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室長の小部屋

2030年の高齢社会に向けてビジネスを考える 3

 2030年の高齢社会で増加が見込まれるワーキングシニア。これまでになくシニア雇用者が増える企業にも、新たなニーズが発生する。60歳定年を前提にした雇用環境では、高齢従業員が能力を発揮して働くには難しい場面もある。
 新しく取り入れていきたい視点について、次の5点を検討する。

1.高齢社員も健康に働き続けられる健康経営

 健康診断とその活用は基本だが、健診後のフォローアップは、多くの企業で実施されていない。ちなみに2018年度厚労省特定検診実施状況によると、特定検診後、必要な保健指導を受けて終了した人は、40-74歳男女 平均で23.2%。なかなか行動変容に結びついていない。
 現在、(株)リンクアンドコミュニケーションでは健保組合経由で、従業員の健康維持に貢献するサービスを展開。スマホアプリで行動を応援したりアドバイスしたりしている。
 将来的には、健診結果と食事や運動の記録から未来の健康を予測したり、健康相談の受付やセカンドオピニオンを紹介したりするアプリが登場するかもしれない。勤務時間やメンタルも記録でき、高齢者に発生しがちな課題や悩みに応える、中小企業では取り組みが難しい「保健室」や「産業医」といったサービスを複数の会社で利用する仕組みを開発して、提供できるようになるかもしれない。

2.評価

 これまでは「福祉的雇用」の延長で高齢者を雇用してきた企業が多く、現在、60代前半を対象に評価制度を導入している企業は、約3割。

『高齢者の雇用に関する調査(企業調査)』2020年3月 独立行政法人 労働政策研究・研修機構 より作成

 頑張って働いても反応がないと、やる気の継続は難しい。高齢者雇用が進めば、シニアワーカーの評価の開発も必要だ。
 高齢者特有の聞こえ方や見え方を知り、特性を知った上で働き方を考え、結果を評価する。仕組みの構築が求められる。同時に、すべての世代の社員が高齢者とともに働くスキルを獲得し、その評価も必要かもしれない。

3.育成

 評価の課題同様、シニアワーカーの教育制度はあまり進んでいない。パーソル総合研究所の調査によると、シニア従業員向けの教育・研修の実施状況は、「実施されており充実している」と答えている人は約2割。しかしシニアワーカーはさらに増加する見込みであり、彼らの活躍は企業にとって必須。
 2030年には、高齢社員に対する学びの提供と全社員が多世代で働く組織づくりが必要だ。
 既存のビジネス講座はシニアの受講生に対して、教材の見え方や表現、話すスピードなどを見直す。全社員がいろんな世代と働くスキル、文化を醸成する。多世代で働く効果を出すためのコンサルティングや育成ワークショップなどに、需要が生まれるかもしれない。

4.シフトや仕事の分担など、柔軟な協働を可能にする仕組み

 定年後、無職者となっている65-69歳の3割以上が、「新たな勤務シフトの導入」を望んでいる。逆を言えば、仕事を続けられなかった理由としてあげている方が多いともいえる。さらに勤務を続けている人も25%が、「新たな勤務シフトの導入」を希望している。

50 代・60 代の働き方に関する調査報告書 2018 年
公益財団法人 ダイヤ高齢社会研究財団

 高齢者が抱えがちな家族や健康の課題を鑑みれば、多様な働き方の開発は免れない。現在、職場によっては、高齢スタッフ数人でワンチームとし、複数人でひとつの仕事を受け持つ体制を確立している事業場もある。事前に申請がなくても休みを承認する体制を導入している企業もある。
 将来はたとえば、個々人の予定を踏まえて業務を組み立てる。予定外が生じれば、容易に補充しあえる。連絡や業務の割り振りもAIの発展で楽に、自動で行える。
 高齢者が活躍できる仕組みは、疾病を持ちながら働く、介護や子育てをしながら働くなど、多様な人がともに働ける環境でもある。さまざまな働き手が増えれば気づきが増え、ビジネス開発の源泉にもなるだろう。

5.65歳/70歳からの地域回帰支援

 これまで各自治体では、60歳からの地域デビューを支援する施策が催されてきた。女性も定年まで働く人が増えてくると八王子市の「お父さんお帰りなさいパーティー」は、「女性も歓迎」と付記したり、「地域デビューパーティー」と名前を変更したり、時代にあわせて変化している。
 2030年頃には多くの人が65歳まで働き、その分地域に帰ってくるのも遅くなる。
 しかし年齢を重ねるほど、帰るハードルは高くなる。各自治体は、今でも50歳前後から地域活動を始めることを推奨している。

 引退が遅くなっても、企業で行う定年前研修も今の50代後半よりもっと早くから始めてはどうだろう。内容はキャリアの棚卸と再スタート、そして地域回帰支援。
 さまざまな業界で、地域にビジネスのタネを探す傾向が強くなっている。早くからの地域デビューを支援し、地域ニーズを見つけ、自社に持ち帰ってビジネスプランを出す役割を期待する方法もある。 
 2030年の高齢社会で働くシニアを支援するビジネスは、SDGsにも繋がる。
 SDGsの8つ目のゴール「働きがいも経済成長も」の8.5は、「2030年までに、若者や障害者を含む全ての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、並びに同一労働同一賃金を達成する」。高齢者雇用の働きやすさは、多様な人が働く環境づくりの入り口にもなるのではないだろうか。

シニアマーケティング研究室 石山温子

シマ研シニアビジネスウェビナー 2030年の高齢社会に向けて ビジネスを考える(2)

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