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転落・転倒、階段、骨折。高齢者の家庭内事故(下)

(承前)
前回のコラムで見てきた高齢者の損傷を引き起こす原因は何だろうか?
図6.は家庭内事故のきっかけを、今まで同様、65歳未満と高齢者で比較したグラフである。

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65歳未満と高齢者では、まったく様相が異なることがグラフから一目でわかる。
高齢者の転落・転倒は従前より、注意するように啓発されてきたことだが、それを裏づけるように、この2項目は圧倒的な事故原因ワン・ツーフィニッシュであることが、数字の上からもしっかり確認できている。

次に、前期高齢者と後期高齢者で大きな異なりがあるかどうかを見たのが、下記の図7.。

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1位の転落に関しては、前期高齢者、後期高齢者の間で差は見られない。顕著な差がついているのが【転倒】。
前期高齢者では、わずかに8.5%(第4位)なのだが、後期高齢者では、29.1%と、転落の30.6%にほぼ比肩する第2位のポジションを占めている。

出所元の国民生活センター報道発表資料に拠れば、「階段などの段差でつまずく」といった典型的な事例はもとより、
●足がもつれて家具にぶつかり転倒する
●靴下が引っかかって転落、転倒する
●バスマットやじゅうたん、毛布などに足を取られて転倒する
などの事例が寄せられており、同センターでは、「ちょっとしたことが転落・転倒の原因になっている」と指摘している。
また、「寝起きや就寝中にトイレに行くためにベッドから降りたときに転倒する」という事例も特筆している。

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図7.は「家庭内事故の原因となった商品・設備」の上位3項目。65歳未満と高齢者で比較したものだ。
いずれも階段が第1位だが、65歳未満では、以下包丁、脚立と続き、高齢者では以下脚立、ベッドと続く。
ベッドに関しては、畳と勘違いして立ち上がり転落という事例も報告されており、注意を促している。

報道発表資料では、圧倒的に事故数の多い階段には、手すりや照明器具をつけることを推奨している。また、脚立やはしご等に関しては、一人で作業して転落した場合、発見が遅れるおそれもあるため、作業の際は必ず複数人で行うことも合わせて提唱している。

同資料で専門家からの助言として、東京都健康長寿医療センター 高橋龍太郎副所長はこのように仰っている。
「75歳以上の年齢層では、男女とも骨の構造が弱くなって骨量が減少してきます。そのため転倒によって骨折を起こしやすくなります。横に転ぶと、大腿骨が突出している大転子部が衝撃を受け、大腿骨頚部骨折が起こります。(中略)一度骨折を経験すると、外出するのに不安が強くなって活動性が落ちてきてしまうことがありますので、転倒の予防はとても大切なことなのです。」

転倒・骨折予防の商品は近年やや目立ってきたものの、まだまだ局所的な取組が散見されるに過ぎない。古い家屋に単身で住むケースも今後増大してゆく。点検などサービスを含めた商材のあり方から検討すべき時期が来ている。

日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男