「シニアはWebを見ない、Webで買わない、Webは見ても苦手」
マーケティングの現場では、こんな意見がいかにも定説のように
いまだにまかり通っているように見える。
しかし、それは「迷信」に近い俗説にすぎず、一部のシニアでは
現役ビジネスパーソンをしのぐITリテラシーを自在に駆使して、
Webを自由に行き来しているのが実情である。
今回のコラムでは、シニアとITリテラシーの関わりを定量データを
基にしながら、弊室が複数のグーループインタビューなどで得た
定性的ないくつかの知見を加えて、シニアとWebの関わり方の
「今」をレポートしてみたい。まずは定量の統計調査データから。
図1.は平成20年を基点にして、同24年のネット利用率の
伸びを年代層別に表したもの。一目でわかるように、
60代後半から70代の伸び率が他の世代を圧倒的に上回っている。
このデータの取得時点での60代前半は、現役ワーカー時代も
含んでいるので、伸び率がそれほど高くないのは理解できる。
が、60代後半から70代にかけては現役時代に道具としての
ネットやPCの洗礼を受けていない年代だと言える。
つまりこの世代の方々は、仕事上やむを得なく習得したのではなく、
自らの意思で習得を始めたと言えよう。
言わば自発的な【60の手習い】によるものである。
直近の実数ではどうだろうか?
「通信利用動向調査」から平成25年のネットの利用率を見ると、
60代後半で68.9%もの高率に達している。(携帯含む)(図2.)
もちろん20~40代の殆ど100%に近い数値からは見劣りするものの
10人に7人まではネット利用者であり、この世代では
ネット利用が圧倒的なメジャーであることを示している。
70代でも48.9%。2人に1人はネット利用者であるから驚きである。
シニアには抵抗が強いと思われてきたネット通販の利用世帯も
確実に増えてきている、平成26年の「家計消費状況調査」によれば、
高齢者世帯の10軒に1軒(9.9%)はネット通販を利用している。(図3)
(図4~6に機能・サービス別に詳細を掲載)
実際、グループインタビューなどを通して、シニアのナマの声を
目の当たりにすると、シニアとネットの親和性の高さに改めて驚かされる。
「仕事はパート。仕事がない時は、午前中は家事、
買い物は2時か3時くらいまでで、それ以外はずっとPCの前にいる。」
という65歳女性 は、「トップページを見てから次は、下までいったん
スクロールする。」とかなり詳細にWebとつきあう派。
「メーカーの社名ロゴを押すとトップページへ戻れる」
この発言からは、ブラウザの前でオドオドしている
情景など決して浮かんでこない。
「一人旅が好き。趣味はPC、カメラ。インターネットは、
1日朝からやって、晩にもする」という66歳女性。
「クリックして画面を見るから、クリックするところが
分かりやすいと迷わなくていい。」と言いつつも、
「矢印があれば押しに行く。色々関心持って押しに行く。」と
やはり、物おじする様子は微塵も感じられない。
一方、「妻、母親と3人で一戸建に住んでいる。近所に娘家族がいて、
孫の相手をする事が多い。月10日ほど働きに出ている。
家にあるのはノートPCで15.6インチ」という66歳男性。
「トップページはスクロールしない。
そこで画面が切れてるように思う。」
「1アクションで戻れないと嫌になる。
左のナビの順番で次へ次へといけばスムーズなのに…」と、
女性よりむしろ男性の方が、気難しく、応用がききにくい印象を持った。
レアケースではあろうが、こんな声もある。
「PC教室では72歳の先生に習っている。
それでネットショッピングができるようになった」
という68歳女性。さらには、
「孫に教えてもらって、i-padから楽天やアマゾンで買い物をする。
98の父から、使い方を教わった」という63歳の女性もいる。
このようなスーパーシニアは別格としても、メディアとしてのWebは
シニアマーケティングには必須である。
ゆめゆめ疎かにしてはいけない。
日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男
2023年11月24日
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