2020年10月21日
21世紀になって広辞苑にも収録された「大人買い」。もともとの意味は「大人の豊富な経済力で、本来子供向けのコレクション的性格をもつ商品を大量に買い占めること。玩菓を大量に買う場合などにいう」(大辞林)。そこから「子供向け商品に限らず、単に通常人が1回に買う平均を大幅に上回る数量の物やサービスを購入すること」、「子供時代に思う存分に買えなかった憾みを晴らしたり、思う存分に買ってみたかった夢を大人になって実現するもの」(Wikipedia)といった風に用法は広がりを見せている。
それと似たような購買行動がシニアにも見てとれる。それを私は「シニア買い」と呼んでいる。では「大人買い」と「シニア買い」の違いはなにか。それは「時間」軸が大きく作用していることである。
1.長い時間に溜まったマグマが爆発する
子供や若い頃からの夢を実現できる、長い間の我慢を解消することから、大きな買い物もいとわない。ハーレーダビッドソンの大型バイクやポルシェのスポーツカーはシニアの所有者が目に付く。
モノだけではなく、定年や金婚式というタイミングで豪華なクルーズや列車旅行に夫婦そろって出かけることもある。「衝動買い」ではなく「念願買い」ともいえよう。
この「マグマの爆発」は周りの関心を引くため、このような一時の大きな消費を「アクティブシニア」の消費行動と混同されがちである。マグマの爆発は注目されるが、長く続くものではない。
とはいえ、シニアのライフイベントの中にその契機はいくつもあり、その機会を逃さず刈り取るために、シニアとの「火山活動観察」的な継続したリレーションシップが求められる。
2.積み重ねた人生経験から、より納得できるものを求める
「シニア買い」は趣味の世界だけではない。家を建て替えたり、リフォームを定年の機にするシニアも多い。「家は3回建てないと、満足のいくものが建てられない」と言われる。
標準的なライフサイクルで考えると30代で最初の家を建て(購入し)、60代で2回目の立て替え(リフォーム)というのが一般的である(国土交通省「平成30年住宅市場動向調査」より)。最近では80歳代でのリフォームも増えているという。これまで住みこなした住まいに対する知識や経験から、納得できる終の棲家はグレードの高いものが求められる。
金融機関もそうした資金需要に応えるため、高齢者向けにリバースモーゲージの一種として「住み替え融資」を始めている。
◆参考例:三井住友銀行『住み替え新時代』サービス
https://www.smbc.co.jp/kojin/reverse-mortgage/sumikae-shinjidai
3.可処分時間があればこそ、の「買い物」である
買っても使える時間がなくてはならない。旅や習い事に代表される「こと」消費にはそれに充てる時間がかかせない。もちろん、「もの」を所有することの喜びはある。しかし、骨董やクラシックカーにしてもそれをじっくり鑑賞したり、身近に感じて過ごす「とき」がなくては意味がない。
定年で仕事から解放される、後継者に事業を引き継いだ、ポジションが軽くなり、自分の時間がとりやすくなった…。そうして自分のための可処分時間を持てるからこそ「シニア買い」が可能になる。
クルージングで海外をめぐる、といったバブル的な「こと」や「もの」ばかりではない。
字をきれいに書きたいと習う書道ではなく、自分と向き合う時間を大切にするために書を学ぶ、そんな時間の使い方を得るための「シニア買い」もある。
これまで「シニア買い」は高額でバブル的なものをさすことが多かった。そうしたマーケットも存在することは間違いないが、それをシニアマーケットの象徴ととらえることは正しくない。それは「金額」を軸とした見方である。「シニア買い」は見てきたように「時間」を軸としてとらえて考えてゆくべきである。
シニアにとって残された時間は短い。本人がいくら元気であっても、周りの家族や友人を喪う経験が、そのことを自覚させる。自分に残された時間をどう使うのか。シニアに向けての製品やサービスの開発や考えるとき、「時間」の軸を加えることで、より最適化が図れるはずである。
株式会社日本SPセンター シニアマーケティング研究室 倉内直也
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