長生きが当たり前のようになった現代、これまで以上に「よりよく生きる、よりよく老いる」は多くの人の望み。そのためには「健康」「お金」「社会生活」を適切に、大切に、暮らすことが望まれるし、そこには日々活動する力が欠かせない。前に向かっていく力を生み出す「生きがい」を感じることが重要だ。
高齢期においてこそ「健康」がどうか、「金銭面」がどうか、「社会生活」がどうか、といった条件面だけでなく、「生きがい」を得られることが大切ではないだろうか?「自分は役に立っている」「今日はこれをやる」といった感覚や手ごたえを得られる提案が、選ばれたり継続利用されたりする確率をあげるのではないだろうか?
今回は、高齢者は何から「生きがい」を得ているのか。「生きがい」は何に繋がるのか。検討する。
「生きがい」とは何か?
英語では「生きがい」をそのままのニュアンスで伝える単語が存在しないと聞く。茂木健一郎氏の生きがいに関する書籍も、『IKIGAI』というタイトルで出版された。同書籍は世界で話題となりベストセラーとなった。2025年の7月には、新たに『生きがいの見つけ方』が出版されている。既に読まれた方もおられるのではないだろうか。同書籍では、“「自分は本当に生きているな」と感じられる瞬間は、どれほどあるだろうか。( 『生きがいの見つけ方 生きる手ごたえをつかむ脳科学』より)”と、生きがいについて具体的な表現を示している。

「生きがい」は、多くの意味や意義を包含しているが、以下のように分けることができるのではないだろうか。
① 意味・価値~「自分は何のために生きているか」、「大切にしたい価値に沿って生きている」という感覚
例:家族を大事にする/信念・信仰/美意識・自然/学び続ける/人生への納得感
② 喜び・楽しみ~「嬉しい・楽しい・心地いい」などのプラス感情が生まれる
例:趣味/食事/会話/散歩/季節を味わう/くつろぎ/笑い
③ 達成・有能感~「できた・役に立てた・上達した」という手応え(自己効力感)が得られる
例:家事や仕事/創作/運動/世話・手伝い/地域活動/誰かを支える
高齢者において「生きがい」を
感じている人は増加している
内閣府調査によるとこの10年で、生きがいを感じている高齢者は増加している。

この質問では、生きがいを「喜びや楽しみ」と言い換えを添えながら質問している。「生きがい」という単語が持つ壮大さから、「感じている」と回答することが憚られる人も出てくるかもしれないが、この補足は回答をしやすくしている。
2014年(平成26年)の「感じている(合計)」は、65.5%、2024年(令和6年)の「感じている(合計)」は74.7%。しかも「十分に感じている」を見ると、2014年(平成26年)は15.7%、2024年(令和6年)は33.2%と、倍以上の伸びだ。
この10年で、生きがいを感じている高齢者は増えている。
2024年では選択肢から「わからない」がなくなっているので、いずれかを回答するようになっている。よって生きがいを「十分に感じている」「多少感じている」「あまり感じていない」「全く感じていない」あるいは、無回答という行動選択になる。「ない」より「ある」を人は選ぶのではないか、とも考えられる。だが、すべての年齢階級において、「十分感じている」が大きく伸びていることも踏まえれば、現在の高齢者では「生きがいを感じる力」が上がった人が多いと言える。
2024年(令和6年)の調査は、コロナ禍を経て実施されている。身近な死、わからないことだらけの環境、いろいろな制限を経て、多くの人が喜びや楽しみ、できることややりがいを見つける力を高めたのではないだろうか。
生きがいは、どういうときに
感じているのか
内閣府の調査では、現在の高齢者は「色々なことに生きがい(喜びや楽しみ)を得られる方が多い」ことがわかる。


全体的に、2014年に比べて2021年の方が、より多くの人がより多くのシチュエーションで「生きがい」を感じている。
加えてそれらは「趣味やスポーツに熱中している時」「友人や知人と食事、雑談している時」「家族団らんの時」「仕事に打ち込んでいる時」「他人から感謝された時」「収入があった時」…。言い換えると人との交わりがあったり、誰か/何かの役にたったりしたとき。いずれも自分一人で完結することはない場面だ。
一方で、「おいしい物を食べている時 54.8%」「テレビ/ラジオ 43.2%」「旅行 39.8%」「勉強・教養 16.7%」のように、関わりが薄いあるいは自己完結で感じている場面も存在する。
これらの調査データから、高齢者の生きがいは「交わり型」と「マイペース型」があることがわかる。
提案に加味したい「生きがい」発現
鍵は「交わり」と「マイペース」
生きがいを得られる仕組みが付加された財・サービスは、一度使えばまた使いたくなるのではないだろうか。生きがい、つまりはエネルギーを得られる感覚は、当該財・サービスを利用する楽しみにもなる。
そのときのポイントは、「交わり」の楽しさや「マイペース」の気楽さを備えること。
こう考えるうち、「高齢期の「楽しい」は何で、できているか?75歳を一区切りに、「快楽」と「安楽」の視点から考える」で考えた「楽しさ開発」のフレームを思い出した。ここに「交わり」と「マイペース」を書き換えると、楽しさの開発は「生きがい」創出にもつながるのではないだろうか。


生活機能・メンタル・死亡などと
生きがいの関連研究が伸びている
「生きがい(ikigai)」は生活機能・メンタル・死亡といった“アウトカム”との関連を検証する研究が増えている。
たとえば、「生きがいがあることが3年間の追跡期間中に機能障害を発症するリスクも認知症を発症するリスクも低い。抑うつ症状を抑え幸福感やIADLとも関連している」ことの分析。「生きがい(生きるに値するという感覚)」を感じている高齢者は、感じていない高齢者に比べて、新たに機能障害(要介護等)を発症するリスクが低い」という仮説の検証。こうした生きがいの有無がその後の健康・心理・社会面への影響が研究され、発表されている。
ちなみに生きがいに対する社会の視線として、Google Scholarで「ikigai」を “引用文含め”で検索してみた。
2010-2015 約 912 件
2016-2020 約 1,340 件
2021-2025 約 2,990 件
論文で取り上げられている=ホットな話題と言い切ることはできないが、より多くの方が注目していることが示されると思う。財・サービスの開発、継続利用の仕組みづくりに、「生きがい」発現は、注目すべき視点ではないだろうか?
株式会社日本SPセンター シニアマーケティング研究室 石山温子
2026年2月25日
2026年2月6日
2026年1月16日