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増加するワーキングシニアと採用する企業の対応

 働く高齢者が増えている。今や60代前半の7割、60代後半でも5割の人が就業している(令和2年(2020年)労働力調査(総務省統計局))。みなさんの周りを見渡しても、シニアワーカーは珍しくないのではないだろうか。高齢者の就業に関する意識や、事業所の様子など、今、どういう風になっているのか。年々増加している高齢労働者に関する数字を集めてみた。

高齢労働者の増加傾向について

 当室の他の記事においても紹介しているが、60歳、65歳を超えて働き続ける人は増加している。そして少しでも長く働きたいと考える人々は多い。

平成29年(2018年) ~令和2年(2020年)労働力調査(総務省統計局)から作成
https://www.stat.go.jp/data/roudou/rireki/nen/ft/pdf/2018.pdf
https://www.stat.go.jp/data/roudou/rireki/nen/ft/pdf/2019.pdf
シニアマーケティング研究室 独自調査による
(注)調査対象は、現在仕事をしている者のみ
データ詳細については、ホワイトペーパーでご紹介。
white paper【18】シニアを雇用する企業が知っておきたい「ワーキングシニア10のキーワード」
white paper【19】行政や大学が知っておきたい「ワーキングシニア10のキーワード」
white paper【22】働く、あるいは働きたいシニアが知っておきたい「ワーキングシニア10のキーワード」
white paper【23】シニアを市場とする企業が知っておきたい「ワーキングシニア10のキーワード」

 現在働いている60歳以上に行った当室の調査結果によると、全年代、75歳以上においても「何歳頃まで収入伴う仕事したいですか」という問いに、「可能な限り」と答える人が最多であった。

長く働くために大切なのは、
「健康」・「体力」と認識している

 長く働くためには、その準備が必要だろう。何をおいても「健康」そして「体力」。現在、仕事をしている60代が65歳を過ぎても働くために大切だと考えている。

独立行政法人 労働政策研究・研修機構「60代の雇用・生活調査」結果
令和2年3月31日  60~69 歳の 5,000 人(男女)

 実際、高齢者の体力は年々向上している。ここでは握力の推移を示す。握力は全身の総合的な筋力と関連があることが多くの研究で明らかになっているからだ。(公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネットより)男女ともに中年層が年々下がり続ける中、高齢世代ほど筋力を高めている様子が伺える。

各年、体力・運動能力調査(スポーツ庁) より作成

労働現場での災害発生は、高齢なほど多い

 高齢者ほど体づくりに励んでいることが推察されるが労働現場では、高齢者の労災発生件数は他の世代より遥かに多い。近年増加傾向にあり、高齢者の就労が一層進むと予測される中、高年齢労働者の安全と健康確保の必然性は高まる。

厚生労働省 令和2年度「労働災害統計」
「死亡災害報告」による死亡災害発生状況(令和2年確定値)  より作成
データ公開は 厚生労働省 職場のあんぜんサイト 労働災害統計

従業員が健康に活躍できる
健康経営に取り組んでいる企業は増加

 従業員の活力や生産性向上に繋がる健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する健康経営に取り組む企業は、年々増加。合計70にも及ぶ評価項目に対する取り組みについてチェックを受ける健康経営銘柄選定に応募する企業は、令和2年度、2,523社となった。

経済産業省 実施「健康経営度調査(従業員の健康に関する取り組みについての調査)」
各年「健康経営銘柄選定企業紹介レポート」より作成

 若手・中年社員が元気な高齢社員に育つことができる、健康面からのチェック&支援が進んでいる。70に及ぶ評価チェック項目のうち、高齢者向けの取り組みに関してはQ.57に設けられている。(3.制度・施策実行について (3)従業員の心と体の健康づくりに関する具体的対策は?-Q.57高齢従業員向けの取り組み)。※調査票のサンプルはこちら

 高齢社員が健康に活力をもって働けるような取り組みをどうつくっていくか。さらに高齢社員比率が高まる中、新たなアイディアや提案が必要だ。事業者にどんな提案が考えられるか。サービスやツール開発の検討に、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構からでている提言もヒントにしてはいかがだろう。

シニアマーケティング研究室 石山温子