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大介護時代に向けて
「仕事と介護の両立」市場

 人口減少から労働生産人口の減少、人手不足が一層懸念される中、仕事と介護の両立は社会においても個人においても必要性が高まっている。

 これまでも高齢社会において「介護」は大きな課題。ケアワーカー不足への充足案や、高齢期の生活の場や在宅生活の支援、不自由があってもやりたいことや行きたい場所へ出かける支援など、多面的なニーズに提案がなされてきた。レスパイトケア*のように要介護者と介護者が、よりよい関係を築くためのサービスも発展している。

*「レスパイト」は小休止の意味。要介護者や障害者などのいる家族、介護者が休息できる時間をつくり、心身疲労や共倒れなどを防止するのが「レスパイトケア」。デイサービスやショートステイ、短期入院などのサービスが含まれる。

 一方で核家族化が進み男女ともに働き、晩婚や独身者の増加が進むと、働き手が介護を担うことが今まで以上に増えてきた。しかし多くの人は、これまでどおり就労は必要であるし、続けたいと思っている。

 世間では、介護と仕事の両立が今まで以上に重要になってきた。

ワーキングケアラーは364万人、全有業者の5%
50代男性は8%、女性は14%を占めている

 働きながら介護をしている人は、現在、364万人。全有業者数が6,706万人なので、約5%占めている。しかも家庭や仕事で責任が一層大きくなりがちな50代では男性の8%、女性の14%。令和4年でこの数値なのだから、より高齢化が進む将来はもっと多くの人が直面しているだろう。

令和4年就業構造基本調査(総務省)より作成

 一方で介護休業制度の利用者数は、70代まで男女あわせてもわずか374,500人。
 介護休業は介護のためというより介護生活の準備や通院のつきそい、ケアマネやリハビリスタッフ等との面談や打ち合わせなど、介護をうまく行うために使われることも多い。必ずしも介護そのものために利用するとは限らない。最初に介護体制をつくってそのまま運営できている人もいるかもしれない。

 そうしたことを考慮しても、介護をしているうち利用している人が10%というのは少ないように感じる。
 一方で、介護を事由に離職する人もいる。介護事由で離職する人はここ数年、再び増加傾向にある。

就業構造基本調査平成24~令和3年までの調査結果より作成

働く50代の3割は実親の要介護、経験あり
2割は近々介護が必要と考えている

 正社員への調査によると、実は50代になると、近々親の介護について可能性を感じている人が2割。既に経験している人は3人に1人。仕事と介護の両立は、非常に身近な問題となっている。

『介護と就労に関する調査報告書』2020 年8 月公益財団法人 ダイヤ高齢社会研究財団 より作成

 この調査では実の親のみ対象に尋ねているので、義理の親がいる場合はその経験や可能性はさらに大きくなる。
  親の介護の可能性を感じながら、多くの人は親の介護に不安を感じている。40代は9割以上が感じている。ちなみに70代も半数以上が不安を感じていることから、さらに高齢な親を抱えている人も多いと推測できる。70代が超高齢層の介護を担い、その子ども世代(おそらく中年世代)も含めた介護協力が望まれそうだ。

(公財)生命保険文化センター 2022(令和4)年度「生活保障に関する調査」(2023年3月発行)

介護について、多様に不安を感じている50代
わからないことが多い?

(公財)生命保険文化センター 2022(令和4)年度「生活保障に関する調査」(2023年3月発行)

 不安を複数回答してもらうと、50代が最も多数の人が多様な不安をあげている。不安を感じているということはわからないことが多く、備えが十分でないと認識しているからではないだろうか。

 もちろん50代ともなれば、親もより高齢。介護はいつ発生してもおかしくない。

 実際、高齢になるほど、「骨折・転倒」「認知症」「高齢による衰弱」などをきっかけに、要介護となる人は多い。これらは老化によって生じる。老齢な親を持つ人にとっては、非常に身近な筈だ。

2022(令和4)年 国民生活基礎調査 より作成

 しかし不安が多いということは、高齢者の子ども世代である働き手は、気になりながらも介護について「わからない」。そのため「備えがない」まま、という可能性が高い。

 「気になりながらも」、そのままにしている。そこにはニーズがあるのではないだろうか?

介護に必要な知識に触れる
サービスをどこでどうやって提供するか

 介護を担うには多くの力と知恵が必要だ。働きながら介護を行うためには、より多くの協力が必要だ。そのため最初に何が必要で、どこに何があって、どう動けばいいのか。普段から親との関係において何をしておけばいいのか。親はどうしたいと思っているのか。事前に知っておくことで、スムーズに進められることは多々ある。
 しかし課題が発生する前から自分ゴト化するのが難しい。この記事を書いている私も如実に感じている。多くの人にとって大事であり、望まれていながら道険しき健康行動と同様。あるいはそれ以上に、なかなか険しい道のりと想像される。

 であるならば、個々人への働きかけと同時に、企業にアプローチすることが早道なののではないだろうか?
 事業者もこの人手不足時代、介護離職者が増加することは痛手となる。従業員に仕事と介護の両立を図る知恵や知識を提供することは、まだ介護課題が現実味を帯びていない若手に対しても、長く働く場所としての魅力にもなる。

国として課題認識されている「介護と仕事の両立」
経産省からは実態予測、厚労省からは支援策

 経済産業省の資料によると、2030年時点でのワーキングケアラーは438万人。(「有業者」全体の数値。(「仕事は従な者」を含む)まで広げた場合)~第13回 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部 資料「新しい健康社会の実現」より。対象者を仕事が主である者とするビジネスケアラーは、270万人)

 そのとき支援が十分でない場合、経済損失は9.1兆円と推計されている。

経済産業省 第13回 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 「新しい健康社会の実現」より
経済産業省 第13回 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 「新しい健康社会の実現」より

 厚生労働省では仕事と介護の両立支援として、面談シートや介護支援プラン、企業の人事向けおよび従業員向けにガイドや動画を作成し、公開している。(仕事と介護の両立支援 ~両立に向けての具体的ツール~

 現時点においても、近い将来においても、より多くの人が必要とする「介護と仕事を両立」できる財・サービス。個人・企業・自治体において、そのニーズは一層高まるだろう。
 介護支援だけではない、「仕事と介護の両立」支援市場の明確化が望まれる。

株式会社日本SPセンター シニアマーケティング研究室 石山温子