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シニアが欲しい情報、一に健康、二に年金。(中)

 この稿と次の稿では、シニアがもっと欲しい情報の種別10項目を、男女別、年齢階級別に仔細に見てゆくことにする。全体としては「一に健康、二に年金」なのだが、それぞれのセグメントで、同様の結果が得られるのだろうか?

 図4.は、「健康づくり」。普遍的な関心領域であることもあり、10のセグメントすべてにおいて「もっと欲しい情報」だと多くの方が表明している。したがって、より顕著な男女差、年齢階級差は認められなかった。強いて言えば、70~74歳の年齢階級。ここだけは、男女差が6.2%と、他の年齢階級と比べて際立っている。また、女性の年齢階級、5つのセグメントの中で最も低い数字(24.7%)となっている。少し前に「70代女性、キラキラ消費」という言葉が生まれ、当該年代女性の活発な消費にスポットが当たったが、その残光なのかもしれない。

 「もっと欲しい情報」全体2位につけた「年金」はどうだろう? この項目では、60~64歳の年齢階級が他に抜きん出ている。男女とも30%を超える高い「支持率」だが、ことに男性では、38.2%と年金情報への希求度はきわめて高い。全体2位のランクも、このセグメントに引っ張られてのことだ。

 これには訳がある。給与所得者なら、ちょうどこの年齢層では、過渡的措置として、65歳未満でも厚生年金を受け取ることができる(繰り上げ以外にも)。厚生年金を受け取れる年齢は、例えば1957(昭和32年)生まれだと、63歳から受給が可能になる。このように生まれ年により、受給開始年齢が異なるのが、60~64歳(令和3年時)という年齢階級なのだ。

 それだけではない。満65歳までの雇用が義務化され、「働きながら年金を受給する」ケースが非常に多くなっている。いわゆる「在職老齢年金」だが、この制度によれば、年金の一部または全部が支給停止になる場合がある。加えて、「高年齢雇用継続給付」を受けていれば、同様に一部の支給を停止される場合もある。このように、実に複雑であるがゆえに、この年齢階級においては、「情報がいくつあっても理解に足りない」というのが、本音に近いのではなかろうか?

 「もっと欲しい情報」全体第3位にランクインされた「医療」(図6.)。一般的なイメージとは異なる結果となった。個人的に想定外だったのが女性のセグメント。1つの年齢階級を除いて、女性が男性を下回っていたことだ。医療に関する情報収集は女性の方が旺盛だという通念が覆されたのだ。今一つは、女性では年齢階級が上がるほど、医療情報への希求度が低下してゆくことだ。男性では、年齢階級が上がるほど(60~64歳は例外として)、医療情報への希求度は高まりを見せているのとは対照的だ。「もっと欲しい情報」=関心の高さ、であるとは必ずしも言えないまでも意外な結果ではあった。

  上位3つの情報項目は、どちらかと言えばシリアスなものだが、第4位にはポジティブな情報項目、「趣味、スポーツ活動、旅行、レジャー等」がランクインされている(図7.)。「医療」の刻目とは異なり、ここでは男性優位の結果となった。すべての年齢階級で男性のスコアが、女性のそれを上回っている。とくに格差が大きいのが、80歳以上の年齢階級。男性の16.6%に比べ、女性では7.8%と男性の半分にも満たない。これほど極端ではないが、70~74歳の年齢階級でも、男性が女性を7.4%上回っている。男性に比べて女性は総じて、骨や筋力が弱いということもあり、「虚弱化」のゆるやかな進行が80歳以上の男女差に一分反映されているとも推察できる。

   株式会社 日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男