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エイジングの影響もあるのか? シニアがWeb会議で気を付けていることとは。(下)

 「ほかの人の表情や反応に気を付けている」という傾向は、年齢階級の下の方と上の方で強く、中年層では弱いというM字カーブとなった(図9.)

 最も高いのは、30歳代の31.5%。次いで、70歳以上の31.1%、20歳代の30.1%と続く。30%を上回るのはこの3つの年齢階級に限られる。逆に、中年層ではこの傾向が弱く、最も低いのが50歳代の24.0%。人の様子を気にすることが少ないのは、会社での地位も少なからず関係しているのかもしれない。

 言葉に関して繊細な配慮をするかどうかでは、60歳代が頭一つ抜けている。図10.は、「意味が通じやすい言葉」に気を付けている割合だが、60歳代では、3割近くの人がそう気を付けている。それに次ぐのが70歳以上で25.2%。逆に最も低いのが30歳代の14.9%。20歳代からも5%も低く、この年代の言葉への関心の低さがあらわになった。

 「表情を言葉で補う」という、些か高等な技術に気を付けている人はどの年齢階級でも等しく多くはないが、その中では40歳代が14.5%と比較的高い数字を記録している(図11.)。次いで60歳代が12.8%と続く。最も低いのが、70歳以上で、唯一10%を割り込んでいる。

 身ぶり手ぶりなどのノンバーバルコミュニケーションを駆使しているのが20歳代の若い年代(図12.)。他の年齢階級よりダントツに高い数字(19.1%)を記録している。最も低い40歳代とは12%もの差。その他の年齢階級では、いずれも10%少々で、いずれにしても少数派ではある。Web会議だからと言って、オーバーアクションを好まないのは、日本人にひとしなみに備わった感覚だからだろう。

ここまでは、項目ごとに年齢階級別の比較を試みてきたが、シニア層、プレシニア層において、年齢階級別の特徴が出るのだろうか? 表側に項目を並べて年代ごとの特性を見ることにしよう。まずは、プレシニアと呼ばれる50歳代から(図13.)。

 気を付けている項目の上位3つは、1位:話すタイミング、2位:明瞭な発音、3位:話す速さとなった。いずれも言語コミュニケーションに属する項目であり、「自分の声が届く」ことを重視している結果となった。

 60歳代も50歳代と同じ傾向を示している(図14.)。気を付けている項目の上位3つは、1位:話すタイミング、2位:明瞭な発音、3位:話す速さであり、この順位は50歳代と全く変わらない。

 70歳以上になると、傾向は若干異なってくる(図15.)。気を付けている項目の上位3つは、1位:明瞭な発音、2位:話すタイミング、3位:映り具合や音量の設定、という結果となった。とくに話すタイミングは、50%を超すとは言え、全年齢階級の中で最も低い。もちろん、重視度は高いのだが、他の年齢階級に比べると見劣りする数値であることは否めない。それ以上に、「聴こえ」が重要な問題になっているようだ。加齢による老人性難聴や高音障害は、Web会議における音声の質や音量に影響を及ぼさざるを得ないのかもしれない。少なからず、エイジングの影響を受けているのだ。

 最後に、比較の視点から20歳代のデータを参考に挙げてみる(図16.)。気を付けている項目の上位3つは、1位:話すタイミング、2位:映り具合や音量の設定、3位:明瞭な発音という順位になっている。注目したいのは、映り具合や音量の設定が2位にランクインされていることだ。音量についてセンシティブになる年代でもないので、ここでは「映り具合」に力点が置かれているものと推察する。身ぶり手ぶりのスコアも高いことから、若い年代ではビジュアルをより重視しているとも言えるだろう。

 70歳以上のWeb会議経験者は15%に過ぎない。だが、これからはどんどん増えるだろうし、新型コロナを契機にしたリモートワークも一定の割合で定着するだろう。しかし、エイジングがなくなることはないし、とくに聴こえの問題はより重要な部分を占める。このあたりにまだ開発の余地が残されている。

   ㈱日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男