今回のアーティクルも前回に引き続き、「平成28年 社会生活基本調査」から。
前回は、開始時刻の変化に焦点を当てた。そこでは、シニアの夕食時刻の前倒し傾向と、就寝時間の後ズレという現象が明らかになった。
では、実際の「時間量」はどのように変化してきているのだろうか? まずは睡眠時間から見て行こう。
図1.は、4つの母集団それぞれの過去40年間の睡眠時間の推移をグラフ化したもの。1週間を1日あたりに均した数字になっている。
4つの母集団に共通しているのは、過去40年間に睡眠時間が長期漸減傾向にあることだ。4集団共に近似した傾向を示しているのだが、仔細に見て行けば減り幅は母集団ごとに異なる。
1976年(40年前)と比較すれば、「15歳以上」、「40歳代」の減り分は、それぞれ28分、37分。一方、「65歳以上」、「70歳以上」の減り幅は、各々64分、69分。40年を経て、シニア世代の睡眠時間が1時間以上も長くなっている。シニアの「宵っ張り」化傾向も大きく寄与していると見て間違いないだろう。
直近の5年前のデータとの比較では、65歳以上の全高齢者を均した数字で12分短くなっている。一方、働き盛りの40歳代の睡眠時間が過去5年で4分増加しており、対照的な結果となった。
次に、食事時間はどうだろうか。(図2.)ここでは、シニア世代の2つの母集団とそれ以外で、傾向が大きく二つに分かれた。
40年にわたる時間の経過の中で、シニア世代の食事時間は常に「15歳以上」と「40歳代」を上回り続けているのだが、その差は、僅差から大差へ、緩やかに変遷している。 実数値で見れば、1976年の「70歳以上」と「40歳代」の差は、「70歳以上」がわずかに7分上回っているに過ぎない。ところが、直近の2016年では、その差31分と、大きな差がついてしまっているのだ。
食事時間が増えた理由には、「ゆとり・楽しみ」というプラス要因と、「嚥下障害」などのマイナス要因が考えられるが、ここ10年の若返り傾向を勘案して、おそらく前者の影響が寄与していると推察される。
もっとも、直近5年間ではどの母集団も食事時間を長く取る傾向にはある。僅かではあるが喜ばしい傾向と言えよう。
興味深い結果になったのが仕事時間の変遷。(図3.) 筆者の思い込みながら、シニア世代の若返りに呼応して、仕事時間は漸増傾向にあるという予測が覆った。シニア世代の仕事時間は、1976年と比べて、「65歳以上」、「70歳以上」ともにほぼ半減しているのだ。
理由は様々に考えられるだろうが、「世相・景気」といった側面の影響に依るところが大きいかもしれない。
この「長期低落傾向」は、直近5年間で、こと「65歳以上」に関する限り、増加へ反転している。2011年の71分から、2016年の78分へ僅かながら増えているのだ。
この反転現象が一時的なものなのか、趨勢として継続してゆくのかはわからない。が、昨今喧しい「働き方改革」のことなどを考え合わせると、シニアの仕事時間が、40年前の水準に戻る、あるいは上回ることは大いにあり得ると推察できる。
日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男
2022年10月27日
2022年8月17日
2022年4月11日