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60、70歳代で堅調な伸び。シニアの電子マネー利用

「高齢者は、キャッシュレスが苦手」という固定観念は、今もって根強いが、果たしてそうなのだろうか? 本稿では、家計消費状況調査から、最新の電子マネーの所持、利用状況と利用金額、そして直近5年次の変化を追っていきたい。

 図1.は、世帯主の年齢階級ごとに、「家族が電子マネーを持っているか?」を聞いたもの。大方の予想通り、若年層から中年層にかけては、世帯員の所持率は高く、30歳未満から50歳代にかけて軒並み70%を上回る数字になっている。

 60歳以上では、年齢階級が上がるにつれ、所持率はガクンガクンと低下し、80歳以上では26.3%を記録。4世帯に3世帯までが、電子マネーを持っていないという結果になった。

「利用した世帯員がいるか?」の問いに対しての回答が図2.。グラフの傾向としては、所持率と同じだが、「所持しているが利用していない」比率が、若~中年層で高く、シニア層では低い。30歳代では、「持っているのに使わない」層が15.7%にも上る。一方で80歳以上は、4.7%に過ぎない。「持った以上は使う」シニアは結構多いのだ。

 一方、年平均利用月額では、60歳代が最も多く、20,850円。次いで50歳代の20,320円が僅差で続く。70歳代、80歳以上も金額的には、3~40歳代を下回るものの、決して遜色があるわけではない。

 今度は、時系列を追って直近5年次の変化を見てゆこう。図4.は、世帯員所持率。どの年齢階級も右肩上がりの傾向を堅持しているが、中でも過去5年次で最も数字を伸ばしたのが、21.5%数字を伸ばした、29歳以下。次いで30歳代の16.7%と若年層の健闘ぶりが目立つ。

 一方、シニア層はと言えば、70歳代が10.5%、80歳以上では9.9%とややお寒い伸び幅となった。その中で60歳代は、14.2%と一人気を吐いた。

 利用率の変化(図5.)は、所持率と大きくは変わらない。ただ、50歳代以下の年齢階級では、年次によっては低下に転じているが、60歳代以上では、コンスタントに右肩上がりになっている。ムラッ気がなく、安定した堅実な利用が窺えるようだ。

 最後に、年平均利用月額の変化を見てみよう(図6.)。所持率や利用率とことなり、年次ごとの増減が甚だしい。ことに29歳以下と、80歳以上という両端の年齢階級で、利用金額の増減が甚だしい。比較的、固定費に縛られることが少ない世代でもあり、気分的な利用も影響しているのかもしれない。

 このグラフで注目したいのが70歳代の動向だ。増減を繰り返す他の年齢階級とは異なり、ほぼ右肩上がりで推移し、結果、2019年では2015年を5万円以上上回る利用金額となった。

 60歳代もほぼ右肩上がりで推移している。実利用額は、全年齢階級中mつねに1位か2位を占め、直近5年次の増加額も4万円を上回る。

 一度習慣化すれば、シニアは離れないという。以前ほど指先が器用に動かせないなど、加齢に伴う現金の取り扱いに不具合が生じたときに体感した、電子マネーの便利さを最早シニアは手放さないと思う。

この調査での電子マネーとは、事前に現金と引き換えに金銭的価値が発行されたICカードやプリペイドカード等のことを言う。 例) Suica、ICOCA、PASMO、nanaco、WAON、楽天Edy、WebMoney、BitCash、クオカードなど。電子マネーにチャージ(入金)しただけ又は定期券としての利用だけで、他の利用がなかった場合は電子マネーの利用には含まない。

   株式会社 日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男