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プレシニアとSNS③ 主要SNSの使用目的は何か?(下)

 プレシニアとSNSの親和性を探った3回シリーズの最後になる本稿では、FacebookとYouTubeなど動画投稿サイトの使用目的について見てゆくことにする。まずはFacebookの全体傾向から(図15)。

 Facebookの使用率は、主要な5つのSNSの中で、意外にも最も低かった。ほぼ単独目的に使われることの多いLINEとよく似た傾向ではあるが、LINEの使用率の半分にも満たない。この結果をどう見ればよいのだろうか?

 LINEは「家族や友人、知人との連絡やコミュニケーション」のために使う人が90%に迫る勢いだが、Facebookは、かろうじて半数越えと、LINEと大きく水を開けられている。その代り、それ以外の選択肢はいずれも5%未満。思惑どおりなのか否かはわからないが、LINEは結果として、シングルユースに特化した戦略が功を奏しているというわけだ。Facebookは、「興味ある分野の情報を知るため」という選択肢にも、そこそこの票が集まった(23.5%)。数字を見る限りでは、この分散傾向が、LINEに後れを取っている理由かと推察される。

 男女別に見た場合、Facebookの使用目的に顕著な差は、存在するのだろうか(図16・図17)? 「家族や友人、知人との連絡やコミュニケーション」が使用目的の第1位であることにおいては、男性も女性も等しい。が、仔細に見ると女性の数字が、男性のそれを5%強上回っている。続く第2位も「興味ある情報を知るため」だが、この項目も、女性が男性を8%弱上回っている結果となった。女性の方が、このツールの王道に近い使い方になっている、とも言えよう。

 一方、マイナーとも言える使い方では、男性が女性を上回っている。たとえば、「自分の近況や意見を伝える」では、女性の3.1%に比べ、男性では9.9%と、トリプルスコアになっている。また、「趣味やボランティア活動における情報交換やコミュニケーション」では、女性が3.1%に留まったのに比べ、男性では7.0%とダブルスコアを超えている。性差に拠るこの分布状況の差は、興味深い。

 最後に、YouTubeなど、動画投稿サイトの使用目的を見てゆこう。男女計の全体傾向(図18)からは、極端な一点集中の様相が明らかになった。全体の96.4%までが、「見たいものがある、聞きたい音楽がある、暇つぶし、などで視聴する」という選択肢を選んでいる。一般に言われる『動画投稿サイト』であるにも関わらず、「投稿」という行為からはほとんど無縁なのだ。既存のメディア、つまり、テレビやラジオと同じように、「受け身」のメディアとして接しているのだ。インタラクティブな関係性などは、この年代には微塵もない、と言ってしまえば言い過ぎだろうか?

 このような超一点集中の状況で、男女間に際立った差異を望むべくもないが、「重箱の隅」を承知の上で、男女間の特性を見てゆきたい(図19・20)。「見たいものがある、聞きたい音楽がある、暇つぶし、などで視聴する」というガリバー型寡占項目は、男性が96%、女性が97%と、僅差で女性が優位であった。また、「仲間うちの情報共有に動画を投稿する」という人は、女性では誰一人いなかった。

 以上、5つのSNSツールの使用目的を2回にわたってみてきたが、総じて言えることは、双方向のツールと言えども、それを実現しているのは、「身内」の内部に限られていることだ。バーチャル井戸端会議と言えば、言い過ぎか? また、映像や音声のツールも、受信はすれども発信はせず、という状況が明らかになった。ましてや、「パブリック空間へ物申す」という行為はほとんど見受けられなかった。良くも悪くも、マスコミ全盛の時代の空気をまとったプレシニア世代は、SNSといっても、既存メディアの延長線上に存在するものなのかもしれない。

   株式会社 日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男