5年に一度の大規模調査、「平成30年(2018年) 住宅土地統計調査(総務省)」では、リフォーム施主の高齢者への傾斜がより明らかになった。
図1.は、2014年以降に実施された住宅リフォーム件戸数を施主(に該当すると思われる)の年齢階級別にみたもの。グラフからはひと目で、リフォーム戸数の高齢者シフトが著しいことがわかる。
総リフォーム戸数は895.9万戸。そのうち、施主等が65歳以上なのは、532.9万戸に上る。この数字は、全体の59.48%、すなわち総戸数の60%が、65歳以上の高齢者で占められている。64歳以下が束になってかかっても及ばない。
図2.は、各年齢階級の総戸数に占めるリフォーム実施戸数の割合を見える化したもの。リフォーム実施比率は、65歳以上が同じくトップではあるものの、実数と異なり、際立って高いわけではない。55~64歳の年齢階級が急追している。実数との差は、やはり65歳以上の膨大な人口ボリュームに依るものだろう。
部位別に見たリフォームの規模はどうだろう? まずは、キッチン・バス・洗面・トイレといった、いわゆる水回りから。(図3.)
水回りの2014年以降の総リフォーム戸数は、489.6万戸。その中で65歳以上の施主(等)が占める割合は、62.75%に上る。これはリフォーム総戸数に占める割合の59.48%を上回る数字である。こと水回りに関しては、高齢者への傾斜がより強いのだ。とくに、浴室やトイレは、段差や滑りやすさ、温度差などから、深刻な事態になりかねないこともあり、需要が顕在化しやすいと言える。
水回りリフォームの実施割合も65歳以上が全年齢階級中最も高く、20%に及んでいる。5戸に1戸の割合でキッチンや浴室等に手を入れていることになる。
床・壁・天井といった内装系のリフォームも、65歳以上の高齢者層が実施戸数で突出している。実施戸数は138.9万戸と、第2位の55~64歳の3倍を超えるボリュームとなった。そのシェアも高く、58.76%を占めている。水回りほどではないにしろ、全体の60%に迫る勢いだ。
年齢階級別の実施割合は、65歳以上で9.1%。他の年齢階級と比べてそれほど突出した数字ではない。リフォーム実施率は、水回りの50%以下にすぎない。
最後に屋根や外壁など、外装部分のリフォームの状況を見てみよう。
図7.は、リフォーム実施戸数。内装系と同様、65歳以上が58.89%とほぼ60%を占めている。2位の55~64歳の3倍に迫る大きな開きとなっている。
年齢階級別の実施割合では13.9%と、内装より大きく、水回りよりは小さな値となった(図8.)。実施割合は年齢階級が上がるほど、正の相関で上昇している。経年劣化が改修に直結する部位だからであろう。
55~64歳と60歳以上でそれほど差がついていないのも、この部位の特徴。外壁の塗り替えなど、比較的早期に実施されることもあるだろう。
以上、駆け足でシニア層のリフォーム事情を概観してみた。定量でみれば、シニアのリフォームは、やはり大きな市場であることは間違いがない。但し、数字からは見えてこない定性的なニーズが多様化しているのも、シニアリフォームの特徴でもある。
採光・減築・同居・介護・寒さや暑さ対策・営繕など、そのニーズは様々。それらのニーズを的確にくみ取り、適切な提案を行えるかどうか? それにより潜在需要を顕在化する余地はまだまだ多分に残されていると思う。
㈱日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男
2024年9月13日
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