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75歳が分岐点か? 年齢階級別に見たシニアの趣味人口(中)

 ①では、75歳を境に行動者数が急減するパターンの趣味・娯楽を見てきたが、75歳以上で減りはするものの、漸減の範囲に留まってるものもある。冒頭の表で、Bに分類したものだ。順に見てゆこう。

 コンサートなどのクラシック音楽の鑑賞(図16.)では、60歳代で行動者数が最も多い。65~69歳の年齢階級をピークに、年齢層が上がるほど、行動者数は減ってゆくが、パターンAのように極端に減るわけではない。行動者率を見れば、例えば80~84歳では4.8%と、逆に70歳代を上回っている。年齢層に関わらず、一定率の支持者がいる趣味・娯楽と言えよう。

 カラオケ(図17.)も同様の傾向にあるが、コンサートなどの音楽鑑賞に比べると、後期高齢者の行動者数はずいぶん多い。行動者率では、なんと85歳以上が8.5%とここに挙げた6つの年齢階級の中では最も高くなっているから驚きだ。

 華道(図18.)・茶道(図19.)といった日本の伝統文化も75歳以上で漸減しているパターンだが、いずれも、減り幅は非常にゆるやかだ。いずれも70~74歳で行動者数が最も多くなっているが、これはサンプル母集団の大きさによるものであろう。一方、行動者率を見れば、例えば華道では、80~84歳で3.2%と、最も大きな数字になっている。年齢を問わない趣味・娯楽と言ってもよいだろう。

 和裁・洋裁(図20.)も同様。75歳以上の年齢階級で漸減傾向にあるが、後期高齢者の3階級で、行動者率がいずれも9%台と、高くなっている。10人に1人が嗜んでいるわけで、女性を中心に、根強い人気を得ているのだろう。

 編み物・手芸(図22.)も75歳以上になっても、数字の衰えが少ない趣味・娯楽だ。ことに85歳以上になっても、13.1%の行動者率があり、加齢をものともしていない。

 園芸・庭いじり・ガーデニング(図22.)は、年齢階級を問わず、人気のある趣味・娯楽だ。グラフの目盛りを見ていただければわかるように、行動者数はケタ違いに多い。行動者率も最も低い60~64歳でも、44.2%。注目すべきは、75~79歳の行動者率で、56%にも上る。そして85歳以上では、48.9%と約半数に迫る勢いだ。

  絵画・彫刻の制作(図23.)といった創造的要素の多い趣味・娯楽も、75歳以上では、行動者数こそ漸減傾向にあるが、80歳以上の行動者率は60歳代のそれを上回っている。60歳代の行動者率の低さは長い時間が必要な趣味は仕事と両立しづらいことに起因するのかもしれない。

 趣味としての読書(図24.)は、AパターンとBパターンの間にあるような波形。加齢の影響、とくに眼を酷使するので、さすがに85歳以上になると、行動者数・率ともガクンと減っている。

 将棋(図24.)人口は、シニア層では思ったほど多くない。その行動者率も2~3%台に収まっている。人口こそ少ないながら、後期高齢者の年齢階級では、数字の上では、行動者率は高い。

 以上、パターンBに属する趣味・娯楽を見てきたが、このパターンに通底するのは、王道とされているものが多いこと、そしてコンサートとカラオケを除けば、外出を伴わないという点だ。そして、行動者数は少なくても、率では引けを取らないものが多いという傾向が窺えた。(下に続く)

   株式会社 日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男