(上)から続く
そもそも高齢になるほど個人差は大きくなる。加えて最近の調査から、高齢者の個人差は従来以上に二極化していると推察されるが、その実態を異なるデータからも見てみよう。
高齢者ほど大きい、個人差を示す
体力テスト合計点の標準偏差
高齢者の体力テスト合計点の平均点が上昇していることを紹介したが、一方、その標準偏差はどうなのか、見てみよう。
標準偏差は平均から個々のバラツキの大きさを示す。数値が大きいほどバラつきも大きい。
ここではこの15年間の標準偏差の平均を算出した。男女ともに65歳を超えたあたりから高くなる。仕事等から完全に引退した後の生活スタイルが、体力維持の成否に影響しているのではないだろうか。
相対的に大きい標準偏差から、高齢者は他の年代に比べて、体力が充実している人とそうでない人と、両極にばらついていることがわかる。高齢者の体力テストの合計平均点は他の世代を圧倒する伸びであるが、それは一部の人の頑張りによるものと推察できる。
減らない、生活習慣病患者数と患者率
高血圧症と糖尿病について、年代別患者数とその調査年における該当人口からだした患者率を時系列でみてみよう。(患者率は患者調査と同年の該当世代人口を用いて算出)
高血圧症・糖尿病、いずれにおいてもこの10年、患者数も患者率(各年代の患者数/年代人口で、算出)も増加している。国の健康日本21やスマート・ライフ・プロジェクトなどの施策実施が進んでいるが、生活習慣病の患者数低減はむずかしい様子だ。
平均寿命も健康寿命も、
年々伸びているけれど…
平均寿命とともに健康寿命も伸びている。平均寿命との差が課題として健康寿命の延伸は大きなテーマであるが、それでも確実に伸びている。一方で、先に紹介したような生活習慣病罹患率は上昇、高齢者ほど大きい体力あるなしがバラつき、生活に影響のある者率が高いなど、個人差は縮まらず、むしろ大きくなっているのではないかと、推測できる。
さまざまなことが平均値で語られる。しかし平均はあくまで平均。こと高齢者においては個人差が大きく、一側面から商品やサービスを考えても多くの方には響かないだろう。既に当研究室ではシニアを分けて考えることを提唱している。
就業していても健康に課題を持つ人、就業しながらボランティア活動に参加する人、多少の不自由を抱えながら地域の役を引き受ける人は少なくない。私の周りでも健康面で課題が発生してきたため責任者役は退きながらも、周りから頼られているため負担の少ない立場で地域の勉強会の世話役を続けている70代男性を見かける。もちろん健康に大きな課題はなく、働いたりボランティア活動を行ったりする高齢者もいる。
「シニアは暦年齢ではなく加齢現象で捉える」という記事でも指摘しているが、個々の加齢現象から発生するニーズに応えることが重要である。年齢や属性、生活スタイルだけで市場を検討するより、高齢者が抱える課題を解決する提案が市場形成に繋がるだろう。
株式会社日本SPセンター シニアマーケティング研究室 石山温子
2024年10月30日
2024年9月25日
2024年8月21日