(上)では、スマートフォンの物理的な携帯の仕方を探ってきた。その過程で、スマートフォンとの愛着度合いも垣間見ることができた。本稿では、些か情緒的ではあるものの、「存在感」をキーワードにプレシニアの「スマホ観」を探ってみることにしようと思う。一択の選択肢として、「一時もなくてはならない生活インフラ」・「なくては困る便利なツール」・「特定の目的のため必要なツール(LINEなど)」・「とくになくても困らない」の4つの回答を準備した。
全体を通しての回答(図6.)は、きわめて妥当と思える結果になった。「なくては困る便利なツール」という認識が57%と、6割近くを占める大多数の意見となった。どの年代を対象にしても、多少の程度の差はあるにせよ。この結果は譲らないだろう。
それに続くのが、「LINEなど、特定の目的のために必要なツール」という認識で、全体の24%を占めている。乱暴に言えば、4人に1人は「スマホは単機能ツール」だと捉えているわけだ。この数字をどのように解釈するかは、人によって異なるだろうが、筆者にとっては想像以上に高い数字だったことに驚きを覚えた。スマートフォンの最大のメリットは、マルチタスクにあると考えていたからだ。
「とくになくても困らない」人も一定数存在し、11%と全体の約1割。「一時もなくてはならない生活インフラ」との回答は8.1%と1割に満たず、4つの選択肢の中で最下位に留まった。
次に、性別・年齢階級別の4つのセグメントごとの結果を見てゆこう。50~54歳男性(図7.)のスマホ観の分布は、全体傾向とほぼ類似しているが、特徴的なのは、「特定の目的のために必要なツール」として捉えている率が4つのセグメントの中で、最も低いことである。全体の24.0%から大きく下回り、6.4%減の17.6%。20%を割り込む唯一のセグメントとなっている。一方で「なくては困る便利なツール」の回答は、全体を4.1%上回っており、マルチタスクの恩恵を享受していると思われる。
同じ年代である50~54歳女性ではどうだろうか(図8.)? 「なくては困る便利なツール」という認識は61.1%と、奇しくも男性の数字と合致する。異なるのは、「LINEなど特定の目的のため必要なツール」という認識で、23.9%と全体傾向とほぼ合致するが、同年代男性に比べて、6.3%も高い数字になった。合目的的に使う人が多い分、「とくになくても困らない」の回答率は低くなり、8.0%に留まっている。これは、同年代男性を5.4%も下回る数字だ。
同じ50歳代でも、後半の55~59歳となると、少し異なる様相を見せてくる。図9.は男性のデータ。「なくては困る便利なツール」という認識は、47.7%。50~54歳男性の61.1%から13.4%も減少している。一方で「LINEなど特定の目的のため必要なツール」という認識は強く、25.5%にも上る。これは50~54歳男性を7.9%も上回る数字だ。
このセグメントの特徴として、スマートフォンの存在感の二極化が挙げられる。「一時もなくてはならない生活インフラ」、「とくになくても困らない」、対極に位置する2つの「スマホ観」も、4つのセグメントの中で、最も高い数字を記録している。蓋し、スマートフォンの価値観が最も多様化しているセグメントと言えよう。
「LINEなど特定の目的のため必要なツール」という認識が55~59歳男性よりも高いのが、同年代の女性(図10.)。ぞの数字、28.7%は4つのセグメントの中で最も高い。「なくては困る便利なツール」という認識も、同年代男性を10.1%も上回っている。
以上、プレシニアの「スマホ観」を全体と4つのセグメントごとに、つぶさに概観してきた。スマートフォンを合目的的に使う傾向は、50歳代前半より後半の方が強く、男性より女性の方が強いことが明らかになった。また、スマートフォンの価値について二極化の傾向を示すセグメントが存在することもわかった。
株式会社 日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男
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