NTTドコモ モバイル社会研究所がシニアに向けて買い物行動の調査を行ったのは2021年1月。ちょうど、コロナウィルス感染の第3波のピークを迎えようとしていた頃に当たる。
この調査は最近の主流である「WEB調査」ではなく「訪問留置調査」であり、デジタルバイアスが少ないと考えられる。いっぽう、対象地域が関東1都6県であることでその点にはやや留意を要する。
対象は60~79歳の男女、有効回答数は508である。
ネットショッピング・宅配・テレビショッピングとも前年より上昇
この時期、コロナ禍で外出しにくい状況があり、とくにシニアは感染すると重症化リスクが高いとされ、他の世代よりも「巣ごもり」を余儀なくされた。当然、リアルのショッピングより、ネットや通販の利用が増えることは容易に想像ができる。
シニアの買い物状況の経年変化を2018年から「宅配(生活協同組合・農協共同組合など)」「インターネットショッピング」「テレビショッピング」で見てみよう。
一番伸びているのがネットショッピングで2018年との比較では5.5%の伸び。宅配の4.1%、テレビショッピングの1.5%を上回っている。コロナ前との比較(2020年)ではネットショッピングが1.1%に対して、宅配が2.0%と大きく伸びている。これは「巣ごもり」で食料品をはじめとした生活必需品の購入が増えたことが原因と考えられる
ちょっと話が横道にそれるが、生協などの宅配というとご近所の班による「グループ購入」のイメージが強いが、最近では「他人との過度の関わり合いを避ける」「自分の都合を優先したい」などの理由から、世帯単位の「個配」は伸びている。ややデータが古くて恐縮だが、「生協ハンドブック、2016年版」日本生活協同組合連合会によると、2006年度には個配がグループ購入を上回り、2011年度には店舗販売も上回った。2014年度には生協の売り上げの3分の2(約66%)を個配が占めている。
話を戻すと、テレビショッピングも「巣ごもり」の影響で1.5%伸びている。ただ、テレビショッピングはこれまでシニアマーケティングに置いて、大きな存在感を持っていたが、次第にその座をネットショッピングに譲りつつある。
この調査を見ても2018年ですでに7.9%の差があるが、2021年には11.7%に広がっている。シニアのデジタル化の進展に合わせ、この差はますます開いてゆくと考えられる。
シニアでもネットショッピングは男性優位
次にシニアの性差による買い物状況の違いを見てみよう。
調査の結果は「宅配」「テレビショッピング」は女性、「ネットショッピング」は男性の利用率が高い。60代、70代ともこの中では一番多い。女性では生協などの宅配が多いのは世帯の生活必需品の購入と考えられる。
女性も60代ではネットショッピングがテレビショッピングを上回っている。今後、この傾向が続き、70代でもネットショッピングがテレビショッピングを上回るのは時間の問題であろう。
ちなみに「インターネットショッピング」の利用頻度をみると、ほとんど「月1回程度」となっている。60代では女性も2割以上が月1回程度は利用している。全体では22.7%と5人に1人は月1回以上利用している。。
このデータからはネットショッピングがシニア(60,70代)にとって、日常的な購買とまではいかなくとも、特別なことではなくなっていることが読み取れる。この傾向はさらに顕著になることが予想される。
いっぽう、これまでシニアに支持されてきたテレビショッピングはその力を失う、とまではゆかないににしても、ターゲットとなるシニアの年齢はかなり高くなる。具体的には後期高齢者以上が中心となり、マーケティングもそれに合わせてゆくことが求められる。
データ出典:「2021年一般向けモバイル動向調査」
NTTドコモ モバイル社会研究所による
詳しくは以下を参照されたい
https://www.moba-ken.jp/project/seniors/seniors20220309.html
株式会社日本SPセンター シニアマーケティング研究室 倉内直也
2022年10月27日
2022年8月17日
2022年4月11日