データ図表だけをチョイスし、
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「高齢者は75歳から」という、日本老年学会、日本老年医学会の提言が大きな話題になっている。論拠のひとつが、「若返り」。65歳から74歳にかけては心身ともに健康的ということだ。
歩行距離や障害歩行など、持久力・筋力・バランス感覚などは、たしかに10年前に比べ、5~10歳若返っている。とくに女性の高齢者では著しい。(ご参考:高齢者の運動能力、若返りは本当か?)
では、生活に密着したADL(日常生活動作)の項目ではどうなのだろうか? 本アーティクルでは、年代別・性別に最新の達成度合いとともに、5年前、10年前と比べてどのように変化してきたかを見てゆくことにする。
調査データは、スポーツ庁の年次データ「体力・運動能力調査」に拠った。同調査では、ADLの物差しとして12の項目を上げているが、ここではその中で、より生活に密着した7つの項目に注目した。
図1.は、「歩行の持久力」を年齢層別、性別に比較したもの。
6階級どれをとっても、比較的スコアが高い項目と言える。最も達成度の高い「1時間以上休まず歩ける」人が、男性75~79歳で54.6%と過半数を超えている。一方、同年齢層の女性のスコアは、37.8%と些か心細い数字。70~74歳から一気に10ポイント近くも急激に低下している。75歳前後を境目に高齢者か否かを判断するのは、この項目に関する限り、確からしい。
図2.は「階段の昇降」に関しての項目。「1時間休まず歩ける」よりハードルこそ低いが、日常性ははるかに高く、まかり間違えば事故につながるだけに、非常に重要な指標と言える。
「手すりや壁につかまらないと昇れない」という達成度合いの最も低いレベルは、75~79歳になって増加する。男女とも70~74歳のダブルスコアに近い急増ぶりは、歩行持久力同様、75歳前後にキャズムが存在することも窺える。
問題は達成度合いの最も高い「サッサと楽に手すりや壁につかまらずに昇れる」というレベル。70~74歳でこのレベルをクリアしている人は、男女とも半数に満たない。過半数がおっかなびっくりで階段を上り下りしている年齢層を果して高齢者から除外して良いのか、いささかの疑問は残る。
図3.・図4.は、「バランス感覚」に関しての項目。「正座の姿勢からどのようにして立ち上がれるか」(図3.)は、最高レベルの達成度合いも各年齢層で比較的高い。顕著な男女差も認められない。
自宅内はそれで良しとして、公共交通のお世話になる時はどうだろう?
「バスや電車に乗る時に立っていられるか」(図4.)の最高レベルの達成度合いは各年齢層で、「正座からの起立」より概ね低い。性差も比較的顕著で、ことに70歳以上の女性では、半数を大きく下回る。70~74歳でも、「何もつかまらずに立っていられる」人は40%を切っている。
図5.・図6.は、「衣服の着脱」に関しての項目。「立ったままで、ズボンやスカートがはけるか」(図5.)では、「何もつかまらないで立ったままできる」という回答の多さが目立った。男女とも75歳以上の年齢層で、ガクンと低下はするものの、大半の人が最高レベルを達成できている。「シャツの前ボタンを掛けたり外したりできるか」(図6.)も、ほぼ同様の傾向と言ってよいだろう。
図7.は「布団の上げ下ろし」に関すること。さすがに筋量の性差が如実に現われ、「重い布団でも楽にできる」は圧倒的に男性の方がスコアが高い。それでも、女性の全年齢層でこの最高レベルの達成度合いは半数を超えており、ADL項目の中で安心できるものの一つと言って良いだろう。
以上、最新のデータよりADL項目の達成度合いを駆け足でみてきた。そこからわかることは、
1.ADL項目によっては、75歳が一つの境目であることが確かに窺える
2.女性の場合70歳から「高齢者」と呼んでいいようなADL項目もいくつか存在する
3.転倒事故につながりやすいADL項目は総じて最高レベルの達成度合いが低い
と言ったところだろう。
では、「若返り」の証左となる時系列比較はどのような様相を呈するだろうか? 次回は5年刻み3つの時系列データを追ってゆくことにする。(中に続く)
日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男
併せて、ご一読ください!「高齢者」は75歳から?
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2021年1月13日
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2020年12月21日