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リハビリテーション、現実と理想のギャップ(上)

医療・介護・予防・住居・生活支援が住み慣れた地域で一体的に提供されることを目指した、「地域包括ケアシステム」の推進が叫ばれて久しい。このシステムのキーワードは「地域」。
超高齢化は全国一律という印象があるが、実は地域によって大きな差異があるのだ。

図1.は高齢者比率の高まる地域とそうでない都道府県、上位3地域。比較対象として東京都も取り上げた。2015年を1として10年後の2025年には何倍になるかを見た後期高齢者人口伸び率ランキング上位3県、下位3県も併記している。
これを見ると、都市部(とくに首都縁辺部)の後期高齢者人口は急速に増加する一方で、地方では今後の増加は至って緩やかなことがわかる。地域の状況に応じた対応が必要となってくる所以だ。

本稿は、高齢化の地域格差を論じるのが目的ではないが、前提として介護の問題は都市部でことに逼迫した課題であるということは認識しておきたい。

「地域包括ケアシステム」にはいくつかの柱があるが、中でも重要なのがリハビリテーションと言えるだろう。
介護保険法第4条は以下のように謳っている。

「要介護状態となった場合においても、進んでリハビリテーションその他の適切な保健医療サービス及び福祉サービスを利用することにより、その有する能力の維持向上に努めるものとする。」
リハビリテーション重視の考え方が明確に示されている。

リハビリテーションは施設サービスと居宅サービスに大別される。そのうち、施設系サービスの受給者数は1.71倍。対して居宅系は3.77倍とその伸びは著しい。(2014年4月サービス分/2000年4月サービス分)

本稿では、この居宅サービス系リハビリテーションの理想と現状を追ってみたい。資料は「高齢者の地域における新たなリハビリテーションの在り方検討会報告書(平成27年3月/厚生労働省)」に拠った。

居宅系リハビリテーションは、通所リハビリテーション(以下通所リハと略)、訪問リハビリテーション(以下訪問リハと略)に大別される。通所リハの1ヵ月あたり受給者数は、予防給付の利用者が約12.9万人、介護給付の利用者が約40.8万人と計53.7万人。(図2.)
平成25年度の介護保険実受給者は約566万人(※)。その1割弱が通所リハを利用しているメジャーなリハビリテーションサービスと言えよう。(※平成26年度「介護給付費実態調査」厚生労働省)

訪問リハの受給者数(図3.)は、予防給付の利用者が約1.1万人、介護給付の利用者が約7.4万人、計約8.5万人。通所リハと比べれば利用者数は圧倒的に少ない。
これには、介護老人保健施設で通所リハを併設する施設が96%なのに対して、訪問リハを併設する施設は17%に留まると言う事実も一因になっているだろう。加えてリハビリテーションのイメージが今一つわかりづらいということも影響しているように推察される。

しかしながら、平成18年度以降、訪問リハの受給者数は急速な勢いで伸びてきている。「在宅」という介護や医療の時代の流れに対応できているからだろう。
もっとも、ここでも都道府県単位での格差は大きく、東京都を除く首都圏では、全国平均を下回っている。(次号に続く)

日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男