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シマ研の本棚-本当の定年後 「小さな仕事」が日本社会を救う

坂本貴志 著 講談社現代新書 株式会社講談社刊 920円+税

新書版 262ページ

 幅広の帯には「8万部突破!」の文字に「生活費は30万円弱」「年収は300万以下が大半」「本当に稼ぐべき額は月10万以下」といった、本書の「第1部 定年後の仕事『15の真実』」の目次が並ぶ。著者は民間シンクタンク(リクルートワークス研究所)の研究員・アナリストである。

 本書の特徴は著者がデータアナリストということもあり、しっかりとしたデータやファクトに基づいて書かれているということ。とくに第1部は多くのデータで「定年前後のシニアの実態」が示されている。

 最近は老後資金の2000万円問題や年金受給の繰り延べなど、老後のお金について話題に事欠かない。この本はそのような問題を取り上げながら、「定年後の仕事」というアプローチで老後をいかに幸せに過ごすか、そしてそれを実現するために、本人と社会のありようについて述べている。

 少し前まではシニアというと「金時持ち」、豪華クルーズや特別列車で旅をするといった豊かな面と、一方孤独死や生活のために苦しい仕事を続けるといった、両極端のイメージで語られることが多かった。

 しかし、シニアは高齢社会白書にあるように経済的な面だけで見ると、65歳上の高齢者のうち「心配がない」「家計にゆとりがあり、まったく心配なく暮らしている」と「家計にあまりゆとりはないが、それほど心配なく暮らしている」を合わせると約7割(68.5%)に上る(厚生労働省 令和4年「高齢社会白書」)。

 男性の70~74歳での就業率は41.1%と10人に4人は働いている(〃)。ただ、こうした数字にからは、生活のためいやいや働いてる不幸なシニアのイメージが付きまとうが、本書ではそれは決してそうではないということを、様々なデータやインタビューから明らかにしている。

 この本をシニアのリアルな姿を描く必要があるマーケターはもちろん、これから定年を迎えようとしている50歳代のプレシニアにも参考になることが多いはず。「定年後の小さな仕事」の意義がよく理解できる良書として一読をお勧めしたい。

      株式会社日本SPセンター シニアマーケティング研究室 倉内直也