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「空き家というリスク」管理にビジネスの芽

平成25年住宅・土地統計調査によれば、総住宅数は6,063万戸と5.3%の増加。空き家率は13.5%と過去最高を記録した。さらに今後もたとえ住宅着工数が減少しても、それを上回る速さで世帯数の減少が続くため、2033年には空き家数は約2、150万戸、空き家率は30.2%に上昇すると野村総研では予測している。

2015年5月に施行された「空き家対策特別措置法」により、きちんとした管理がされていない「放置空き家」に公的な強制力が及ぶことになった。

問題のある空き家は、
1.放火による火災
2.老朽化による倒壊
3.犯罪の温床にもなる不法侵入
4.景観の悪化
など、多大な被害をもたらす。今や空き家はリスクとして考えなければならないのである。
本稿では、国土交通省「平成26年 空家実態調査」よりいくつかの問題点を浮き彫りにしてみたい。

図1

戸建の空き家所有者の年代別の比率をグラフ化したのが、図1.。

最も多いのが65~74歳の年代で、ちょうど前期高齢者に相当する。
次いで多いのが75歳以上の後期高齢者年代で、両者を合算すれば空き家の所有者の過半数を上回る。
さらに60~64歳のリタイア・再雇用年代を含めれば全体の73%をいわゆるシニア世代で占めていることになる。

これは居住世帯の所有者のうち60歳以上が占める割合、58%を15%も上回る数字であり、空き家問題とは
まさに「シニアマーケティング課題」と言えるだろう。

図2

但し、シニアマーケティングの範疇としてひとしなみには括れない。

図2.は空き家の所有者が空き家を利用しているかどうかを問うたもの。
所有者が50~74歳のレンジでの利用率は比較的高い(といっても半数にも満たないが…)。
それが75歳以上になれば利用者は4人に1人とガクンと低下する。おそらく心身の機能低下によるところが大きいと思われる。事実「長期不在の空き家」がぐんと増えるのも(緑の線)この証左であろう。

30~49歳の若年、中年層も75歳以上と同様のスコアではあるが、おそらく転勤などがその理由と推察でき、
「放置による問題発生」の懸念は比較的楽観できるものではないかと思う。

図3

年代幅の両端が同じようなスコアを取る傾向は「空き家を取得した経緯」(図3.)も同様である。

30~39歳及び75歳以上では「自身で新築・購入した家」が空き家になっているケースが相続したケースを上回っている。
逆に「相続により入手した家」は40~74歳の幅広い年齢幅で優位だ。

つまり、75歳以上では、おそらく若い時期に新築・購入した築年数の古い家が空き家化していると思われる。
これが課題であると同時に、50~64歳の「相続盛り」の年齢層に早めの対策をしておくことも重要になってくるだろう。

図4

「空き家になった理由」(図4.)にも深刻な課題がある。

空家になった理由のトップは所有者の死亡であり、これはうなづけることでもある。
問題は存命にも関わらず空き家化した家である。「別の住宅へ入居した」「老人ホーム等の施設に入居した」「入院などにより長期不在となった」、この3つの選択肢を合算すると約46%となり、「死亡した」を10%以上上回る。

この3つのケースはこれからもますます増えていくだろう。
つまり、所有者の意思決定があいまいなまま管理がなおざりにされてゆくということだ。

ドライに専門業者に委託すれば良いのかもしれないが、残念ながらどの年代にも共通して、委託意向は非常に低い。(図5.) おまけに今後も「空き家にしておく」という意向も年齢が上になるほど概ね強くなってゆく。(図6.)

図5

図6

救いは50歳代での「専門業者への委託意向」が強いこと。

相続のピークを迎えて、現実に直面せざるを得なくなったということもあるだろうが、空き家を「リスク」と受け取って、対策を講じ始めたということも言えるかもしれない。

このようなある種の危機管理については、日頃からのサービスや金銭的な備えも必要になってくると思う。
そしてそこに新しいビジネスの芽があると思う。

日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男