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減る有訴者、減らない通院者という事実(4)

(3から続く)
では、75歳以上女性の通院者率はどうなっているのだろうか?(図7.)

男性同様、圧倒的に多いのが高血圧症。その通院者は1000人あたり324人に上り、男性を26人上回っている。全高齢者平均では、男女差はほとんどない(男:292vs女:289)ので、女性の場合比較的高年齢で、高血圧症になる方が多いと言える。

続く第2位は、これも男性と同様に眼の病気で、177。第2位とは言え、高血圧症の約55%に留まっている。眼の病気による通院者率も女性が男性(148)を約20%上回る数字となっている。全高齢者平均を男女別に比較すれば、男性は、後期高齢者平均が全高齢者平均を26%上回り、女性では18%上回る結果となった。こと眼の病気に関しては、女性の方が比較的早い時期から通院し始めるケースが多いようだ。

通院者率100越えの5つの症状・疾患で男性から入れ替わったものが2つ、骨そしょう症と脂質異常症(高コレステロール血症等)だ。それぞれ、第4位、第5位にランクインされている。

ここで注目したいのが、脂質異常症(高コレステロール血症等)。他の4つの症状・疾患は後期高齢者平均が全高齢者平均を上回っているのに比べ、当症状・疾患のみは、後期高齢者平均が全高齢者平均のそれを下回っている。つまり、年齢階級が高い人は当症状・疾患による通院者が減少しているということだ。それも約20%の減少率。これは誤差範囲や調査マジックなどではない。

脂質異常症(高コレステロール血症等)は当然ながら食生活習慣と密接に関わりあっている。前回のコラムで、昭和ひとけた世代の「元気」について触れた。かいつまんで再掲してみよう。

『昭和ひとけた世代といえば(中略)食糧難に思春期が重なるが、穀類・野菜・魚という和食中心の食生活を過ごし、おやつに蒸かしイモ・団子などの自然食品を中心に食べていた世代』

この質実で健康的な食生活の賜物であることも、この現象の有力な一因と推測できる。

最後に、通院者率の変化を男女別に2013年のデータとも引き比べて見て行こう。(図8.)

グラフ化して驚いたことがあった。男女差も2013年差もごくわずかなのだ。ことに60歳以上では、ほとんど差が認められないと言っても過言ではない。2013年男・女、2016年男・女の4つの指標のレンジは、60歳代で574~583の間、70歳代で703~712、80歳以上では730~735とわずか5人分の差の中に収まってしまっている。3年間の変化と言う観点から見ると、特に女性30歳代以降の年齢階級で、5人分以下の増減になっている。つまり、通院者率は3年経ってほとんど改善されていないというわけだ。

改善には至らないという事実は有訴者率の変化と比べてみれば明らかだ。(図1.参照)
2013年の有訴者率と比べると、2016年のそれは、80歳以上の男性で29人分減少、70歳代の女性で20人分の減少。劇的とは言わないまでも、ある程度の改善は見える形になってきている。が、残念なことに通院者率はそこまで行き着いていない。

自覚症状こそないが、隠れた器質的問題を抱えている人は、決して減ってはいない。この事実に真正面から向き合うべきではあろう。

日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男