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ヘルスリテラシーを獲得できる
「環境」が事業になる

 長生きが前提の現代、ここ数年来とり沙汰されてきているのが寿命と健康寿命の差。(参考記事:「健康寿命」男性72.68歳 女性75.38歳 男女とも過去最長に

 健康を維持するため、今、学校保健、企業など、幅広い場面で「ヘルスリテラシー」獲得の取り組みが始まっている。高齢者にとっても、もちろん必要だ。
  ヘルスリテラシーとは名前通り、「健康+読み書き」を意味している。健康維持に必要かつ信頼できる情報を手に入れて、理解し、さらに活用する力と言われている。(参考:健康を決める力

 健康であるためには、これらを保持しているかどうかが問われる。
 高齢者の健康に対する情報ニーズおよび理解と行動についてみてみよう。

年齢が上がるほど健康への希求は上昇
情報ニーズも高まる

 誰にとっても大切な健康だが、心身に変化が生じる高齢者にとって、その重要性は一層高まる。(参考:高まる健康情報ニーズ。行きつく先は?

少子高齢社会等調査検討事業報告書(健康意識調査編) 平成26年8月1日 厚生同労省発表から作成
令和5年版 消費者白書より作成

 こうしたニーズに応えようと、数多の健康関連事業が展開されている。
 しかしその提案を高齢者は正しく理解し、活用できているのだろうか?

健康感と自覚症状が比例していないせいか
購買結果にギャップがあらわれることも

 誰もが健康でありたいと願っているが、そのために必要な知識を持ち合わせ、判断し、活用・行動できているかというと、なかなか難しい。

 普段から意識して取り組んでおけば失う確率は低くなるだろうし、何か起きても対応できる確率は上がるだろう。しかし常日頃から注意深くいることは、誰にとっても難しい。健康への希求が高いはずの高齢者も、必ずしも自分の健康を正しく心配できているわけではない。

 高齢になるほど心身に支障がでてくるが、自身の健康をどう思っているかというと、むしろ65歳以上の方が64歳以下より自身を健康だと思っている。

厚生労働省 健康意識に関する調査(平成26年8月1日発表)

 高齢者層は中年以下に比べて、むしろ健康感の高い人が多い。
 しかし有訴者率を見ると、明らかに高齢になるほど多い。

2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況 より作成

 一見矛盾しているデータに見えるが、おそらく多くの高齢者は年齢に伴い生じるある程度の変化は、受け入れている(「歳をとれば多少は衰える。でも私は年相応には健康だ、元気だ」という気持ち)。自らの健康状況を悪くはない、と捉える。とはいっても痛みや痺れ、不自由はあるし、できれば何とかしたいと思う気持ちもある。それが「有訴」であり、健康関連の消費行動に繋がる。

 そして高齢層では健康がらみの消費生活相談が多い。健康食品が各年代、男女ともに上位にきている(特に女性)。

令和5年版 消費者白書より作成

*「その他健康食品」とは保健機能食品以外のこと 「健康食品」は保健機能食品のこと。「特定保健用食品」「栄養機能食品」「機能性表示食品」の3種類(消費者庁「健康食品Q&A」より)

 上記を見ると「他の健康食品(保健機能食品以外の健康食品)」の購入で、「しまった!」という経験をした高齢者が少なくないと推測できる。
 多くの人が希求するだけに、健康に関する数多の情報・提案が溢れている。この環境の中で、健康を維持して課題を遠ざけ、何か対応が必要になったときには正しく適切な対応をとることが必要だ。心身ともに健全でいられるために、ヘルスリテラシーを身につけることが望まれている。

高齢者のヘルスリテラシーと
醸成するための視点について

 ヘルスリテラシーを高齢者がどの程度保持しているか。次の調査結果から一部類推することができる。

令和4年度 高齢者の健康に関する調査(内閣府)より作成

〇「高齢者」といっても、健康行動力には年齢によって相当な開きがある。
〇「調べる」ことはできても、「分かる」「使える」とは限らない。

 情報を提供するだけでは、高齢者の健康を支援しきれない。さらにこのデータでは捕捉しきれていないが、計画や行動を決めることができた人も必ずしも実行できているとは限らないし、実行できたとしても継続できているかどうかは分からない。むしろ、継続には概ね困難が伴う。(高齢者に限らないことだが)

 情報を知るだけでは、健康に結びつきにくい。
 いずれの力も手に入れるためには、次のような視点からの環境づくりが必要ではないだろうか。

 このように整理すると、「2)入手した健康情報を理解する」と「3)入手した健康情報を活用する」においては、コミュニケーションが有用だ。情報提供者と利用者との間、加えて利用者同士のコミュニケーションもきっと役に立つだろう。
 行動を伴う情報を得る時、ただ読んで聞いて知るだけでなく、「つまり〇〇っていうことだよね?」「それなら△△してもいいのかな?」という確認や深堀が浮かぶのは、ごく自然なこと。この時点にこそコミュニケーションを始める仕組みを備えることが、シニアのヘルスリテラシー向上に資するのではないだろうか。

 さらには「信頼される情報提供者」の役割を得て、選ばれる相手になる可能性も高まると期待される。
 ただ商品や情報を流すだけでなく、利用者の理解や利用スタートに立ち合い、関係をつくる仕組みを備える設計が望まれる。

株式会社日本SPセンター シニアマーケティング研究室 石山温子

<参考資料>

令和4年度 高齢者の健康に関する調査(内閣府)より作成

令和4年度 高齢者の健康に関する調査(内閣府)より作成