年齢を重ねたとき、安全で快適な居住を確保するために、多くの方が現在の住まいを見直しておられます。
一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会が発表した『平成27年度の住宅リフォーム実例調査』によると、施主の年齢は、戸建て・マンションともに50~60代が中心です。(戸建て 67.0%、マンション57.6%)
http://www.j-reform.com/publish/pdf/jitsurei-H27.pdf
加齢により住みやすさの基準が変化してきたとき、長年住んできた家をどう維持していくか。シニア世代のリフォーム依頼を数多く手がけている、「住宅改修ひとがしゅ一級建築士事務所(兵庫県尼崎市)」の坂根弘子さんにお話を伺いました。
坂根弘子さんが、住まいのリフォームや新築の設計から施工を行う建築事務所を開業したのは、2003年。高齢者ができる限り在宅で、自立した生活維持を可能にする仕組みの一つとして、介護保険法が施行された3年後。ハウスメーカー勤務、在宅福祉のケアサービス会社が提供する住宅リフォームの設計業務を経た後の独立です。「人が主人公である住まいをつくりたい」という思いをこめ「ひとがしゅ(住=人+主)」という社名にしました。
その思いから、「高齢になっても自宅に住めることを目ざした住まいづくり」を手がけてきています。
介護保険の利用を始め補助金活用の相談は、欠かせない
事務所開業当初は、介護保険を利用した小さなリフォームの依頼が中心でした。独立前からシニア世代のリフォームを多く手がけ、介護保険の申請に関するノウハウも蓄積。独立後、前職で知り合ったケアマネージャーから、複数のリフォーム依頼を紹介されました。
手すりをつけたり段差を解消したり、便器を新しくするといった、介護保険の対象となる住宅改修を行った後も、キッチンを新しくしたいなど、大掛かりなリフォームを依頼してこられるご家庭が少なくないそうです。「住まいも生きているので、維持補修を続けないといけないでしょう。3回、4回とリフォームを依頼される方も少なくないです」と、坂根さん。
長く住んできた住まいにそのまま住み続けたいニーズは、とても高いようです。
「シニアは、住まいも高齢な場合が多い。古いおうちは新耐震基準に対応していなくて、バリアフリーになっていないので、住宅改修ではまず耐震改修とバリアフリーが求められます。耐震評点を1以上に高める工事であれば公的補助を受けられるし、耐震評点が1以上になるとエコリフォームのように補助を受けられる改修もあります。これら制度を利用するところから相談にのり、設計していきます」。
坂根さんが今新たに重視している住まいの性能は、温熱環境です。
「昔の家は、夏は暑くて冬は寒い。住まいの温度は身体の安全面、健康面においてとても重要なのに、温熱環境がシニアにやさしくない住まいが多いと思います」。
坂根さんの温熱環境の見直し案は、「例えば「床下収納庫をつくりたい」というご要望には、「ついでに床下の断熱工事もしませんか」とお勧めします。西日対策に遮熱ガラスをいれることも提案します。
この“ついでに断熱リフォーム”を提案することが大切。断熱工事は家中にお勧めしたいのですが、一度に住まい全体に行うと予算もかかるし、工事が大がかりになって普段の生活への影響も大きくなるでしょう。施主様の対応力は金銭面だけでなく、体力・気力もとても大切だから、できるときにできる場所から工事してしまうことをお勧めしています」。
「断熱工事を行ったお客さまは全員、新しい温熱環境に満足しておられます。中には「冬の室温が5度も上がったわ!」とおっしゃる方もいます。本当に測ったわけではないと思うのですが、それくらい温かくなって身体が動きやすくなっていらっしゃるみたい」。
***【資料の紹介】*************************
坂根さんが、バリアフリー、耐震につづいて重視している温熱環境は、快適性のみではなく健康面で重視されています。
○居室の断熱改修は、身体に良い影響を与える可能性が高い、という調査結果がでています。
<居室の断熱改修による身体の変化>
1. アレルギー症状が緩和
くしゃみ、鼻づまり、涙目等の7項目についてアンケートを実施したところ
(※1)、改修後は症状が減った
※1 日本アレルギー性鼻炎標準 QOL 調査票を使用
2. 睡眠の質改善
入眠に要する時間、睡眠時間等の7項目について※2、改修後の睡眠の質が改善された
※2 ピッツバーグ睡眠質問票を使用
3. 血圧の低下や安定化に有効
血圧の安定化を示唆する変化も見られた。
東京都健康長寿医療センター研究所(東京都老人総合研究所)が 2010 年度に実施した高齢者 43人(77~86 歳)に対する血圧と室温の 24 時間測定(※3)によると、部屋全体が暖まっている「適温」での生活が、血圧の上昇を抑え、安定化に効果的。
※3 住宅温度環境の健康指標への影響に関する研究
4.居室全体を暖房し室温が高いと、活動量や筋力も高い
暖房方式と居室の室温、活動量には関係がある。
部屋全体が暖まっている「適温」で生活をしている高齢者は、こたつやホットカーペットのみを使っている高齢者と比べて、活動量が高い。暖房状況と、筋力やバランス能力にも関係がある。
居間全体を暖房している高齢者は、部分暖房のみの高齢者より筋力のレベルが高い。<出典>
地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター発表(平成25年12月2日)
『冬場の住居内の温度管理と健康について』 より
http://www.tmghig.jp/J_TMIG/release/pdf/press_20131202.pdf
○住居内の温度差は高齢者の急死を引き起こす。
2011 年、約17,000 人がヒートショックに関連した入浴中急死をしたと推計され、そのうち14,000 人ほどが高齢者。
※ヒートショックとは温度の急激な変化により血圧が上下に大きく変動することで起こる、健康被害。失神、心筋梗塞や不整脈、脳梗塞を起こすことがあり、高齢者に多いことも特徴。
「ヒートショック」は医学用語ではないので死亡診断書には出てこず、「溺死」「病死」と記入されるため、正確な統計データはありません。<出典>
地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター発表(平成25年12月2日)
『冬場の住居内の温度管理と健康について』 より
http://www.tmghig.jp/J_TMIG/release/pdf/press_20131202.pdf
○居室内で熱中症を起こす高齢者が多い。
東京消防庁管内において、平成27年6月1日から9月30日までの4か月間に、熱中症(熱中症疑いを含む)により4,702人が救急搬送されています。
年齢区分別の救急搬送状況を見ると、65歳以上の高齢者が2,330人で全体の約半数を占め、そのうち約7割にあたる1,647人が75歳以上の後期高齢者。
東京消防庁発表(平成28年5月20日)
http://www.tfd.metro.tokyo.jp/hp-kouhouka/pdf/280520.pdf
株式会社 日本SPセンター シニアマーケティング研究室 石山温子
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