データ図表だけをチョイスし、
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(中から続く)
過去5年間の居住地移動が概ね10~15%の中高年、高齢者層。この「少数派」の移動距離はどの程度なのだろうか? 図8.は、その移動が行政区域を跨ぐかどうかに注目して、年齢階級別に比較したものだ。
50歳以上を5歳刻みで概観すると、ほとんどの年齢階級で「同じ都道府県内の移動」が多数派を占めている。
同都道府県内の移動率が最も高いのが、60~64歳の77.1%。次いで、75~79歳の75.8%、65~69歳の75.1%と続く。押しなべて見ると、中高年平均で73.4%、高齢者平均でも同じく73.4%と、同都道府県内移動が約4分の3を占めている。郷土愛・地元愛はことのほか強いようだ。
例外的なのが、85歳以上の年齢階級。中高年・高齢者の8つの年齢階級の中で唯一70%を割り込んでいる。自ら望んでの移動ではなく、療養や介護など拠所ない事情によるケースが多いからではないかと推察される。
都道府県を一回りダウンサイジングした行政区域、市区町村に目を転じてみよう。
ここでも「同じ市区町村内の移動」が多数派だ。65~69歳の55.9%を筆頭に、以下80~84歳の53.8%、75~79歳と続き、この3つの年齢階級が50%を越えている。
「シニア層の都心回帰」がひと頃より話題になり続けているが、その実態はむしろ「駅前回帰」なのかもしれない。住まいのダウンサイジングを肯定的に考え、駅前からバスに乗る郊外坂道住宅地を捨て、利便性の高い駅前分譲マンションに居を移すという動きだ。
ここまでわかってきたこと、要するにシニア世代は家を移り住みたくないし、仮に移ったとしても今の場所から大きく離れたくはないのだ。そのことは今後5年間の居住地移動の可能性を問うた設問の答からも明らかだ。(図9.)
今後5年間の可能性と過去5年間の実績は、ほぼ相似形のカーブとなるが、そのピークは今後の可能性の方が若年側に遷移する。住宅の一次取得適齢期が概ね決まっていることもその要因だろう。
眼を転じて高齢者側を見ると、今後の移動可能性は実績を大きく下回る。75歳以上では、実績の半分の数字だ。「今のところにずっと住み続けたい」…。これは高齢になるほど切なる望みなのであろう。
「シニアの都心回帰」とは、話題性としては新鮮かもしれない。しかし、あくまで話題であって、市場のマス・ボリュウムを形成する「主戦場」ではないことは、心に留めておく必要がある。
事実、65~74歳のレンジの高齢者夫婦のみ世帯の住まいの延床面積で、断トツに多いゾーンは、100~149㎡なのだ。これは郊外戸建の二階建て住宅の標準的な広さ。つまり、大多数の高齢者は、若干広くなった(一人当たり)家を、やや持て余しつつも住居を移さずに生活しているのだ。
先祖代々という土着ではなく、昭和型人生スゴロクのある意味「勝者」として手に入れた住居と住環境を守る方々を仮に「新・土着」と呼んでもいいかもしれない。そして、住居というハードはそのまま残しながら、生活空間を身の丈に合ったサイズに変えてゆく工夫が今後さらに望まれてゆくと思う。
補足
居住地移動を語る上で、いわゆるUターンについて触れないわけにはいかない。改めて言うまでもないが、Uターンとは、出生都道府県から県外に移動したのちに、再び出生都道府県に戻って来ることを指す。図10.は年齢階級別に見たUターン者の割合をグラフ化したものだ。
15~29歳の若年層を除き、どの年代も20~30%のレンジに収まっている。60~69歳がUターン率28.2%と最も高くなっているが、面白いのは10年前、2006年の調査では、50~59歳が28.3%と同じくトップになっていたことだ。団塊の世代というコーホート的な要因があるのかもしれない。
地方の活性化に貢献するということで、シニア人材のUターンやIターンを推している論考も散見されるが、そこまで多数派のパワーとして期待するのは、今の時点では難しいような気がする。
日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男
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