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新型コロナで、シニアの買物頻度はどう変わったか?(上)

 2020年と2019年を比較して、買物の利用頻度はどう変わったのか? 消費者庁による興味深いデータがある。1年前との比較とは言え、新型コロナ以前とコロナ渦中の比較だから、当然その落差は大きい。当該データでは買物の種類ごとに、都市規模や地域、職業別など多くの物差しで、違いが分かるようにされている。また、店頭でのリアルな買物に並び、ネットでの買物の利用頻度の変化を詳らかにしている。本稿では、多くの物差しの中から、年齢階級別の比較を抽出することで、シニア層の買物利用頻度の変化を追うことにしてみたい。

 セレクトしたデータからは、概ね3つの大きな傾向や特徴があることが明らかになった。

1.どの品目の買物も、店頭でのリアルな買物よりも、ネットでの買物の方が、「(買物の利用頻度が1年前より)増えた」と回答した率が高い。

2.品目によって差はあるものの、年齢階級が上がるほど「増えた」と回答する率は低くなり、「減った」と回答した率が高くなる傾向にあった。

3.とは言え、約半数は「変わらない」と答えており、全体の中で多数派を占めていた。この傾向は、食料品など、必需度の高い品目になるほど著しい。

 上記のような全体傾向を踏まえながら、個別の品目ごとにつぶさに見てゆこう。

 上図は、食料・食品の利用頻度の変化。図1.は、店頭でのリアルな買物頻度、図2.は、インターネットでの買物頻度の変化である。必需品である食料・食品では、「変わらない」という回答が大半を占めた。疫禍という環境変化の中にあっても、日々消費する基幹商品の購買態度は、大きな変化を望まないのだろう。

 リアルであれ、ネットであれ、「増えた」という回答が比較的多いのが、30歳代から50歳代にかけての働き盛り世代である。子育て世代でもあるこの世代、外出自粛の要請の中、自宅で飲食を楽しむ傾向が、若年層やシニア層に比べてやや強かったことがその要因の一つと言えよう。働き盛り世代の中でもとくに30歳代では、ネットでの食料・食品購入の頻度が高まっていたことは、着目すべき結果と言える。

  

 図3.・図4.は、家具・家電の買物の利用頻度。リアルな買物でも、ネットでの買物でも、「減った」という回答は年齢階級が上がるほど多くなっている。一方「増えた」は、リアルではどの年齢階級でも低いスコアになっている。

 ネットでは、利用頻度が増えたという回答がそこそこ多くなっている。とくに50歳で顕著であり、全年齢階級の中で、唯一20%を超えている。年齢階級別にみると、多くの階級で「増えた」が「減った」を上回っているが、唯一70歳代のみが、「増えた」が「減った」を下回った結果となった。

  図5.・図6.は、衣料・履物の買物の利用頻度。リアルでは減り方が最も著しい品目の一つとなった。ことに30歳代から50歳代にかけての減り幅は大きく、いずれも30%台後半のスコアを記録した。男女ともリモートワークの浸透により、自ずから衣料への出費が減ったことも要因に挙げられよう。「増えた」という回答は、全年齢階級を通じて非常に低く、かつ年齢階級間の顕著な差も見られなかった。

 ネットでは、「増えた」という回答が、年齢階級が上昇するほど減っている。年齢が上がるほど、優先度の低くなる品目特性がネットの買物というフィールドで明確に現れてきたようだ。(下に続く)

   ㈱日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男