(上から続く)
睡眠と並ぶ、一次行動の重要な要素である食事について、その開始時刻を見て行こう。まずは朝食。(図7.)
全年齢層、全高齢者層、後期高齢者層ともに、朝食開始のピークは7:00に集中している。それ以前の早い時間帯は、高齢になるほど、行為者が少なくなる。通勤、通学の影響がないことを考慮に入れても、「高齢者=朝型」という単純な図式は成り立たない。
起床時刻は、6:00がピークで、その後、徐々に少なくなっていることを考え合せると、起床から朝食までは、どの層も概ね30分から60分ぐらいであろうと推察される。
もう一つ、気がつくことがある。起床時間はどの年齢層も、7:00のピークから7:30にかけて急激に減っている。ところが、朝食開始時間を見れば、高齢者全体、後期高齢者双方とも、7:00~8:00にかけて、比較的緩やかに低減していることだ。7:30、8:00に朝食を摂る人は、全年齢層と後期高齢者では、それぞれ5%前後の開きがある。
起床から朝食までの時間のゆとりを特に後期高齢者層に感じ取れる結果となった。
全高齢者層、後期高齢者層で5年前と朝食開始時刻がどのように変化したかを、次に見て行こう。(図8・図9)
結論から言うと、全高齢者層も後期高齢者層も、5年前とはほとんど波形の変動がない相似形になっている。起床時間と同様、どちらも若干の朝型傾向が強まっているが、取り立てて特筆すべきことでもない。時間帯幅が大きな起床時間と異なり、どちらかと言えば集中せざるを得ない朝食時間帯は、ドラスティックに動きようがないのかもしれない。
夕食開始時間の比較(65歳以上:2011年vs2016年)
集中度の高い朝食時刻と比べて、比較的自由度の高い夕食時間はどのような母集団間の差異があるだろう?(図10.)
ここでは全年齢層と全高齢者層の間で、隔たりが見えた。時間帯に拠る偏りが緩やかな全年齢層と、集中傾向が強い全高齢者層という二項対立。19:00にピークを迎える全年齢層と、それより1時間早い18:00にピークを迎える全高齢者層という際立った違いが明らかに見て取れる。
高齢者層同士で比べてみると、両者は似た波形ながら、後期高齢者層の方が、早い時間に夕食を摂っていることが明らかになった。これもまあ、常識の範囲で肯えることだろう。
朝食開始時間と同様、全高齢者層、後期高齢者層の間で5年前と朝食開始時刻がどのように変化したかを図11・図12のグラフから見て行こう。
全高齢者層でも、後期高齢者層でも分布状況に格段の変化は認められない。僅かに一時の集中度が平準化されている傾向が見られる通りで、波形は相似している。ことに全高齢者層で見ればほとんど変わらず、長年の習慣からはなかなか抜け出せないようだ。
時間帯で注目すべきは、18:00(含む)以前の時間帯。この時間帯に夕食を始める人が増えているのだ。その増加率は全高齢者層では、35.32%(2011年)から37.01%(2016年)とわずかな伸びだが、後期高齢者層に限ると様相はやや際立ってくる。
後期高齢者層の変化率は、35.84%(2011年)から42.46%(2016年)にまで上昇している。5年で6.6%の増加になり、決して無視できる変化ではない。
本アーティクルの(上)では、「シニアの【宵っ張り】傾向が強まったこと」に触れた。「ことに後期高齢者層で22:30から深夜0:00の就寝比率が高まっていることは注目に値する」とも言及した。
夕食時間が前倒しされ、就寝時間は宵っ張り傾向。この間の「自由時間」の増加は、時間消費財やサービスとどのように関わってくるのだろうか?
日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男
2022年10月27日
2022年8月17日
2022年4月11日