シニアとネットの親和性については、当コンテンツでも「ネットを軽やかに操るシニア」のアーティクルでその一面に触れてみたが、その後の様相に変化はあるのだろうか? また、スマートフォンなどのモバイル端末の保有状況等はどうなっているのだろうか? 本アーティクルでは、経年変化を含めた最近の趨勢と、ネットに対する価値のありどころを今一度おさらいしてみることにする。データは概ね2015年版「通信利用動向調査(総務省)」に拠る。
図1.は2011年~2015年までの年齢階層別インターネットの利用率推移。これをみると大きく4つのグループに分けられる。
第1グループは、20~40代まで。20歳代がややハイスコアではあるが、ほとんど差がない状態で、30歳代、40歳代がキャッチアップしている。ネット利用率は、2011年時点ですでに概ね95%以上を記録、当然伸び率も鈍化している。2011年比の2015年の伸び率は、20歳代で1.3%、30歳代が2.0%、40歳代は1.6%と、ここ4年間ほぼ同水準で推移している。このグループは最早「限界利用率」に達したと見てよいだろう。
第2グループは、50歳代。第1グループと相似形で利用状況が推移しているが、やや水を開けられている。2013年に利用率90%を突破したが、その後足踏み状態が続いている。91%強と言う数字がおそらくこの年齢層の「限界利用率」ではないかと推察される。
第3グループを形成するのが60歳代。2011年の時点で、すでに68.7%がネットを利用しているが、2013年に70%を超えて以降も、毎年、前年比微増の状態を維持している。2011年比の2015年の伸び率は、8.2%と、50歳代の5.3%を上回る堅調な数字となっている。
第4のグループは70歳代。2012、2013年と足踏み状態が続いたものの60歳代同様、その後微増を維持している。2011年比の2015年の伸び率は10.9%と、7つの年齢階層区分の中では最も伸びが著しい。直近1年間だけを取っても、3.3%伸ばしている。このままの成長カーブで推移すると仮定すればの話ではあるが、今後最も大きな「伸びしろ」を有するグループとみてよいだろう。年々デジタルアレルギーのない世代が参入することを考えれば、70代のネット利用度は大幅に加速して伸びてゆくことも大いに考えられる。
最後のグループは、80歳代だが、このグループは他の年代と異なった傾向がある。2011年~2012年にかけて11.4%と大きな伸びを記録して以降、微減傾向のまま推移し、結局2011年比の2015年の伸び率は、5.9%に留まっている。常識的に考えて、年次が新しいほど、世代的には若返るので、デバイドも徐々に縮まるのだが、そうはなっていない。原因は推察するよりほかにないが、加齢要因に因るものだろうか?
見方を変えて、年齢層別に男女間で利用状況に差があるのかどうかを見てみよう。(図2.)
20歳代~50歳代では、僅差で男性優位であったり、女性優位であったりはするものの、男女差はほぼ認められない。男女雇用機会均等法が施行されたのが1986年だから、50歳以下の男女のネット利用状況が同等ということと奇しくも符合する。
一方、60歳代以上になると様相は大きく異なってくる。年齢階層が上になるほど、男女間の開きが大きくなってゆくのだ。
男女間の差は、60歳代で9.7%、70歳代で14.2%、80歳以上では14.5%と差が開いてゆく。
基礎スキルに負う面も多いだろうが、「キラキラ消費」の主役を張る70歳代女性のネット利用が50%を切るというのも意外な気がする。「ややこしいことは家族頼み」という感覚も働いているのかもしれない。
次回のアーティクルでは、ネット利用の目的や、モバイル端末の保有・利用状況を見て行きたい。(下に続く)
日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男
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