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シニアの就業。5年間でどう変化したのか?③

では、シニア世代の有業者はどのような雇用形態が多いのだろうか? その特徴を明らかにするためにも、生産年齢が開始する15歳まで遡って、傾向を見てゆくことにしよう。

 図8.は、15~39歳の比較的若年層。学生が多くを占める15から24歳を除き、正規職員・従業員の比率が圧倒的に高い。とくに25~29歳の年齢階級では、72.7%と高率を記録している。

 正規職員・従業員が大半を占めている傾向は中高年層でも変わらない。(図9.)但し、正規雇用の比率は年齢階級が上がるほど低下している。40~44歳では61.5%、45~49歳では、ついに60%を割り込んだ。それに呼応するように、パートの割合が増えている。この傾向は、59歳まで続く。

 もっとも、アラフォー世代とアラ還世代では、同じような構成比であっても、その理由は若干異なると思われる。40歳前後は、所謂、就職氷河期の世代。一方45~59歳の世代は、子育てに一段落し、社会復帰・収入増の目的で多くは女性がパートに参画している。あくまで推測にすぎないが、一因ではあるだろう。

 ではシニア世代の就業形態は一体どのように分布しているのだろうか?(図10.)それまでの世代と際立った特徴がある。それは、多様性だ。

 正規職員・従業員が多数派の地位を降り、言わば「群雄割拠」の状態。ことに60歳代では、さまざまな雇用形態が、ほぼイーブンに分布している。

 この状態は5年間でどのように変化した結果なのか? シニア世代の年齢階級ごとに、2012年と2017年の就業構造を比べてみた。(図11.~図14.)

 60~64歳の年齢階級における大きな変化は、正規の職員従業員の比率が高くなったことだ。約4%ポイントを上昇させた。逆に低下させたのは自営業者。ちょうど4%低下し、正規雇用と相殺した格好になった。

 65~69歳の年齢階級では、正規雇用の伸びはわずかに1.1%に留まっているが、変わって大きく伸ばしたのがパートという雇用形態。5年前には有業者の5人に1人の勘定だったのが、4人に1人まで増えている。これも、自営業者、家族従業者の低下を補ったかたちになった。

 70歳代に入っても、同様の傾向は継続する。即ち、自営・家族従業者の退潮、パートの台頭だ。5年間のパートの伸びは、70~74歳では5.9%、75~79歳では5.7%の伸びを記録した。

 このように見てくると、それぞれの年齢階級に応じた、就業の受け皿がある程度設けられているようにも見える。今後はさらにバリエーションも広がるだろう。シニアの働き方改革はすでに始まっているのだ。

 だとすれば働き方に応じた時間消費のあり方も多様化してくるのが必然。より具体的なペルソナの描出がますます求められてくるだろう。(完)

  ㈱日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男