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室長の小部屋

最近、キレる高齢者が多い?

  • 2018年12月19日

 テレビやネットで「最近、キレる高齢者が多い」と報じられている。そう実感されている方も多いだろう。ではなぜ今の高齢者はキレるのか。昨年のちょうど今頃、NHKニュース「おはよう日本」で「高齢者が“キレる”!?その実態は」という特集が放送された。

 番組でのアンケート(65歳以上の高齢者487人対象)で「最近、日常生活で“キレて”しまうことがある?」という質問に「よくある、たまにある」という回答が約半数。さらに「年齢とともに感情抑制が困難」との回答が3割に達している。そこで原因としてあげられたのが次の2つ。

 1)加齢により脳、とくに前頭葉の働きが衰えて感情の抑制ができにくくなる。
 2)定年退職や転職、IT化等の急激な環境の変化が高齢者のストレスに助長している。

 まず、感情のコントロールを司っている「前頭葉の働きの衰え」については、多くの研究者から報告されている。前頭葉は脳の他の部位に比べ、加齢に伴う萎縮が目立つといわれている。

Wikipediaより

 更に本人が自覚していない認知症による粗暴化が原因のひとつという意見もある。認知症にはアルツハイマー型の記憶障害のほか、前頭側頭型認知症と呼ばれるものがある。この認知症は万引きや身だしなみを気にしなくなるなどの「社会性の欠如」、相手に対しての配慮、遠慮ができないなど、自分に対して「抑制が効かなくなる」などの症状が現れるという(「公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット」より)。

高齢犯罪者の実態は

 高齢者が「キレる」ということを統計的に調査したデータは少ない。そこで「キレる」が昂じて何らかの犯罪につながると考えて、法務省が毎年、犯罪の実態をまとめて公表している「犯罪白書」のさまざまなデータを検討してみよう。

 まず傷害・暴行犯の動機、原因は圧倒的に「キレる=激情・憤怒」である。少し古い(平成20年)が、高齢者とその他の年代の犯罪の動機を比較したデータがある。それを見ると、高齢者の傷害・暴行犯のうち、動機が「激情・憤怒」のものは63.9%、非高齢者は69.0%。高齢者の方が若干だが低い。ただ、犯行ときに飲酒していた割合は高齢者のほうが明らかに低い。

法務省:平成20年度版「犯罪白書」

 非高齢者のほうが酔った勢いで犯行に及んだ可能性が高いと言える。それに対して高齢者は素面で犯行に及ぶ割合が高いということは、先の前頭葉の機能の衰えが酒に酔った勢いと同じ影響を及ぼしているとも想像できる。

※この平成20年度版「犯罪白書」の「特集『高齢犯罪者の実態と処遇』」には高齢者の犯罪についてその動機など興味深いデータが数多く示されている。
http://www.moj.go.jp/content/000010212.pdf

 ただ、加齢による脳の働きの衰えは今に始まったわけではなく、これまでもキレる高齢者は存在したはず。サザエさんの父親の「波平さん」(実は54歳の設定)もよく怒っていた。「雷オヤジ」という言葉からも急に怒り出す高齢者の姿が思い浮かぶ。
 では最近、話題になるほどキレる高齢者が増えたのだろうか。

 キレる、だけではなく罪を犯す高齢者は増えている。正確にいうと「増えていた」。法務省の平成29年度版の「犯罪白書」によると「高齢者の検挙人員は,平成20年まで著しく増加していたが,その後はおおむね横ばいで推移しており,他の年齢層と異なり,高止まりの状況にある」としている。

法務省:平成29年度版「犯罪白書」

人口10万人あたりの高齢者刑法犯検挙数を見ると、平成元年で46.3人、平成28年で135.8人と30年ほどで約3倍に増えている。20代の1.08倍、30代の1.20倍と比べても多い。
このことは体力、健康度はもちろん、定年延長など高齢者の身体的、社会的活動量が増えたことが原因ではないかと考えられる。

平成29年度版「犯罪白書」

他に大きな原因がある

 しかし、高齢者がキレやすくなり、犯罪にまで至るケースが増えているのにはもっと他にも原因があると私は考えている。それは高齢者と社会の間にコミュニケーションのギャップが生じているということである。

 トランプのアメリカではないが、日本の社会も2つに分断されている。情報を自由に得られる人たちとそうでない人たちの2つである。後者のほとんどは高齢者が占める。もちろんパソコンやスマホをバリバリ使いこなして情報を得る高齢者もいる。しかしそれは例外に属する。情報が得られないのが高齢者のサイレントマジョリティである。

 年齢を重ねると目や耳の機能が低下し、脳の働きも衰えて情報を獲得、処理する能力が低下する。しかし、暮らしてゆくための情報は増えるばかりだ。20年前は電車に乗るためにそれほどの情報は必要ではなかった。しかし、今では全く不親切な自動券売機を操り、複雑怪奇な乗り換えルートを通り、尋ねる駅員のいないホームから目的の電車に乗るためには多くの情報とその処理が求められる。スマホが使える世代は「乗換案内」という便利な情報源があるが、高齢者の多くはその恩恵に与れない。

 高齢者の犯罪者数が増え始めた平成6,7年(1994、5年)はインターネットの普及初期と重なる。さらにネットの利用が一般的になりIT(Information Technology)ではなくICT(Information and Communication Technology)といわれるように技術の進歩がコミュニケーションの形を大きく変え始めた。この10年でネットは水道や電気といったライフラインに次ぐ重要なインフラとなりつつある。

シニアにやさしいコミュニケーションを

 そのためネットスキルによる情報格差はますます大きくなってゆく。さらにIoT(Internet of Things)で情報だけではなく、物にまでネットが関わり、人々のQOLにまでその格差は広がろうとしている。その差は貧富の差とは違った、これまでにない軋轢を生んでいるのではないか。それが高齢者のイライラに繋がっていると考えている。人類の歴史を振り返ればわかることだが「追いやられた方の辛さ」は「追いやった方」には見えにくく、理解しにくい。

 高齢者が鬱積を積もらせないようにするためには高齢者が見える、読める、わかるそして共感、納得できるコミュニケーションが求められる。そのことについては当室から先程出版させていただいた「販促コピーとデザイン『売れる公式50』」に実例をあげて解説しているのでお読みいただければ幸いである。
 https://www.nspc.jp/senior/archives/7071/

  株式会社日本SPセンター シニアマーケティング研究室 倉内直也

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