の値段まではっきりと明示し、基本的にはセット価格ですべて収まると保証している。このわかりやすさと相まって、「あのイオンなら不明朗なことは無いだろう」という「イオン」ブランドの強みが発揮されている。
支払についても現金に加え、「イオンカード」「分割払い(最大84回)」も選べる。死んで多くのものを残せる人ばかりとは限らない。施主もすべてが豊かな人ではない。寿命が延び、施主も高齢化してゆく中で内容、費用の簡略な葬儀が求められている。そのことを捉えたリテーラーらしい事業運営だと思う。
3)サービスの品質基準を明示
リーテルのトップ企業らしく「品質管理」の考え方を導入して140項目ものサービス基準を公開しイオンがその品質を保証するシステムとしている。
http://www.aeonlife.jp/funeral/advantage/quality_standard.html
実際の葬儀はイオンではなく、特約店契約を交わした全国約480社が執り行う。そのための品質基準を設け、イオンが基準を維持するため「スキルアップセミナー」「フォローアップセミナー」などの取り組みを行っている。この辺りは店舗運営や仕入先の品質管理で培ったノウハウが生きているのだろう。
4)わかりにくいお布施などの宗教費用も案内
一番わかりにくい(聞きにくい)お布施の額も35,000円~全国の寺院を紹介すると謳っている。「お客さまの声」を見ると実際はもう少しかかるようだが…。
さらに『イオンのお葬式』を利用すると「納骨・永代供養」を30,000円~で引き受けてくれる。
http://www.aeonlife-eitaikuyou.jp/
・将来子供に心配や負担を掛けたくない
・無縁墓にならない安心できるお墓がほしい
ということから生前予約も多く寄せられているという。
5)とてもわかりやすいホームページやカタログ
ホームページがとても良く出来ている。知りたい内容が大きな字でわかりやすく配置されている。リンクボタンも大きく、シニアが見ても使いやすいサイトだ。ワンスクロールで知りたいことがわかる。構造は階層が少なく、サイト内で迷子になりにくい。
トップページの「お急ぎの方へ」という赤いリンクボタンをクリックすると「ご危篤・ご逝去のかた」というすぐにも対応が必要な場合の対応ページが用意されている。また「お客さの声」「よくある質問」へのリンクボタンをわかりやすい配置にして、疑問に応える構造になっている。
また、どのページにも24時間対応フリーコールの電話番号が大きく表示されている。葬儀ということになれば電話で直接細かいことや疑問点を確かめたいものだ。とくにシニアの場合はホームページで調べるよりは電話でという場合が多いだろう。シニア向けの製品、サービスのホームページの見本になり得るサイトだ。
「わかりやすい」ということは簡単そうで難しい。単に表現やビジュアルだけではなく、その製品やサービスがどれだけシニア(と、それを取り巻く環境)を理解して組み立てられるかで成否が分かれるのである。
倉内直也
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