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減る有訴者、減らない通院者という事実(2)

(1から続く)
では、75歳以上女性の有訴者率はどうなっているのだろうか?(図3.)

女性には男性には見られない際立った特徴がいくつかある。
1.有訴者率100を超える症状が男性より少ないこと。10人に1人が自覚する症状は、男性は8、対して女性は6。即ち、自覚する症状が女性の場合、集中している。
2.男性に見られない症状が登場していること。肩こり、便秘の2つの症状は、女性のみが有訴者率100を超えている。一方、男性特有の手足の関節の痛み、手足の動きが悪い、頻尿、咳や痰が出るという症状は、女性では有訴者率100未満に後退している。
3.有訴者率100以上の症状は、概ね男性より高い。症状に悩みを抱えている人は男性よりむしろ女性に多いと言えそうだ。

一方、75歳以上で有訴者率がグンと上昇する症状があり、これらは男女共通の傾向を示している。
たとえば「きこえにくい」という症状。65歳以上の高齢者平均では、男性の場合89。これが75歳以上の後期高齢者平均となると、136まで跳ね上がる。その差47。女性の場合は、高齢者平均では男性同様89。後期高齢者平均では133まで、同様に跳ね上がる。その差は44。75歳を境に「聴力に不具合がある」と感じる人が急増するのだ。

同様の傾向を示すのが「もの忘れする」という症状。高齢者平均と後期高齢者平均を比べると、男性では後者が前者を47上回り、女性では42上回る。聴力に加えて記憶力にも齟齬を来す確率は、75歳を画期に一気に高まるのだ。

逆に、高齢者平均と後期高齢者平均がそれほどまでに変わらないものもある。腰痛(男女)、目のかすみといった症状だ。肩こり(女性)に至っては、後期高齢者平均の方が有訴者率は低い。これらの症状は高齢者の年齢階級にそれほど関わらない普遍的な症状だと言えよう。

図4.は、年齢階級別、男女別に有訴者率がどのように違ってくるかを見たもの。合わせて、3年前の調査時のデータを併記することで、経年変化の有無も把握できるようにグラフ化したものだ。

一目見てわかることは、9歳以下を除くすべての年齢階級で、女性の有訴者率が男性のそれを上回っていることだ。図2.図3.で推察したことがこのデータで裏づけられた。
興味深いことに、男女間の有訴者率の開きは、20~50歳代のほぼ生産年齢にあたる年代ほど大きい。60歳代に入って、その開きは小さくなり、以降概ね同様の開きを維持している。
60歳以上になると、一定の男女差はキープしながらも、「女性上位」を保っているという結果だ。そして、男性の増加カーブは50歳から、女性の増加カーブは60歳からが著しくなっている。

今一つ興味深いことがある。それは、成人男女のすべての年齢階級において、3年前に比べて有訴者率が低下していることだ。この低下傾向はことに70歳以上で著しい。
たとえば、60歳代では男女とも3年前に比べて、それぞれ8%有訴者率が低下している。一方70歳代では男性が16、女性が20と低下幅が大きい。最も顕著なのが80歳代男性。3年前に比べて29と、1000人当り約30人の有訴者を減らしている。

この状態を見ると徐々に、健康状態が良くなっているようだが、自覚症状より一歩切実な通院の状況はどうなっているのだろう。次回からのアーティクルでは、通院者率に焦点を当ててみたい。(3に続く)

日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男

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